実務家から見た経済現況:アベノミクスの通信簿

「あれもこれもと手を出さず、やるべきことに腰を据えて、しっかり取り組みましょう・・」 マーケティングの実務家が安倍政権の経済運営:アベノミクスの1年間を評価

マーケティングの実務家による国際組織=MCEI*(Marketing Communications Executives International)の東京支部(NPO:特定非営利活動法人、東京都千代田区麹町3-10-6)は、MCEI東京・大阪支部の会員を対象に、「アベノミクスの通信簿 実務家『実感』アンケート」との内容で昨年の調査を踏まえてアンケート調査を実施。200名の回答を得て、その集計結果を、以下のとおりまとめました。
(※調査期間:2014年3月25日~5月31日/調査方法:セミナー会場およびウェブからの回答)

今回、発表にあたっては直近の安倍内閣の政権運営から、本発表をすることの社会的意味を問う声が会員の中からあがりました。それを受け担当委員会で検討の結果、本報告はあくまで安倍内閣の経済運営の1年の通信簿であることをあえて記した上で発表することにしました。
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世界に国際支部を持つマーケティング実務家のNPO組織であるMCEI東京・大阪はアベノミクスに関する2回目の実感アンケート調査を行い、200名から回答が寄せられた。昨年5月に行った第1回調査と比較しつつマーケティングの実務家の目線で安倍政権の経済運営:アベノミクスのこの1年間の成績を評価した。

「アベノミクス政策をどう評価するか?」という質問に対し、昨年の調査では「かなり評価できる」、「ある程度評価できる」をあわせると83%と高評価であったものが、今回は、「評価できる」の2つの項目の合計は依然65%と高い評価を得ているものの、昨年に比べると18%低下している。

政策別の内訳をみると、金融緩和については74%が評価しているのに対して、財政政策や規制緩和については「評価できる」は約50%となっており、成長戦略の面では厳しい評価となっている。

「今後の景気はどういう方向に動くと思いますか?」という問いには昨年は 「回復する」、「大幅に回復する」をあわせると60%と期待が大きかったが、今回の調査では「横ばい」が52%と最も多く、「回復する」は40%に減少する結果となった。 また、「インフレの動向」についても「目標以上・目標通り」が前回の55%から今回は38%に減っており、2割程度の人が1年にしてアベノミクスの限界を感じているといえそうである。

実際の業務面については、「仕事や残業が増えるか」という質問に対して昨年は「増える」、「少し増える」があわせて47%であったのに対して、今回の調査では36%に減少。「マーケティング予算は増えるか」については昨年は「増える」、「少し増える」があわせて29%であったのに対して、今回の調査では20%とこちらも減少している。「円安による会社や仕事への影響」についても、昨年は「いい影響」、「少しいい影響」があわせて39%であったものが、今年は19%に大幅に減少している。これを業種別にみると特に製造業で影響が顕著で、「いい影響・少しいい影響」が26%と他の業種に比べて大きかった一方で、「悪い影響があった」も26%と最大の数字となっている。アベノミクスは良い意味でも悪い意味でも製造業に大きなインパクトを与えているようだ。

また、「あなたの給料やボーナスは増えると思いますか?」という質問に対しては、昨年は「増える」、「少し増える」をあわせても16%しかなかったものが、今年の調査では「増えた・少し増えた」と回答した人が27%となっており、収入の面ではそれなりの効果が現れている。ただ、これを年齢別でみてみると、「増えた・少し増えた」と答えた人が多かったのは圧倒的に20代で、55%が「増えた・少し増えた」と答えている。逆に40代から60代では「変わらない」が55%~61%を占めており、シニア世代はあまりアベノミクスの恩恵を享受していない、という厳しい結果が出ているようである。また、「増えたお金を何に使うか」という質問では、昨年は「レジャーや旅行」が50%で第1位だったが、今回の調査では「食事・外食」が47%で第1位となっている。収入が多少増えはしたものの「プチ贅沢」程度の増加にとどまっている現実が伺える。

「日本企業が更に元気になるために、あなたが今後政治に期待することは何ですか?」として①金融緩和の推進、②公共投資の増加、③規制緩和の推進、④官僚支配の打破、⑤TPP参加による経済発展、⑥成長戦略の明確化のいう6項目を用意した。

それに対し「もっと金融緩和を進めるべき」は昨年72%から今回60%に減少、「もっと公共投資を進めるべき」も昨年48%から今回44%に若干減少している。金融緩和については、もうある程度十分、公共投資についてもこれ以上やり過ぎない方が・・という意識が垣間見える。「TPPに参加し、経済発展を目指すべき」も昨年80%から73%に減少、これはTPPの交渉が具体化する中で、総論は賛成だったが、各論で課題が見えてきたというところか。ハイスコアであった「もっと規制緩和を進めるべき」、「もっと官僚支配を打破すべき」については、昨年をやや上回る85%以上、「成長戦略を明確にすべき」は99%と非常に高い数値となっており、この領域では依然としてアベノミクスとしての取り組みが1年経っても不十分である、と厳しく見ていることが鮮明となっている。


一方で、「2015年10月の2回目の消費税増税は実現すると思いますか?」という質問には、71%が「実現すると思う」と答えており、経済成長の如何にかかわらず、増税は避けられそうにないという諦めも見てとれる。ただ、性別・年齢別にこれを見てみると、「実現すると思う」の比率は女性では65%、50代では60%、60代では57%と低くなっており、女性やシニア層は何とか増税を回避したいという思いも伝わってくる。

これらの結果から安倍政権の経済運営であるアベノミクスのこの1年間を採点すると総合評価としては、依然高い評価を得ているもののスコアは低下傾向にあり「もう少し頑張りましょう!」というところか。金融緩和などの一部の科目では合格点もあるが、肝心の経済成長を具体的に実現していく施策は、まだまだ不十分という厳しい評価になっている。最近では外交や憲法解釈変更の閣議決定など、成長戦略以外の話題への議論が高まっているが、マーケティングの実務家としては経済運営にはそれなりの評価を与えつつも、成長戦略は未だ不可視という認識で、「あれもこれもと手を出さず、やるべきことにしっかり集中して、腰を据えて取り組みましょう・・」というコメントが総意というところではないだろうか。
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