「慢性閉塞性肺疾患(COPD)における社会経済的負担に関する調査」結果発表
〜COPD患者全体の費用負担は、少なく見積もっても約2,000億円と推計〜
肺や気管支の炎症性疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、国内外において疾病負担が大きい疾患として位置づけられています。世界保健機構(WHO)推計によると2030年には世界の死亡原因第3位になることが知られ、日本でも今後ますます患者の増加が見込まれます。COPDは患者の生活の質(QOL)を悪化させると同時に、労働者の生産性低下をもたらすと考えられます。今回の調査では、COPD発症の程度によりQOLや生産性損失がどう異なるか、また医療費負担がどの程度になるかを明らかにするため、調査を実施しました。
《注目すべき調査結果》
1.スクリーニング尺度により分類されたCOPD非罹患者、潜在的COPD患者、COPD患者それぞれについて、段階的にQOLが低下する可能性がある
- QOL評価尺度EQ-5D (EuroQoL 5-dimension)を用い、本調査で定めたCOPD非罹患者、潜在的COPD患者、COPD患者のQOLを測定したところ、それぞれについて、段階的にQOLスコアが低下
- 健常者とCOPD患者の総労働損失時間を比較すると、15.8vs19.9 (時間) と、COPD患者群の方が4.1時間長い
- COPDによる超過労働損失は年間1人あたり約47万円。患者の自己負担割合と、月あたり自己負担額から割り返した医療費負担額は約6万円にのぼった
3.COPD患者の費用負担は、医療費や生産性損失を勘案すると、少なく見積もっても約2,000億円にのぼる
- COPD患者全体の費用負担は、医療費支出で1,584億円、生産性損失は496億円、あわせて2,080億円にのぼる
- ただしこの金額は、就業者以外の日常生活への影響(家事労働など)は組み込まれておらず、潜在的なCOPD患者の生産性損失も含めていない。これらを組み込むと、総コストはさらに増大すると考えられる
《調査結果から浮かび上がる今後の政策の方向性》
1. COPD早期発見・治療体制の確立
- COPD疑いのある者の早期発見に有効とされる問診票や簡易スパイロメータによるスクリーニングは、現在は検診の必須項目ではない等、活用の場が限定的である。今後こうした手段が広く活用されることが望まれる
2. 適切な治療やケア提供体制を可能にする医療専門職育成の推進
- 国内の呼吸器専門医、慢性呼吸器疾患看護分野認定看護師は他領域と比べても少ないのが現状
- 今後COPDの適切な治療やケア提供体制を整備するためにも、この領域の医療専門職育成の更なる推進が重要
- 関連するステークホルダーの活動の連携促進を通じ、全国的に地域の実情に応じた連携体制が取れるような仕組みを構築することが望まれる
- 健康日本21(第2次)において、「COPD」という言葉の認知度を 25% (平成 23 年)から80% (平成 34 年度)に向上させるという方針が打ち出された。言葉は多くの人々に認知されてはいないが、今後の早期発見につなげていくために、広く認知啓発していく必要があるだろう。医療従事者をはじめとする、健康に関わる関係者には、「COPD」という言葉を正しく理解してもらう必要がある。
《調査の実施概要》
■ 調査名 :慢性閉塞性肺疾患(COPD)における社会経済的負担に関する調査
■ 実施主体:特定非営利活動法人 日本医療政策機構
■ 調査時期:2013年7月
■ 調査方法:アンケート調査 (アンテリオ株式会社のweb調査パネル)
■ 対象者数:1,354名(COPD患者パネル315名、一般パネル1,039名)
■ 解析対象:1,272名(診断済みCOPD患者233名、潜在的COPD患者519名、COPD非罹患者520名)
《日本医療政策機構について》
特定非営利活動法人日本医療政策機構は、「市民主体の医療政策を実現すべく、中立的なシンクタンクとして、幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供すること」をミッションとする、超党派・民間・非営利の医療政策シンクタンクである。日本を代表する有識者、市民・患者代表、医療提供者、政策決定者、経済人などあらゆるステークホルダーが参画し、「市民・患者主体の医療」、「医療政策の重要課題」、「グローバルヘルス」といった活動分野において、調査・政策提言を行い、政策実現を支援している。当機構について、詳しくは(http://www.hgpi.org/)をご参照ください。
《本調査に関する照会先》
本調査の詳細は当機構ウェブサイト(http://www.hgpi.org/report_events.html?article=291)内の報告書を参照ください。
担当:窪田 e-mail: info@hgpi.org
1.スクリーニング尺度により分類されたCOPD非罹患者、潜在的COPD患者、COPD患者それぞれについて、段階的にQOLが低下する可能性がある
- QOL評価尺度EQ-5D (EuroQoL 5-dimension)を用い、本調査で定めたCOPD非罹患者、潜在的COPD患者、COPD患者のQOLを測定したところ、それぞれについて、段階的にQOLスコアが低下
2.健常者と比較して、COPD患者の方が、週労働損失時間が有意に長い
- 健常者とCOPD患者の総労働損失時間を比較すると、15.8vs19.9 (時間) と、COPD患者群の方が4.1時間長い
- COPDによる超過労働損失は年間1人あたり約47万円。患者の自己負担割合と、月あたり自己負担額から割り返した医療費負担額は約6万円にのぼった
3.COPD患者の費用負担は、医療費や生産性損失を勘案すると、少なく見積もっても約2,000億円にのぼる
- COPD患者全体の費用負担は、医療費支出で1,584億円、生産性損失は496億円、あわせて2,080億円にのぼる
- ただしこの金額は、就業者以外の日常生活への影響(家事労働など)は組み込まれておらず、潜在的なCOPD患者の生産性損失も含めていない。これらを組み込むと、総コストはさらに増大すると考えられる
《調査結果から浮かび上がる今後の政策の方向性》
1. COPD早期発見・治療体制の確立
- COPD疑いのある者の早期発見に有効とされる問診票や簡易スパイロメータによるスクリーニングは、現在は検診の必須項目ではない等、活用の場が限定的である。今後こうした手段が広く活用されることが望まれる
2. 適切な治療やケア提供体制を可能にする医療専門職育成の推進
- 国内の呼吸器専門医、慢性呼吸器疾患看護分野認定看護師は他領域と比べても少ないのが現状
- 今後COPDの適切な治療やケア提供体制を整備するためにも、この領域の医療専門職育成の更なる推進が重要
3. 関連ステークホルダーによる連携体制の促進
- 関連するステークホルダーの活動の連携促進を通じ、全国的に地域の実情に応じた連携体制が取れるような仕組みを構築することが望まれる
4. 国民全体への認知啓発活動の推進
- 健康日本21(第2次)において、「COPD」という言葉の認知度を 25% (平成 23 年)から80% (平成 34 年度)に向上させるという方針が打ち出された。言葉は多くの人々に認知されてはいないが、今後の早期発見につなげていくために、広く認知啓発していく必要があるだろう。医療従事者をはじめとする、健康に関わる関係者には、「COPD」という言葉を正しく理解してもらう必要がある。
《調査の実施概要》
■ 調査名 :慢性閉塞性肺疾患(COPD)における社会経済的負担に関する調査
■ 実施主体:特定非営利活動法人 日本医療政策機構
■ 調査時期:2013年7月
■ 調査方法:アンケート調査 (アンテリオ株式会社のweb調査パネル)
■ 対象者数:1,354名(COPD患者パネル315名、一般パネル1,039名)
■ 解析対象:1,272名(診断済みCOPD患者233名、潜在的COPD患者519名、COPD非罹患者520名)
《日本医療政策機構について》
特定非営利活動法人日本医療政策機構は、「市民主体の医療政策を実現すべく、中立的なシンクタンクとして、幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供すること」をミッションとする、超党派・民間・非営利の医療政策シンクタンクである。日本を代表する有識者、市民・患者代表、医療提供者、政策決定者、経済人などあらゆるステークホルダーが参画し、「市民・患者主体の医療」、「医療政策の重要課題」、「グローバルヘルス」といった活動分野において、調査・政策提言を行い、政策実現を支援している。当機構について、詳しくは(http://www.hgpi.org/)をご参照ください。
《本調査に関する照会先》
本調査の詳細は当機構ウェブサイト(http://www.hgpi.org/report_events.html?article=291)内の報告書を参照ください。
担当:窪田 e-mail: info@hgpi.org
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