アルツハイマー病に対するくるみの効果について新たな研究
くるみを加えた食事が脳を健康にする可能性が動物実験で判明
カリフォルニア州フォルサム(2014年10月31日)―『ジャーナル・オブ・アルツハイマーズ・ディジーズ』に発表された新しい動物実験で、くるみを取り入れた食事はアルツハイマー病の発症リスク抑制、発症遅延、進行抑制、予防といった有益な効果をもたらす可能性があることが示されました。
ニューヨーク州立発達障害基礎研究所(IBR=Institute for Basic Research in Developmental Disabilities)発達神経科学研究室長のアバ・チャウハン博士の率いた研究で、くるみを加えた餌をマウスに与えたところ、学習能力、記憶力、不安軽減、運動発達において有意な改善が見られました。
研究者らは、くるみに抗酸化物質が豊富に含まれる(3.7 mmol/オンス)(参考資料:1)ことが、アルツハイマー病で典型的にみられる変性症からマウスの脳を保護する一因となった可能性を示唆しています。酸化ストレスと炎症はアルツハイマー病の中心的な特徴であり、アメリカでは500万人以上がアルツハイマー病にかかっています。(参考資料:2)
「今回の研究結果は非常に有望であり、根治方法が見つかっていない病気であるアルツハイマー病とくるみの関係を調べる今後の臨床試験の土台を築く助けとなります」と研究責任者のアバ・チャウハン博士は語りました。「認知機能に対するくるみの保護作用を証明する研究は増えており、私たちの研究もその一つとなります」
研究グループは、マウスの餌の総量のうち6パーセントまたは9パーセントをくるみとした場合の効果を調べました。これはヒトに換算すると、1日に1オンス(約28グラム)または1.5オンス(約42グラム)のくるみに相当します。今回の研究は、チャウハン博士が率いた過去の細胞培養実験から発展したものです。その実験では、アミロイドβタンパク質による酸化ダメージに対してくるみ抽出物が保護作用を示すことが明らかになりました。このタンパク質は、アルツハイマー病患者の脳内で形成されるアミロイドプラークの主成分です。
くるみには、これ以外の栄養効果もあります。さまざまなビタミンやミネラルを含み、心臓と脳に対する保健効果をもつオメガ3脂肪酸であるアルファ・リノレン酸(ALA)を豊富に含む(2.5グラム/オンス)唯一のナッツ類だからです。(参考資料:3、4)研究者らはまた、今回の研究で見られた行動症状の改善にALAが関与した可能性も示唆しています。
我が国の65歳以上の高齢者における認知症の有病率は8~10%程度と推定され、200万人程度(2010年)ではといわれてきましたが、専門家の間では、すでに65歳以上人口の10% (242万人程度)に達しているという意見もあります。今後、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加するとされます(厚生労働省調べ)。
今回の研究結果を詳述した論文"Dietary Supplementation of Walnuts Improves Memory Deficits and Learning Skills in Transgenic Mouse Model of Alzheimer’s Disease"(アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおいて、くるみの食餌補給は記憶欠損と学習能力を改善させる)は『ジャーナル・オブ・アルツハイマーズ・ディジーズ』10月号(Journal of Alzheimer’s Disease 42(4): 1397-1405 (2014) [http://iospress.metapress.com/content/n644184610325684/])に掲載されています。
チャウハン博士の共著者は、IBR神経化学部門のバル・ムタイヤ博士、ムスタファ・M・エッサ博士、ムーン・リー博士、ヴェド・チャウハン博士、クルビル・カウル博士でした。
本研究は、ニューヨーク州発達障害者局とカリフォルニアくるみ協会から部分的な資金提供による支援を受けました。
カリフォルニアくるみ協会について
1987年創立のカリフォルニアくるみ協会は、くるみ生産者に義務づけられる分担金によって資金をまかなっています。カリフォルニア州食料農業局(CDFA)長官と連携して業務にあたる州代理機関です。主に保健研究と輸出市場開発の活動に従事しています。くわしい業界情報、保健研究、レシピアイデアについては、www.walnuts.orgをご覧ください。
参考資料:
1. Halvorsen BL, Carlsen MH, Phillips KM, Bohn SK, Holte K, Jacobs DR, Blomhoff R (2006) Content of redox-active compounds (ie, antioxidants) in foods consumed in the United States. Am J Clin Nutr 84, 95-135.
2. 2014 Alzheimer’s Disease Facts and Figures. Alzheimers Dement. 2014;2:16-17. http://www.alz.org/downloads/Facts_Figures_2014.pdfから入手可能。
3. Pan A, Chen M, Chowdhury R, HY Wu J, Sun Q, Campos H, Mozaffarian D, Hu FB (2012) Alpha linolenic acid and risk of cardiovascular disease: a systemic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 96:6:1262-1273.
4. Innis SM (2007) Dietary (n-3) fatty acids and brain development. J Nutr 137, 855-859.
研究者らは、くるみに抗酸化物質が豊富に含まれる(3.7 mmol/オンス)(参考資料:1)ことが、アルツハイマー病で典型的にみられる変性症からマウスの脳を保護する一因となった可能性を示唆しています。酸化ストレスと炎症はアルツハイマー病の中心的な特徴であり、アメリカでは500万人以上がアルツハイマー病にかかっています。(参考資料:2)
「今回の研究結果は非常に有望であり、根治方法が見つかっていない病気であるアルツハイマー病とくるみの関係を調べる今後の臨床試験の土台を築く助けとなります」と研究責任者のアバ・チャウハン博士は語りました。「認知機能に対するくるみの保護作用を証明する研究は増えており、私たちの研究もその一つとなります」
研究グループは、マウスの餌の総量のうち6パーセントまたは9パーセントをくるみとした場合の効果を調べました。これはヒトに換算すると、1日に1オンス(約28グラム)または1.5オンス(約42グラム)のくるみに相当します。今回の研究は、チャウハン博士が率いた過去の細胞培養実験から発展したものです。その実験では、アミロイドβタンパク質による酸化ダメージに対してくるみ抽出物が保護作用を示すことが明らかになりました。このタンパク質は、アルツハイマー病患者の脳内で形成されるアミロイドプラークの主成分です。
くるみには、これ以外の栄養効果もあります。さまざまなビタミンやミネラルを含み、心臓と脳に対する保健効果をもつオメガ3脂肪酸であるアルファ・リノレン酸(ALA)を豊富に含む(2.5グラム/オンス)唯一のナッツ類だからです。(参考資料:3、4)研究者らはまた、今回の研究で見られた行動症状の改善にALAが関与した可能性も示唆しています。
我が国の65歳以上の高齢者における認知症の有病率は8~10%程度と推定され、200万人程度(2010年)ではといわれてきましたが、専門家の間では、すでに65歳以上人口の10% (242万人程度)に達しているという意見もあります。今後、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加するとされます(厚生労働省調べ)。
今回の研究結果を詳述した論文"Dietary Supplementation of Walnuts Improves Memory Deficits and Learning Skills in Transgenic Mouse Model of Alzheimer’s Disease"(アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおいて、くるみの食餌補給は記憶欠損と学習能力を改善させる)は『ジャーナル・オブ・アルツハイマーズ・ディジーズ』10月号(Journal of Alzheimer’s Disease 42(4): 1397-1405 (2014) [http://iospress.metapress.com/content/n644184610325684/])に掲載されています。
チャウハン博士の共著者は、IBR神経化学部門のバル・ムタイヤ博士、ムスタファ・M・エッサ博士、ムーン・リー博士、ヴェド・チャウハン博士、クルビル・カウル博士でした。
本研究は、ニューヨーク州発達障害者局とカリフォルニアくるみ協会から部分的な資金提供による支援を受けました。
カリフォルニアくるみ協会について
1987年創立のカリフォルニアくるみ協会は、くるみ生産者に義務づけられる分担金によって資金をまかなっています。カリフォルニア州食料農業局(CDFA)長官と連携して業務にあたる州代理機関です。主に保健研究と輸出市場開発の活動に従事しています。くわしい業界情報、保健研究、レシピアイデアについては、www.walnuts.orgをご覧ください。
参考資料:
1. Halvorsen BL, Carlsen MH, Phillips KM, Bohn SK, Holte K, Jacobs DR, Blomhoff R (2006) Content of redox-active compounds (ie, antioxidants) in foods consumed in the United States. Am J Clin Nutr 84, 95-135.
2. 2014 Alzheimer’s Disease Facts and Figures. Alzheimers Dement. 2014;2:16-17. http://www.alz.org/downloads/Facts_Figures_2014.pdfから入手可能。
3. Pan A, Chen M, Chowdhury R, HY Wu J, Sun Q, Campos H, Mozaffarian D, Hu FB (2012) Alpha linolenic acid and risk of cardiovascular disease: a systemic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 96:6:1262-1273.
4. Innis SM (2007) Dietary (n-3) fatty acids and brain development. J Nutr 137, 855-859.
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