C型肝炎ウイルス感染の経済的損失は4088億円
2013年C型肝炎ウイルス感染とその薬物療法の社会的影響をデロイトが推計
ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:ブルース・グッドウィン、以下、ヤンセン)は、2013年におけるC型肝炎ウイルス感染とその薬物療法の社会的影響について、デロイト アクセス エコノミクス株式会社(本社:オーストラリア 以下、デロイト)に委託し調査分析を行いました。その結果、C型肝炎ウイルス感染が日本の社会にもたらす経済的損失は、4088億円にのぼることが推計されました。
現在、C型肝炎ウイルスに感染している患者さんは世界で約1億8500万人1)、日本では約150~200万人2)と推測され、日本は先進国の中でもC型肝炎ウイルス感染率が最も高い国のひとつとされています。C型肝炎ウイルス感染者の多くは自覚症状がほとんどなく、感染に気が付かず未受診・未治療のまま約30~40年経過すると、肝硬変や肝細胞がんなどの重篤な肝疾患に至る可能性があります。日本の肝がん死亡者数は約3万人3)で、その約80%はC型肝炎のウイルスの持続感染に起因していることから2)、潜在感染者の検査を行い、専門医による適切な治療を受けることが急務となっています。
今回の調査分析では、これまで公表されている様々なデータの分析を行い、C型肝炎ウイルスの感染に起因する肝疾患に伴う経済的損失を推計しました。経済的損失4088億円の内訳は、直接費用(入院および外来医療費、救急搬送費、肝炎対策基本法に基づくC型肝炎ウイルス検査にかかる費用など)が1968億円、間接費用(C型肝炎ウイルス感染に伴う早期死亡、就業率および労働量の低下に伴う生産性の損失など)が1950億円、デッドウエイト・ロス(税の超過負担)が170億円でした(グラフ1)。
さらに、C型肝炎ウイルス感染に伴う「早期死亡により失われる年数」と「障害によって失われる年数」から推計される疾病負担は、431,388 DALYs(年)で、これを金銭的価値に換算した場合、12.25兆円に達する見込みと算出されました(グラフ2)。社会的損失の大部分は、C型肝炎ウイルス感染に対する認識不足と過去に有効な治療法がなかったことに起因しているとする一方、高い効果と安全性を有するC型肝炎ウイルスプロテアーゼ阻害剤の登場により、現在の日本はC型肝炎ウイルスによる感染疾患に伴う将来的な損失を防ぎうる環境にあるとも分析しています。
■C型肝炎ウイルスプロテアーゼ阻害剤を用いた3剤併用療法で経済的損失削減効果は、最大3.1兆円
今回、マルコフモデルを用いた分析によって、20~79歳のジェノタイプ1b型C型肝炎ウイルス感染者に対するC型肝炎ウイルスプロテアーゼ阻害剤とペグインターフェロン、リバビリンの併用療法(3剤併用療法)のメリットを定量的に評価しました。 モデルでは、現時点において抗ウイルス療法を受けていない患者のうち、毎年10%、20%、または45%が、3剤併用療法を受けると想定し、費用および健康アウトカムを生涯にわたり分析を行いました。その結果、3剤併用療法の導入により患者数や肝硬変・肝がんの患者数がともに減少することが示され、慢性肝疾患の患者数が減少することで、直接費用および間接費用はともに減少することが示されました。また、直接費用と間接費用を含めた場合の削減額は、生涯推計で3.12兆円(6.69兆円から3.57兆円に減少)と推定され、導入しない場合と比べて46.7%の削減効果が得られることが予測されました(グラフ3)。
一般的な予防介入と同様に、分析期間を5年間とした場合は、3剤併用療法の導入の費用増加が肝炎の関連費用減少幅よりも大きくなる一方、20年間もしくは生涯に設定した場合は、後者の費用減少幅が大きくなり、結果として費用削減になることが示されました。
今回の調査分析を受けて、国際医療福祉大学薬学部薬学科 教授 池田 俊也先生は、「今回の報告書ではC型肝炎ウイルス感染による経済的損失額は、医療費等の直接費用が年間約2,000億円であることに加え、早期死亡による損失等の間接費用すなわち”隠れたコスト”がほぼ同額にのぼることが明らかとなりました。しかも、これらのコストは適切な診断・受診・治療を促すことによって大きく削減が可能であり、仮に10%の患者が3剤併用療法を受けたとすれば、20年以内でコスト削減効果が見込まれるものと推計されました。今回示されたデータは、わが国におけるC型肝炎ウイルス感染治療に対し、現状の治療法の普及を進めるとともに、さらに効果的な治療方法の開発導入に向けた政策を考える上で意義あるデータであると考えます」と述べています。
ヤンセンは、患者の健康転帰を改善し、C型肝炎ウイルス感染に起因する肝疾患に伴う社会的損失を軽減するために新たな抗ウイルス療法の臨床的なメリットやより幅広い意味での社会における便益を医師や一般の人々に伝え、適切な情報に基づいた治療が選択されるよう、引き続き様々な情報の発信に努めてまいります。
本調査分析の詳細は、ヤンセンウェブサイトhttp://www.janssen.co.jp/public/rls/news/4447よりダウンロードしてご覧いただけます。
* 2014年8月29日に開催された国際医薬経済・アウトカム研究学会(ISPOR)日本部会 会員総会・第10回学術集会にて、デロイト アクセス エコノミクス株式会社のLynn Pezzullo氏より本調査分析に関する発表が行われました。
参考文献
1) Mohd Hanafiah K., Groeger J., Flaxman A.D., Wiersma S.T. Global epidemiology of hepatitis C virus infection: New estimates of age-specific antibody to HCV seroprevalence Hepatology 2013 57:4 (1333-1342)
2)独立行政法人国立国際医療研究センター肝炎情報センター「C型肝炎」
3) 厚生労働省 人口動態統計2010年度
ヤンセンについて
我々ヤンセンは、現代においてもっとも重要な「いまだ満たされない医療ニーズ」への対応と解決に力を注いでいます。これには、がん、免疫疾患、精神・神経疾患(中枢神経・疼痛)、感染症・ワクチン、代謝・循環器疾患が含まれます。患者への貢献という強い意思に基づき、革新的な製品、サービスを開発提供し、健康問題の解決に努め、世界中の人々を支援しています。ヤンセンファーマ株式会社は、ヤンセンファーマシュ―ティカルグループのひとつです。
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