【講演内容】なぜスウェーデンでは認知症が重症化しないのか。『オムソーリ』のケアにヒントをみる

株式会社ウェルクス(本社:東京都墨田区両国)が運営する認知症の情報WEBマガジン「認知症ONLINE」(http://ninchisho-online.com/)は、昨年12月17日に行われた医療福祉ジャーナリズム学博士・藤原瑠美氏による講演会「スウェーデンのケアの概念としてのオムソーリ」(主催:一般社団 スウェーデン社会研究所)の内容を公開しました。
 


認知症介護の先進国スウェーデンでは、認知症の高齢者のうち45%が一人暮らしを継続しています。そのカギは、アンダーナースと呼ばれる介護スタッフにありました。アンダーナースが日々実践している『オムソーリ』のケアについて、医療福祉ジャーナリズムの専門家であり、スウェーデンの地方都市の高齢者ケアの現場を定点観測というスタイルで取材・研究を重ねた藤原 瑠美さんの講演内容をご紹介します。
 
国の認知症にかかる総経費、福祉85%、医療5%

(以下、藤原さんの講演内容より)スウェーデンは、1972年に世界でいち早く高齢社会を迎え、高齢者ケアの軸足を「医療中心」から「福祉中心」に転換しました。例えば、認知症にかかる国の経費は、85%を福祉ケアが占め、医療はわずか5%にとどまっています。病院の数も極限まで減らしました。
 


これを機に、認知症ケアの中心的な役割も、医師からアンダーナースをはじめとする福祉ケアに携わる人々に切り替わり、高齢者の「見守り」と「自立支援」を徹底的に行う流れになります。今でも、病院の数は、日本と比べて格段に少ないです。
 


エスロブ市での認知症ケアの主役は、オムソーリのケアを行う400人のアンダーナースです。アンダーナースとは、基礎的な医療の勉強を修めた介護スタッフ。認知症チームをはじめ、在宅リハビリチーム、在宅看取りチームなど、チームによる専門性を生かす試みが始まっています。


1日わずか15分間のホームヘルプで必要十分なケア

スウェーデンでは、短い訪問で、認知症の人が在宅生活を維持できています。エスロブ市では1軒・1人あたりの平均訪問時間は、わずか15分。参考までに、アンダーナース、コリンさんの15分間を紹介します。
·         薬箱の鍵をあけ、コップに水を入れ、投薬介助
·         血流をよくする医療用ストッキングをはかせる
·         寝室のベッドメイキング
·         キッチンで女性がオープンサンドを作るのを見守る
·         やかんに熱湯を沸かす行為は危ないので、変わって行う
·         トイレの便器掃除
·         目覚まし時計を頼まれた時間にセット、目の前で本人に確認する
·         デイサービスのお迎えの時間を本人に確認する
·         寒いので「窓を空けないこと」を念押しする
·         ゴミ出し

文字にすると結構な量ですが、この間、アンダーナースと利用者は途切れなく会話を続けています。コリンさんの身体の動きはとても落ち着いていて、気忙しさがありません。これだけ短時間で効率よく済むのは、アンダーナースの業務から家事援助の“掃除・洗濯”を、2週間に1度程度のサービスパトロールチームの仕事として切り離したこと。そして“調理”を、真空パックの調理食を導入したことで無くしたことも大きな要因です。
 


高齢者の自立心を育む「オムソーリ」ケア

すべてのアンダーナースが共通して取り組んでいるのは、「オムソーリ(Omsorg)」と呼ばれるケアです。オムソーリとは、スウェーデンに古くからあった言葉で、 「悲しみや幸せを分かち合う」という原義です。なかでも認知症ケアにおける、オムソーリを構成するキーワードは、次のようなものです。

・ポイントを絞ったニーズケア
その人にとっての必要なケアは何か、よく観察し、ポイントを絞る

・できることは手伝わず、できないことだけを援助する
「お世話」ではなく「自立支援」、を常に念頭に置く

・チームプレー
いつでも助け合えるように、利用者の状態をチーム全員で把握しておく

・非マニュアル
「クリスマスまで生きたい」という末期患者がいれば、季節外れでもクリスマス飾りをする

・入念で丁寧なケアをする
公的なケアを受け入れてくれない利用者がいれば、時には60回も通って利用にこぎ着ける

・機転をきかせて、臨機応変に
家に入った瞬間、相手の状況をみてその日の優先順位を組み立てる

・介護者自身が自分の心を静かに保つ
常に心を静かに保つ、動作にも気ぜわしさが感じられない

・豊富な会話、声の力
些細なことからも会話を膨らませ、相手からも会話を引き出す

・ともだちのような親しさと節度
フレンドリーに接するが、親しき仲にも礼儀あり、のスタンスは貫く

要約すると、感情をもつ人間によって行われる、入念で心遣いある支援ともいえるでしょうか。高齢の利用者の喪失感(いたみ)に共鳴するケアが、高齢者の自立心を育み、悪化を防ぐことにつながる、ということです。


日本の認知症ケアにもオムソーリの概念を

2035年、日本では団塊世代が85歳を超え、85歳を超えると急激に認知症の発症率が高まります。日本の認知症ケアは管理的で、“治療”を前提とした医療主体で語られることが多いのが現状です。しかし、いまだに認知症の根本治療は難しく、このまま対策を打たないと、重度の認知症の方が増え、未曾有の困難な時代を迎えることは避けられません。

日本も、認知症を悪化させないケアメソッドの開発と、介護職の地位の向上を本格的に進めることが必要な時期にきています。オムソーリは、日本にとっても有益な概念です。一人でも多くの人に広まることを祈っています。

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全調査データは認知症ONLINEのページにてご確認いただけます。
【認知症ONLINE】http://ninchisho-online.com/

■株式会社ウェルクスについて
株式会社ウェルクス(URL:http://www.welks.co.jp、本社:東京都墨田区、代表取締役:三谷 卓也)は、人材不足が問題といわれている保育士や介護職の人材紹介業を中心に事業展開しています。近年では認知症に関するメディア事業のほか、放課後等デイサービスの運営や訪問マッサージ業も展開しており、福祉領域の課題解決を行っています。

■認知症ONLINEとは
認知症ONLINE(http://ninchisho-online.com/)とは、認知症の情報に特化したWEBマガジンです。認知症について不安や悩みを持つ人々に向けて、認知症の基礎知識や上手なケアのポイント、認知症介護業界のトップランナーへの取材記事等、幅広い視点で役立つ情報を発信しています。

■本リリースに関するお問い合せ
本リリースに関するお問い合わせは下記までご連絡ください。
株式会社ウェルクス 認知症ONLINE編集部
担当:山田(やまだ)
TEL:03-5638-7412 FAX:03-5638-6192
Mail:yoshimi-yamada@welks.co.jp

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