タンパク質や細胞を“その場”で”簡単に”固定して計測できる新規バイオチップシステムを開発【産技助成Vol.43】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
東北大学大学院工学研究科
新規の表面改質技術「電気化学バイオリソグラフィー(注1)」技術を確立。
使い捨て型のマイクロ流路型チップに本技術を搭載し
タンパク質や細胞を“その場”で”簡単に”固定して計測できるバイオチップシステムを創出した。
東北大学大学院工学研究科
新規の表面改質技術「電気化学バイオリソグラフィー(注1)」技術を確立。
使い捨て型のマイクロ流路型チップに本技術を搭載し
タンパク質や細胞を“その場”で”簡単に”固定して計測できるバイオチップシステムを創出した。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、東北大学大学院工学研究科の教授、西澤 松彦氏は、電気化学的な新規リソグラフィー技術を搭載したバイオチップシステムの開発をしました。
これまで抗体やタンパク質等(生体試料)の接着を行うにあたり、脆弱な細胞や抗体をその場でアレイ化する簡便な固定化法とチップ技術が望まれていましたが、本技術はマイクロ流路(注2)内部で、乾電池程度(1.7V、10秒)の直流電圧をかけることでタンパク質や細胞の固定が可能になり、抗体を固定すればイムノアッセイ(免疫測定)チップ、あるいは細胞を捕集固定すれば細胞診断チップが必要なときに必要な場所で簡単に作製でき、“即答性”や“連続性”という要求に応えることができる技術です。
また健康・医療分野への応用では、感染のテストや救急医療、環境分野では生物災害や大気汚染等において、原因物質をオンサイト(現場)で特定することができます。食品分野におけるアレルゲン検出や、港・空港での検疫検査などに活用できる技術としても期待されています。
(注1)バイオ固定化技術の一種。ヘパリンやアルブミンを吸着させた基板に近づけた微小電極で次亜臭素酸(HOBr)を生成すると、電極の近傍にだけタンパク質や細胞が接着する現象を利用する。
(注2)ガラス、金属、プラスチックなどの基板上に約10μm~約1mmの幅で設けられている流路
1.研究成果概要
AFM(原子間力顕微鏡)(注3)、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)による原子・分子レベルの表面解析や、共焦点蛍光顕微鏡(注4)観察などによって「電気化学バイオリソグラフィー」の原理解明に取り組みました。その結果、物理吸着したアルブミン(注5)分子(または静電吸着したヘパリン(注6))が電極で生成した次亜臭素酸の酸化力によって基板から速やかに脱離し、タンパク質の吸着や細胞接着が局所的に誘導されるメカニズムを解明しました。また、マイクロ流路の上壁に電極アレイをつくり込むと、流路内でも電気化学バイオリソグラフィーが行えることを確認。さらに電気化学リソグラフィー操作を繰り返し行うことによって、流路内に複数種類の抗体を固定できることもわかりました。
マイクロ流路チップへの送液(溶液の入れ換え)と電圧印加(電気化学処理および細胞の捕集)をプログラムに沿って自動制御する装置の試作は、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社と共同で行いました。
(注3)試料と探針の原子間に働く力(原子間力)を検出して画像を得る顕微鏡。
(注4)蛍光標本を詳細に観察、解析する顕微鏡で、焦点の合った画像成分のみを抽出できる。
(注5)血清に含まれるタンパク質の一種。これを物理吸着させると、他のタンパク質の吸着を防ぐ効果を示す。
(注6)血液の抗凝固薬のひとつで、これもタンパク質の吸着を防ぐ効果を有する.。
2.競合技術への強み
1.簡便性・汎用性:電気化学バイオリソグラフィーは簡便なウェットプロセスで、電極と電源(乾電池程度)だけで行えるシンプルな機構です。
2.その場性:シンプルな機構なので使い捨て型のマイクロ流路などへ集積でき、タンパク質や細胞を“その場”で固定して計測を行えます。
3.流路への搭載:流路の上壁に電極アレイ(配列)をつくり込むことで、流路内でも電気化学バイオリソグラフィーが行えることを実証しました。
4.計測時間:抗体固定から計測結果を得るまでの操作に必要な時間は現在約70分ですが、装置の自動化により、目標である1 時間が達成できる見通しが立ちました。
3.今後の展望
タンパク質や細胞を流路内局所に固定することを可能とし、一連の操作を半自動的にPC制御下で行えるバイオリソグラフィー試作機の作製に到達しました。将来的には血球細胞の形態診断や、培養細胞を用いる薬剤アッセイ(分析・評価)や化合物の安全性試験などの基盤装置として実用化を検討します。現時点では作製したバイオチップを顕微鏡下で評価していますが、今後は計測システムの一体化にも取り組みます。具体的にはQCM(水晶振動子を利用した計測装置)を流路チップに組み込める見通しが立っているので、抗体の固定から計測までを1台で行えるオールインワンの小型装置を開発し、オンサイト計測を実現するのが最終目標です。
4.参考
成果プレスダイジェスト:東北大学教授 西澤 松彦氏
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