地中海で多数の難民が死亡したことを受け、ようやく腰を上げた欧州

4月に入り、難民・移民を乗せた船が地中海で相次いで転覆し、1,000人以上が死亡した。危険を覚悟で、海を渡ってヨーロッパを目指す人は以前から大勢いたが、死亡者の数は今年に入って劇的に増えている。ここにきて、欧州委員会と欧州各国の外相・内相は、彼らの捜索・救助対策が不十分であったかとをようやく認め、危機対応の緊急措置を提示した。この案は23日(木)に開かれる緊急首脳会議でさらに協議される予定だ。これ以上の犠牲を防げるかは、欧州各国の迅速な決断にかかっている。

アムネスティは地中海での難民・移民の保護を訴え続けてきた。

 

20日(月)に開かれた欧州委員会と各国外相・内相の合同会議では、地中海における危機的状況に対応するため、即時に行動に移すべき10項目が提示され、各国の外務相と内務相の全面的支持を得た。

多くの難民船が漂着するイタリアでは、2013年10月から海洋救出作戦「マーレ・ノストルム」が展開された。16万人以上の難民を保護してきたこの作戦は、支援を要請したEUからは思うような反応が得られず、2014年10月に終了した。イタリアではその後も沿岸警備隊や商業船が救助活動を継続しているが、海軍が投入された大規模な作戦に比べるとその能力には限界がある。

「マーレ・ノストルム」終了後にEUが打ち出したのが、国境警備の強化と密入国斡旋業者の取り締まりを最重要課題とするトリトン作戦(Toriton、海神)だった。人道作戦であった「マーレ・ノストルム」と違い、許可のない人を欧州の領域に入れさせないことが主な任務であり、移民や難民の救助は最優先事項ではない。資金も「マーレ・ノストルム」の3分の1、捜索範囲もイタリア沿岸沖に限定されており、これまでイタリアが多く救出を行った場所はカバーされていない。

2014年に地中海で命を落とした難民・移民は、3,500人。今年は4カ月でほぼその半分の命が失われた。

合同会議で提示された10項目では、トリトン作戦に、より多くの資金と資源を投入して強化するとある。事態の深刻さを認めようとしなかったこれまでの政策から、一転して前向きな動きではあるが、アムネスティは、細部にはいつも落とし穴が潜むものであると危惧している。命を救えるかどうかは、活動の拡大範囲、投入できる資金・人材、時期など、具体的な中身次第である。

アムネスティは木曜の緊急首脳会議を、地中海で命を救う欧州の本気度を見るリトマス試験だと考えている。今こそ、言葉を具体的な行動に移さなければならない。とりわけ各国が連携して捜索・救助活動を着実に遂行することが肝要である。

緊迫感によって、欧州の各国政府や各機関はやっと腰を上げた――少なくとも、紙の上では。言葉だけ、というのは、もはや許されない。海上に船団を配備し、空からも航空支援を確保して総合的な捜索・救助活動を直ちに展開すれば、これ以上の犠牲は防げるであろう。迅速な決断と最後までやり抜く行動力は、欧州各国にかかっている。


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