日本のサービス産業の海外進出と課題-中小・中堅、地方企業の事例をふまえて

イノベーションワークショップ2014「グローバル競争を勝ち抜く企業経営~変革への挑戦」第4回

フューチャー イノベーション フォーラム(略称=FIF、代表=牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャーアーキテクト株式会社会長兼社長)は、12月11日にイノベーションワークショップ2014の第4回を開催しました。本ワークショップは次世代リーダーの育成と業界を超えた企業同士の交流を深める場として2007年にスタートしました。本年は「グローバル競争を勝ち抜く企業経営」をテーマに、グローバル企業のビジネスモデルや人材、ITの活用事例などを学び、議論を重ねてきました。
シリーズ最終回となる今回は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の北川浩伸様に「日本のサービス産業の海外進出と課題~中小・中堅、地方企業の事例をふまえて」と題し、日本企業が海外進出するうえでの重要なポイントを示唆いただきました。
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【開催概要】
 講演者:日本貿易振興機構(ジェトロ)総務部総務課長 兼 生活文化・サービス産業部主査 北川浩伸
 テーマ:日本のサービス産業の海外進出と課題~中小・中堅、地方企業の事例をふまえて
 コーディネーター:明治大学 経営学部 教授 大石芳裕
 日 時:2014年12月11日(木) 18:00 ~ 20:50
 会 場:フューチャーアーキテクト株式会社

【講演概要】
日本企業の海外進出といえば自動車や電機など製造業のイメージが強いが、近年は流通や小売、外食、教育といったサービス産業でも海外を目指す企業が増えている。少子高齢化で日本の市場が縮小傾向にあるなか東南アジアや中国に活路を求め、中小・中堅、地方企業でも進出を加速させている。こうした企業の戦略や課題について事例を紹介しつつ、日本企業が海外進出するうえでの重要なポイントを示唆する。

◆サービス産業の海外進出の現状
日本は「ものづくり大国」と言われるが、サービス産業のグローバル化を対外直接投資額でみると非製造業は製造業を上回っており、産業別就業者数も第3次産業の就業者は、第1次、第2次産業をはるかに上回っている。個別の業界においても外食産業の市場規模をはじめ、アパレルの家庭消費規模や百貨店の売上高など国内市場は縮小している。一方、ASEAN諸国は人口増加もさることながら、2014年のGDP成長率の見通しは各国とも日本を上回り、消費支出も急速に伸びている。
日本のサービス産業の海外展開を積極的に支援していくための基礎資料としてジェトロが2012年に実施した「サービス産業の海外展開実態調査」の結果では、企業が最も重視している海外進出先都市として1位に上海、2位にバンコク、3位に大連が入ったが、2010年の前回調査で上位10都市にも入っていなかったジャカルタが4位に浮上した。それだけアジアのマーケットの変化は急速であり、B to Cのビジネスであれば特定都市のマーケットに着目することが非常に重要になってくる。さらに近年は中小企業の海外展開が活発であり、今後もますます増えていくだろう。

◆日本企業の海外進出事例
海外進出の代表例としてタカシマヤ・シンガポールがある。高い売上を出している成功要因の一つに、人材の定着化がある。どの企業も「人材」の確保には苦労しており、いかに日本流のサービスを理解してもらい提供していけるかが鍵を握る。今年6月プノンペンに出店したイオンは、同地に大きな流通革命を起こした。グローバルとローカルの経営視点を両立させる「グローカル経営」によってASEAN地域や中国での飛躍的な成長を目指している。自分たちの強みを活かし、どのように現地に適合させるかも戦略上、非常に重要だ。
アジアに出店している紀伊国屋書店は、豊富な洋書が競争優位の源泉になっている。同社は洋書の品揃えを強みにしており、同じモデルをドバイなどでも展開している。またカレーの壱番屋は上海で日本と同じメニューを同じ価格帯で、女性向けの高級レストランとして売り出したことが奏功し、さらにバンコクにも出店した。自分たちのコアコンピタンスをもとにビジネスモデルを横展開していくことも他国へ拡大できるかどうかの要となる。
地方から進出している企業も増えており、島根県で100円ショップを経営するイーシーアイは日本企業があまり投資をしていないヤンゴンにフランチャイズで出店している。同じ島根県の中村茶舗はバンコクでカフェを経営し、現地パートナーの選定に成功した好例である。B to C型の海外進出においてパートナー選定は非常に重要であり、新潟県のラーメンレストラン三宝もパートナーの力もあり上海のショッピングセンター内に好立地を確保でき、ビッグビジネスにつながった。また、バンコクのサカモトセミナーは、大阪で現在は10数名の生徒を教えている算数の塾だが、最初はシンガポールに進出し、評判を確立してバンコクへと拡散した成功モデルである。

◆日本企業の海外進出に向けたポイント
海外進出に対する企業戦略のポイントは、海外の市場に自ら「限定性」をかけないことだ。市場は自分の足で歩き自分の目で見ること、商材の現地適応については経営者が判断すること、店舗は最大の広告であり口コミが重要であることを認識しなければならない。各国の地域の「親日度」にも注目し、何よりパートナーは自分の目と感覚で確かめるべきである。また、日本のサービスの優位性とは何かを見極め、何が現地で強みになるのかを考える必要もある。親日度の高い地域では、アニメのコンテンツやキャラクターをコラボレーションさせている店舗や漢字や平仮名をつかった洋服なども売られており、マーケティングミックスの機会損失をしないことも大切だ。
サービス産業の海外進出の形態は多岐にわたる。会社規模に関係なく、どの企業にも成功するチャンスがあることを肝に銘じ、ぜひビジネスチャンスをつかんでほしい。

【コーディネーター総評】
海外進出を戦略論という側面で考えると、サービス産業に限らず、すべての企業において自分たちの「強み」が何かを洗い出すことが非常に重要な作業であることがわかる。
基本的な戦略論としては自社の「強み」、「弱み」、「機会」、「脅威」について考えるSWOT分析とマクロの「脅威」と「機会」を洗い出したうえで内部の「弱み」と「強み」を考えていくTOWS分析がある。また「顧客」、「自社」、「競合」を基本とした3C分析や、そこに「チャネル」、「コミュニケーション」の要素を加えた5C分析も有効だ。さらに既存マーケットのなかで激しい競争を行うレッド・オーシャン戦略と競合相手もいない新規市場でビジネスを行うブルー・オーシャン戦略とがある。誰もがブルー・オーシャンを望むが、市場において立地、ターゲット、ブランド、人材などすべてが都合よく揃うことはほぼ皆無だ。何かが足りない状況で戦略論を考えていけば、何に最も注力し、何を捨てるべきなのかが見えてくる。ぜひ自社のサービスや製品で戦略マップを描き、それを他社と比較してみてほしい。変化の激しい市場においては「誰に」、「何を」、「どのように」を常に考えPDCAを速く回転させる必要があり、講演でご紹介いただいた企業は自社の「強み」を活かしスピードと変化に柔軟に対応してきた良い事例だと思う。

【本ワークショップに関するお問い合わせ】FIF事務局 T E L:03‐5740‐5817
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