ダブルケアに関する調査 2015

注:第 5 弾ダブルケア実態調査(ソニー生命連携調査)

ソニー生命保険株式会社(代表取締役社長 萩本 友男)と横浜国立大学 大学院国際社会科学研究院 相馬 直子准教授、ブリストル大学(英国) 社会・政治・国際学研究科 山下 順子講師は、2015 年 8 月 19 日~8 月 21 日の 3 日間、全国の大学生以下の子どもを持つ母親に対し、初の全国規模での「ダブルケアに関する調査」をインターネットリサーチで実施し、1,000 名の有効サンプルの集計結果を公開しました。(調査協力会社:ネットエイジア株式会社)

​【調査結果トピックス】

ダブルケアの経験率 30代では4人に1人以上がダブルケアは身近な問題

<全国初のダブルケア認知度調査>
『ダブルケア』という言葉を聞いたことがあるのはダブルケア当事者の5人に1人だが、全体では8.1%

ダブルケア未経験者の7割が「親・義親の介護の相談先を知らない」

「ダブルケアに負担感を感じた」ダブルケア経験者の約9割
ダブルケアの3大負担は 「精神」「体力」「経済」

ダブルケアラーの実感「公的な介護サービス」、「公的な子育て支援サービス」不十分が8割半

ダブルケアで大変な時に支えてくれた 「夫」がトップ、他方「支えてくれた人はいない」が1割半

必要だと思うダブルケアラーへの支援 「介護も育児も合わせて相談できる行政窓口」9割
「ダブルケア当事者がつながる場を、ネット上でつくる」も6割半が必要と回答​


​【ダブルケアについて】
英国ブリストル大学 山下 順子講師 横浜国立大学 相馬 直子准教授コメント

ダブルケアとは、子育てと介護に同時に携わることを指すために私たちが創り出した造語である。晩婚化と出産年齢の高齢化によって、「ダブルケア」に直面する人が増えている。ダブルケアを広義にとらえると、家族や親族等、親密な関係における複数のケア関係とそこにおける複合的課題を考えることができる。私たちは、ダブルケアが早晩、日本の大きな社会問題・政策課題になると考える。

すなわち、女性の晩婚により出産年齢が高齢化し、兄弟数や親戚ネットワークも減少し続けている。そのような家族構造の変化のなかで、また現存の介護サービス、育児サービスをやりくりしながら、子育てと親の介護を同時にしなければならない世帯――ダブルケア負担の世帯――の増加が予測される。これまで、仕事と子育ての両立、あるいは仕事と介護の両立が問題とされてきたが、超少子化と高齢化が同時進行する日本のような国では、子育て・介護・仕事の両立問題という、従来の子育て支援策・高齢者介護政策も見直しを迫られる事態となると考える。そのような現況を明らかにするために、私たちは2012年度から日本、香港、台湾、韓国で実態調査を継続している。(日本学術振興会 科学研究費(基盤B)「東アジアにおける介護と育児のダブルケア負担に関するケアレジーム比較分析」:研究課題番号24310192、及び横浜国立大学経済学部アジア経済社会研究センター助成の研究プロジェクト)。

日本では、2000年以降介護保険制度、育児支援制度ともに大きく発展してきた。それぞれの支援領域で、地域に根ざした包括的な支援制度を目指し、現場の方達の努力が蓄積されている。しかし、介護・子育ての縦割り行政のはざまで、ダブルケアラー(ダブルケアに従事する人)の孤立や困難な実態がある。ダブルケア人口が一定数いることは、私たちの横浜、静岡、福岡、京都、香川、福岡でのアンケート調査で明らかになった。また聞き取り調査からは、世帯構成、就業の有無、親の介護度、子育ての状況、介護及び子育てのサービス利用状況、夫との関係、友人及び近隣ネットワークの有無などによって、様々なダブルケアパターンがあることがわかった。 

この「ダブルケアに関する調査2015」は、これまで実施したダブルケア調査第1弾(横浜市内の子育て支援拠点3カ所で質問紙票調査)、第2弾調査(横浜、静岡、京都、香川、福岡で子育てメールマガジン登録者対象に携帯・Web調査)、第3弾調査(横浜、京都の一時保育、学童、子育て支援センターで質問紙票調査)、第4弾調査(ダブルケア研究ホームページからのウェブ調査)を経て、ソニー生命と連携して行ったダブルケア第5弾調査となる。この第5弾調査は、第4弾調査までの調査項目を全面的にふまえた内容となっており、初の全国規模のウェブ調査である。 

調査を始めてから、横浜を中心に、当事者の集う場作りの実践である「ダブルケアカフェ」、育児と介護両方に役立つ当事者目線のハンドブック作り、支援者向けのダブルケア研修プログラムやテキスト開発など、様々な活動が広がっている。「ダブルケアに関する調査2015」の結果が、今後の政策形成及びダブルケアに従事する人への支援につながることを期待している。 

【「ダブルケアに関する調査」の背景 ソニー生命】

当社では、それぞれのお客さまの「子供の教育」「住宅」「家族の夢」「親の介護」などの想いをお聞きし、将来予想される出来事・必要資金などを「見える化」するライフプランニングを大切にしています。
新しい社会問題として顕在化しつつあり、直面する方も増えているダブルケアに対し、当社は、ライフプランニングを通じて、この先の人生においてダブルケアが起こりうる可能性や、直面する前の対策・備えの大切さを考えていただくことにより、ダブルケア対策を促進する活動に取り組んでいます。
この活動の一環として、この度、「ダブルケアに関する調査 2015」を行うこととしました。多くの方にダブルケアを知っていただくことで、ダブルケア対策促進によりお役に立てればと考えています。
お客さまの人生にこの先何が起こるのかを予測し、お客さまをお守りするのは当社の使命です。当社は「日本中のお客さまを一生涯お守りする」会社を目指し、これからも積極的にダブルケア対策に取り組んでいきます。

【アンケート調査結果】
ダブルケアの経験率 30代では4人に1人以上がダブルケアは身近な問題
“子育て”と“親(または義親)の介護”が同時期に発生する状況を表す言葉として『ダブルケア』という言葉がありますが、どのくらいの人がダブルケアに直面したことがあるのでしょうか。

全国の大学生以下の子どもを持つ母親1,000名(全回答者)に、“ダブルケアとは『子育てと親・義親の介護が同時期に発生する状況』である”と説明をし、自身のダブルケアの状況について聞いたところ、「現在ダブルケアに直面中」は3.3%、「過去にダブルケアを経験」は4.0%、「現在直面中で、過去にも経験がある」は0.9%で、以上を合計した経験率は8.2%となりました。また、「数年先にダブルケアに直面する」は14.4%と、今後、ダブルケアを経験する人が増加していくことがうかがえます。

さらに、これまでにダブルケアを経験している人(現在直面中の人を含む)と数年先に直面するという人の割合を合計すると22.6%となり、ダブルケアが身近な問題である人は5人に1人以上となりました。 年代別にみると、ダブルケアの当事者になる方の割合は30代が他の世代に比べ高く、予備軍も含めると、27.1%と4人に1人がダブルケアを経験すると推測されます。 (図1)

 (図1)


<全国初のダブルケア認知度調査>

ダブルケア』という言葉を聞いたことがあるのはダブルケア当事者の5人に1人だが、全体では8.1%
ダブルケアが身近な問題である人は、全体で5人に1人(22.6%)、30代では4人に1人以上(27.1%)であることがわかりましたが、どのくらいの人が『ダブルケア』という言葉を耳にしたことがあったのでしょうか。

全回答者(1,000名)に、『ダブルケア』という言葉を聞いたことがあるか質問したところ、「ある」8.1%、「ない」91.9%となり、大学生以下の子どもを持つ母親のほとんどが『ダブルケア』という言葉を耳にしたことがないことがわかりました。

『ダブルケア』という言葉を聞いたことがある人の割合をダブルケアの状況別(※)にみると、ダブルケアの経験がある人では20.7%と5人に1人の割合となりましたが、数年先のダブルケアに直面する人では13.9%、ダブルケアに直面していない人では5.7%でした。ダブルケアを経験している人はダブルケアの認知度が少なくない様子がうかがえましたが、ダブルケアを経験していない人ではダブルケアを聞いたことがある人はまだ一握りのようです。 (図2)

(図2)

 

[研究者からのコメント]
「育児と介護の同時進行」という狭義の意味での「ダブルケア」調査でしたが、30代では、ダブルケア予備軍も含めると、27.1%と4人に1人が、ダブルケアが自分の事となっていることがわかります。言葉があることは、その実態を認知し、社会全体の問題としていくために、とても大事です。ダブルケアラー(ダブルケア当事者)の方々の間では、「ダブルケア」という言葉が広まりはじめていることがわかります。
さらに、育児と介護の同時進行だけではなく、夫の看護と子育てなど、さまざまな「ダブルケア」の実態があります。「ダブルケア」ではなく、「トリプルケア」(それ以上)という声も多く聞かれます。「ダブルケア」という言葉をもとに、当事者の方や周囲の方、サポートに携わる方々が、その実態を認知し、声をあげていくことも大切です。
また、直面していない方も、ダブルケアという実態があることを認知し、ダブルケア視点をもってサポートのあり方や社会のあり方を問い直していくことが、この問題を考えるうえで、根幹となる部分だと考えます。

ダブルケア未経験者の7割が「親・義親の介護の相談先を知らない
まだまだダブルケアに直面していない人が多い現状ですが、では、親・義親の介護が必要になった場合の相談先を知っている人はどのくらいいるのでしょうか。

ダブルケアを経験したことがない918名(数年先にダブルケアに直面する144名・ダブルケアに直面していない774名)に、親・義親に介護が必要になった時の相談先を知っているか聞いたところ、「相談先を知らない」69.7%、「相談先を知っていると思う」30.3%となりました。介護に困った時などは地区の窓口や専門家に相談することも大切です。事前に相談先を知っておくと心強く感じられるのではないでしょうか。 (図3)

(図3)

[研究者からのコメント]
ダブルケアは突然やってきます。
親(義親)の健康については、子どもとしても気にかかるもの。地域には、地域包括支援センターという、地域の高齢者や介護をしている家族の総合的な相談・支援の窓口がありますが、まずは、自分や親(義親)の居住エリアの地域包括支援センターはどこにあるのか、ダブルケアに直面していない方も、「生活の知識」として、ぜひ確認しておくことが必要だと、ダブルケアラーの方々自身も、指摘しています。
また、ダブルケアの「生活の知恵」をもっている方が、地域に必ずいます。「ママ友にはなかなか介護のことは話せない」と、多くのダブルケアラーの方々が意見をよせる一方で、ダブルケアがはじまって、ママ友以外に、ジジ友・ババ友といった「ケア友」が地域に増えたという方や、保育園の先生や子育て支援センターのスタッフの方が介護を経験されていて、子育てだけではなく介護の愚痴も聞いてもらえた、という声も聞かれます。横浜を中心にダブルケアカフェといった当事者の方々が集まる場もひろがっています。

「ダブルケアに負担感を感じた」ダブルケア経験者の約9割
ダブルケアの3大負担は 「精神」「体力」「経済」

次に、子育てと親(または義親)の介護の『ダブルケア』に直面したことがある82名に、ダブルケアの負担について聞きました。


ダブルケアに直面したことがある82名に、ダブルケアの負担感はどのくらいか聞いたところ、「負担である」40.2%、「どちらかといえば負担である」47.6%で『負担である(計)』は87.8%となり、大多数の人がダブルケアに負担感を覚えていることがわかりました。一方、「あまり負担でない」は11.0%、「負担でない」は1.2%で『負担でない(計)』は12.2%でした。 (図4)

(図4)

 

具体的には、どのような負担が有るのでしょうか。

ダブルケアに直面したことがある82名に、ダブルケアで何が負担に感じるか(感じたか)複数回答で聞いたところ、「精神的にしんどい」が最も多く80.5%、次いで、「体力的にしんどい」73.2%、「経済的負担」69.5%が続き、精神的、体力的、経済的に負担を感じている人が多いことがわかりました。
また、それら3つの負担に続き、「子どもの世話を十分にできない」62.2%、「親/義理の親の世話を十分にできない」51.2%が多くなりました。子育てと親・義親の介護を同時期に行わなければならないダブルケアでは、どちらかの世話にしわ寄せがいってしまうケースもあるようです。 (図5)

(図5)


ダブルケアラー(ダブルケア当事者)の実感
「公的な介護サービス」、「公的な子育て支援サービス」は不十分が8割半

そして、ダブルケアに直面したことがある82名に、公的な介護サービスや公的な子育て支援サービスについて聞きました。
まず、ダブルケアに直面したことがある82名に、ダブルケアラーにとって公的な介護サービスは現状で十分だと思うか聞いたところ、「十分だと思う」は2.4%、「どちらかといえば十分だと思う」は11.0%で『十分だと思う(計)』は13.4%、「あまり十分でないと思う」が47.6%、「十分でないと思う」が39.0%で『十分でないと思う(計)』は86.6%でした。 (図6)
次に、ダブルケアラーにとって公的な子育て支援サービスは現状で十分だと思うか聞いたところ、「十分だと思う」は3.7%、「どちらかといえば十分だと思う」は12.2%で『十分だと思う(計)』は15.9%、「あまり十分でないと思う」が42.7%、「十分でないと思う」が41.5%で『十分でないと思う(計)』は84.2%でした。介護と育児。それぞれ一つでも大変です。ダブルケアラーを支えるための公的サービスが求められているようです。 (図7)

(図6)

(図7)


[研究者からのコメント]
このダブルケア調査第5弾前に、東アジアのダブルケア比較調査(ダブルケア調査第1弾~第3弾)を実施しましたが、そこでは、日本ではダブルケア負担が複合的である(=複数の負担感のスコアが高い)という特徴がみられました。今回の第5弾調査でも、負担が複合的であることがわかります。
何が負担であるかという質問に対しては、精神的・体力的・経済的な負担や、十分に子育てや介護ができない、という点がスコアが高く出ます。それに比べて、子育て支援サービスや介護サービス不足という点は、スコアが低く出る傾向があります。ただし、この結果をもって、「介護サービスや子育て支援サービスは不足していないのでは?」ととらえることは実態とは異なります。9割前後のダブルケアラーの方々が、ダブルケアをする人にとって、公的な介護や子育て支援サービスは十分でないととらえています。
ダブルケアラーの方々は、常日頃から、育児と介護の間、そして仕事との間で、何を優先させるかをせまられ、心の中で葛藤しています。特に、ダブルケアの生活の中で、子どもに何らかの「しわよせ」がいったときが、ダブルケアラーの方々の負担感やストレスがピークとなる傾向が、質的調査から浮き彫りになってきました。 
ダブルケア世帯にとって、介護サービスと子育て支援サービスは相互補完の関係にあります。介護サービスとは、ダブルケア世帯にとっては、子育て支援サービスでもあります。なぜなら、介護サービスを利用している間、子どもとの時間が増えるという意味で、介護サービスが子育ての支援の意味にもなるからです。逆に、子育て支援サービスは、ダブルケア世帯にとっては、介護サービスの一部を担うものでもあるのです。たとえば、子どもを保育園に預けられないと、介護に大きな支障をきたすことがあるからです。緊急で利用できる一時保育や保育園は、ダブルケア世帯にとっては、介護支援でもあり、子育て支援でもあるのです。

 


ダブルケアで大変な時に支えてくれた 「夫」がトップ、「支えてくれた人はいない」が1割半
必要だと思うダブルケアラーへの支援 「介護も育児も合わせて相談できる行政窓口」9割 「ダブルケア当事者がつながる場を、ネット上でつくる」も6割半が必要と回答


いったい誰に支えられているのでしょうか?

また、ダブルケアに直面したことがある82名に、ダブルケアで大変な時、支えてくれた人はだれか複数回答で聞いたところ、「夫(パートナー)」41.5%が最も多く、次いで、「親・義理の親」24.4%、「ケアマネージャー」19.5%、「親戚」と「友人」いずれも17.1%が続きました。他方、「支えてくれた人はいない(いなかった)」は15.9%でした。ダブルケアでは、孤立感を抱えるケースが少なくないといわれますが、ダブルケアの経験がある人や同じ境遇の人が集まり、想いを共有できるような場が必要なのではないでしょうか。 (図8)

(図8)


最後に、全回答者(1,000名)に、ダブルケアラーへの支援について、5つの内容を提示し、必要だと思うか、必要ではないと思うか聞いたところ、『必要だ(計)』は、「介護も育児も合わせて相談できる行政窓口」では90.5%、「ダブルケア経験者が、地域で直接相談にのってくれる」と「ダブルケアに直面していない人も、ダブルケア当事者も参考となる子育てと介護をテーマとしたハンドブック」では81.1%となりました。ダブルケアについて相談できる場所やダブルケアについての情報が得られるようなものの必要性が高いようです。

また、「ダブルケア当事者がつながる場を、地域でつくる(例:地域でのおしゃべり会)」では『必要だ(計)』が76.2%、「ダブルケア当事者がつながる場を、ネット上でつくる(例:フェイスブックやミクシィ等)」では66.7%でした。多くの人がダブルケアラーがつながり、支え合う場が必要だと考えているようです。 (図9)

(図9)


[研究者からのコメント]
ダブルケアのときに誰に支えられましたか?という質問に対しては、夫や親(義親)の次に、介護側のケアマネージャーやヘルパーのスコアが高かったことから、まずは介護側の支援者の役割の重要性がわかります。
質的調査からも、ケアマネージャーやヘルパーさんが、介護だけではなく子育てのことも話を聞いてくれたり、いわば、「ダブルケア視点」をもっていてとても支えられた、という声がよせられました。その一方で、介護支援者は介護(高齢者)だけ、子育て支援者は子育て(親子)だけしか見えにくいのが現状です。また、行政窓口も所管別に対応することが多いため、ダブルケアラーの方々の困り事を丸ごと相談に乗ってくれて、必要な情報やサービスにつないでくれたりコーディネートしてくれる窓口や人材の重要性が、このデータからも浮き彫りになっています。
多重な困難を抱える人が増え、「ダブルケア」とは、世代間のケアの連関のあり方から、その複合課題をとらえる一つの切り口です。この「ダブルケア」を、複数の課題や主体を引き寄せる「磁石」としてとらえ、団塊の世代が75歳以上になる2025年、さらには高齢人口がピークに達する2040年に向けた支援策の開発が急務だと考えます。


以上 
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