【プレスリリース】倒壊するシリアの教育-初の報告書を発表
・本信は、ユニセフ発表の情報に基づき、日本ユニセフ協会が編集したものです
・本信は、ワールド・ビジョン、UNHCR、セーブ・ザ・チルドレンとの共同リリースになります
・原文(英語)と報告書の閲覧をご希望の際は、日本ユニセフ協会 広報室にお問い合わせください
【2013年12月13日 ジュネーブ・ニューヨーク・アンマン発】
本日発表する報告書「シリア危機:中断された教育-学齢期の子どもたちのために世界的な行動を
(原題:Syria Crisis: Education Interrupted - Global action to rescue the schooling of a
generation)」で、シリアの子どもたちの教育が、地域内で最も激しく早く低下していることが
わかりました。
本報告書では 、2011年以降、300万人近いシリアの子どもたちが、戦闘による教室の破壊や、恐怖の
あまりで通学ができず、家族と国外へ避難し、学業を中断していることが強調されています。紛争が
始まるまで数十年に渡って積み上げられてきたシリアの教育は、3年弱で倒壊したのです。
■倒壊した教育システム、出席率6%の地域も
2011年に紛争が始まるまで、初等教育(小学校)出席率が97%を誇っていたシリア。本報告書は、
紛争によって著しく低下したシリア国内の教育を網羅した初の報告書です。
1000日以上に及ぶシリア内戦による殺害は、何百万人もの子どもたちから、教育や学校、先生を奪って
います。限られながらも教育を受けられる子どももいれば、学校を辞め、家族を支えるために働かざる
を得ない子どもたちもいます。
報告書では、学校が被害を受ける、破壊される、または避難民の住居として使われているため、シリア
国内では5校につき1校が使えないと指摘。シリア難民を受け入れている周辺国では、50~60万人の
シリア難民の子どもたちが学校に通えていません。
激しい戦闘が、起きその影響を最も受けているラッカ、イドリブ、アレッポ、デリゾール、ハマ、ダラ、
ダマスカス郊外などの地方の中には、出席率が6%にまで落ち込んでいるところもあります。
紛争前、シリアは地域内の教育分野ではリーダー的存在でした。しかし、3年もかからずに教育は
大幅に後退、このままでは将来、悲惨な結果を招くことは不可避です。
■通学・就学を阻む要因
報告書は、短期間でこれほどまでに教育が衰退した要因を複数指摘しています。
紛争が激化する中で、多くの人が家を失い避難したシリア。教師は殺害され、学校は被害を受け、
また誤った使われ方をされた結果、子どもたちが学校へ通うのは困難となりました。通学中の子ども
たちの身を案じ、自宅に置いておくほかないと、多くの保護者が訴えています。
周辺国は、シリアとは言語も方言も、カリキュラムも異なります。学習スペースは限られるかありません。
また、身の安全や貧困、住民との緊張の高まりなどによって、学校に通えない子どもたちもいます。
一方で、シリア難民を受け入れている避難先の地域社会では、教室には多くの生徒があふれ、避難先の
子どもたちや教師に影響を与えています。既存の教育システムへの負荷は高まるばかりです。
■提言:ただちに行動を
現状を反転させるために、報告書では直ちに次のような行動をとるべきと提言しています。
●シリア国内の教育インフラの保護
軍事目的で学校を使用することをやめること、学校を平和な場所とし宣言すること、
学校の保護を妨害する勢力に責任を負わせること
●難民を受け入れている周辺国の地域社会への国際的な投資を倍にすること
学習スペースを拡張し、新たに教師を採用し、地域社会が負担している受け入れ費用を削減すること
●革新的な方法でシリア難民の教育ニーズにこたえること
例:避難先の国での就学・修了を、シリアでの教育制度での認証ができる公的な文書で証明する
といった取り組み
●在宅学習や非公式教育センター、子どもの心のケアを行う「子どもにやさしい空間」のような
取り組みを拡大すること
■参考情報:統計でみるシリアの教育状況(本報告書より抜粋)
・学齢期にあるシリアの子どもたちは480万人
このうち、シリア国内では220万人が、周辺国では50万人が学校に通えていない
・シリア国外では、学齢期で学校に通えていない子どもは、学校に通えている子どもよりも
はるかに多い
・最も顕著な例はレバノンで、学齢期(5~17歳)にあるシリア難民の子どものうち、
80%が学校に通えていない
・トルコとイラクでは、シリア難民の子どもの約3分の2が学校に通えていない
・一方、ヨルダンとエジプトでは、半数強が通学できている
■本プレスリリースに関するお問い合わせ
(公財)日本ユニセフ協会 広報室
TEL:03-5789-2016 FAX : 03-5789-2036 jcuinfo@unicef.or.jp
または
Juliette Touma, UNICEF, +962 79 867 4628, jtouma@unicef.org
Marixie Mercado, UNICEF,+41 22 909 5716; Mobile +41 79 756 7703, mmercado@unicef.org
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために
活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で
具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、
世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する36の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で
支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、
日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、
政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
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