ミャンマー:当局との前向きな協議も、ラカイン州での医療活動再開には至らず

ミャンマーで活動している国境なき医師団(MSF)が、2月26日、ラカイン州での医療活動の中止命令を受けた問題で、MSFは、同州内の多くの住民に対する医療活動の必要性について、ミャンマー連邦共和国政府とハイレベル協議を重ねている。

MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師も3月16日にミャンマー入りし、複数の協議に加わったほか、連邦共和国政府高官、国連、国際NGOによる州内のシットウェー、ミャウー、ミンビャの視察に同行。また、首都ネピドーでは内務大臣、保健大臣、国境副大臣とも会見したが、最終的な医療活動再開への合意には至っていない。

<失われた診療機会>

リュー医師は「ラカイン州での医療活動を、保健省と緊密に連携して提供していこうという話しができたことは喜ばしいこと」と振り返るとともに、「地元当局や有力者とも、お互いの信頼関係や同州におけるMSFの活動への理解促進について生産的な話し合いが持てた」と成果を語った。

同州でMSFの診療所が閉鎖されてから3週間で失われた診療機会は2万5000件と推定される(2013年第4四半期の診療件数を元に計算)。そのうち5300件余りは5歳未満児が対象となるはずだった。また、40人の子どもが栄養失調治療プログラムへの受け入れ機会を逸し、救急紹介223件、妊婦の産後ケア1471人、家族計画相談1500件の機会が失われたと考えられる。

2月の活動中止以前、MSFは州内約70万人に医療援助を提供、うち20万人近くは避難キャンプや孤立した集落の住民だった。MSFスタッフ500名以上が、避難キャンプ24ヵ所を含む州内30ヵ所以上で保健医療を支援していた。MSFの活動プログラムはいずれも医療ニーズにのみ基づいて行われ、特に無力な人びとや、孤立状態にある人びとを援助対象としていた。

<手つかずの医療ニーズ>

MSFはラカイン州における最大の国際的な医療NGOで、20年にわたってこの地で活動を続けてきた。しかし現在は医師、看護師、助産師ら100人以上のスタッフは州外に移り、活動は中止、診療所もすべて閉鎖している。リュー医師は「活動中止による大きな損失を補おうと保健省も前向きな対策に乗り出していますが、現状ではMSFに代わる規模の活動実践はかなり難しいでしょう。それにより多くの医療ニーズが手つかずになっているのです」と残念がる。

現在行われているハイレベル協議の焦点は、ラカイン州における急患の病院紹介のような救命サービスを再開することのほか、MSFが取り組んできたHIV・結核患者の治療継続を保障することだ。今回の活動中止以前も、同地では医療が住民のすべてのニーズに対応し切れていなかった。ニーズの規模を考慮すれば、MSFと保健省などの機関が協力して行う援助は当面不可欠になるだろう。

<近づく雨季に備え必要>

MSFは、ラカイン州における感染症流行対策の重要な役割を担ってきたため、近づく雨季を前に、州内の保健医療減少は特に懸念すべき問題となっている。

リュー医師は「次のステップとして医療ニーズを満たす具体的な計画策定に向けて協議を進める必要があります。連邦共和国およびラカイン州担当局、地元の有力者とともに、共通の目標達成に向けて建設的な対話が継続できることを期待しています」と述べている。

1992年からミャンマーで医療活動を続けているMSFの援助対象者は何百万人にも上り、出身民族も多岐にわたる。現在は国内合計3万人以上の、HIV/エイズ患者に命をつなぐための抗レトロウイルス薬(ARV)治療を提供するとともに、3000人以上の結核患者に治療を提供。2008年の「ナルギス」や2010年の「ギリ」といったサイクロン被災直後には他団体とともに迅速な対応に乗り出し、大勢の被災者を対象に医療、緊急物資の配給、水源の浄化を行ってきた。

ラカイン州の避難キャンプで下痢症の治療を受ける幼児(2013年2月撮影)

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