イラク:過去1年に300万人が避難――早急な人道援助の拡大を

イラクで暴力が急増する中、過去1年間に大勢の人びとが住まいを追われ、現在は緩衝地帯に追い込まれて最低限の人道援助も受けられないまま身動きがとれなくなっている。多くの人道援助は主にクルド人自治区など比較的安全な地域に集中しており、中部や北部では援助が圧倒的に足りていない。国境なき医師団(MSF)は、紛争によって多大な犠牲を強いられている市民が必要な生活環境と医療を得られるよう、人道援助の拡大を呼び掛けている。

 

過去数十年で最悪の人道危機

イラクでMSFの活動責任者を務めるファビオ・フォルジョオーネは「イラクは過去数十年で最悪の人道危機を迎えています。特に中部では何千人もの人びとが人道援助を早急に必要としていますが、実際には受けられていません」と話す。

2014年は激しい戦闘によって300万人弱がイラク中部と北部にあるアンバル県、ニネワ県、サラーハッディーン県、キルクーク県、ディヤーラ県の戦禍から避難した。数千世帯が広範囲に及ぶ暴力と、繰り返し移動する前線から避難を余儀なくされ、何度も避難先を変えるうちに全てを失った。避難する先はテント、建設中の建物、宗教施設や学校などだが、多くは過密状態にあり、生活環境は極めて厳しい。

MSFはモスル北部と、首都バグダッドとアンバル県の間に広がる緩衝地帯でも活動しており、避難者の多くが衛生設備や清潔な水なしに生活していると現地から報告を受けている。現地のインフラと医療施設は損壊して機能しておらず、医療スタッフもますます不足してきている。基礎医療さえ受けられない人が多くいる一方で、稼働中の病院があっても、移動することが危険な地域ではたどり着くことが極めて難しい。

イラク国内の広い範囲で大きなニーズがあるにも関わらず、人道援助は主にクルド人自治区などの比較的安全な地域に集中している。MSFは、現在もイラク中部と北部で活動している数少ない国際団体の1つ。フォルジョオーネは「これらの地域には紛争を逃れてきた人びとが身を寄せています。安全上の制約はありますが、ここで援助を提供することは可能です。それにも関わらず十分な援助がなされない状態が続いています」と指摘する。

MSFも活動を拡大し対応

高まる一方のニーズに対応するため、MSFはイラク中部と北部の活動を拡大し続けている。キルクーク県、サラーハッディーン県、ディヤーラ県、ニネワ県とバグダッド県で移動診療を行い、紛争地から逃げてくる人びとと地元住民を対象に医療を提供している。一般診療では非感染性疾患、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、心理ケアに力を入れている。

暴力が他の人口密集地に広がってさらに多くの人が避難する恐れもあり、MSFは警戒を強めている。フォルジョオーネは「イラクの全利害関係者は、暴力から避難するイラクの人びとが人道援助を受けられるようにあらゆる手を尽くすべきです。MSFは全力を挙げていますが、全てのニーズに対して効果的に応えられるわけではありません」と話す。

MSFは2014年にイラクにおける緊急援助を開始。複数の地域で避難世帯を対象に基礎医療と救援物資を提供し、合計21万9800件の外来診療と1万7700件の心理ケア(グループ・セッションと個別セッション合計)を行った。ドミーズ難民キャンプ(ドホーク県)に滞在するシリア人難民6万人にとっては、MSFが主要な医療の担い手となっている。診療科目はリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、慢性疾患管理と心理ケアなど。2014年8月には産科を開設して同年末までに571件の分娩を介助した。
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