マラリア治療薬でエボラの死亡率が低下――MSF、研究結果を発表

研究チームには日本からも医師が参加

エボラ出血熱患者の死亡リスクが抗マラリア薬によって低下した可能性がある――国境なき医師団(MSF)とその研究機関「エピセンター」が米国東部時間の1月6日、医学誌『ニュー・ イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』電子版に研究結果を発表した。研究では、抗マラリア薬「アーテスネート・アモジアキン(ASAQ)」を処方されたエボラ患者は、標準的な第1選択マラリア薬である「アーテメター・ルメファントリン(AL)」を処方された患者よりも死亡率が31%低かったことがわかった。

研究チームには、MSF日本から疫学者として長崎大学熱帯医学研究所の鈴木基医師が参加。リベリアにて臨床データの収集を主導し、エボラ患者に投与されているマラリア治療薬に注目するという大きな貢献を果たした。鈴木医師は「当初は、マラリア治療薬にエボラ患者の死亡率を低下させる効果があるとは想像しておらず、偶然の発見だった。今回の結果が、今後のエボラの治療方法の確立につながることを期待している」と話す。

エボラを克服して退院する患者(リベリア・フォヤ、2014年10月)

今後の試験の活性化に期待


西アフリカはマラリアの流行地域であり、エボラ患者にマラリアが同時感染していることは珍しくないため、MSFでは原則的に、全てのエボラ患者に抗マラリア薬を投与している。今回発見された効果は、2014年8月のエボラ流行最悪期にリベリア・フォヤにある専門治療センターでALが枯渇した際に初めて認められた。ALが枯渇した2週間、患者は代替としてのASAQを処方された以外に、臨床ケアに変更はなかった。また、研究に用いたデータ分析からは、年齢や治療センター受入時のウイルス量といった、死亡率に影響を及ぼし得る他の要素は除外されている。

ASAQが含む化合物アモジアキンのエボラに対する作用は、マラリアなど他の疾病の治療薬のうち、エボラへの効果が見込まれる薬についてのイン・ビトロ(試験管や培養基)研究で確認された。研究機関によるこれらの治療薬の臨床試験はまだ最終的なエビデンスに至っていないが、今回の後ろ向き研究が新たに有望なデータをもたらしたことで、ASAQの試験の活性化が期待されている。

共同研究者のイザ・ツィグレネチュキ博士は、「今回の後ろ向き研究は特殊な状況下のものであり、広範な結論を導くには慎重である必要があります。ただ、これまでのところ、ASAQは効果的な治療への有望な足がかりだと思われます。ASAQによるエボラ死亡率の低減効果を確認するための前臨床試験および臨床試験の推進が急務です」と述べている。

少なくとも2万8000件の症例と1万1000件余りの死亡例が報告された西アフリカのエボラ流行は2年近く続いている。ツィグレネチュキ博士は、「今回の流行は終息に向かっていますが、エボラや新たな病気の効果的な治療、診断検査、ワクチンの発見のため、研究とリソースが引き続き注がれ、次の流行の際に役立つことを願っています」と話す。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります。

メディア会員登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。
※内容はプレスリリースにより異なります。

  1. プレスリリースTOP
  2. >
  3. 国境なき医師団(MSF)日本
  4. >
  5. マラリア治療薬でエボラの死亡率が低下――MSF、研究結果を発表