TPP:安価な医薬品の普及を守る戦いはまだ終わっていない

日本を含む環太平洋諸国12ヵ国が2月4日、ニュージーランドで環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の署名式を行う。一方、TPP参加各国内では医薬品の普及を守る動きが本格化し、この協定が最終的に批准・施行されるか否かが問われる議会の審議が始まっている。国境なき医師団(MSF)は、薬の高価格化をもたらす有害な条項を削除しない限り本協定を却下するよう、8億人を超えるTPP参加国内の人びとから各国政府に声をあげてほしいと呼びかけている。

 

史上最悪の貿易協定

MSF米国の必須医薬品キャンペーン責任者兼法務顧問を務めるジュディット・リウス・サンファンは「TPPは医薬品普及の観点では史上最悪の貿易協定であり、命を救う薬を最も必要としている人びとからとりあげるものです。各国の市民は、政府に対し公衆衛生の遵守を擁護するよう求めていく役割を担っているのです」と話す。

現在のTPP加盟国は日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国とベトナムだが、他の国も本協定への署名は可能なため、将来の他の貿易協定の「青写真」としても位置づけられている。

非公開協議の末に合意

 TPPの協議は5年以上にわたり非公開で行われ、一般市民が精査する機会は与えられないまま、2015年10月に大筋合意に至った。現在、本協定は公開されているため、TPPの影響を受ける人びとがようやく主張を述べ、各国の立法議員と政府に対し、医薬品の普及に有害な条項を削除しない限り本協定を批准しないよう、伝えられるようになった。

TPPが施行されれば、製薬企業の独占が強化され、低価格なジェネリック薬(後発医薬品)の流通が阻止・遅延されることで、そうした薬に頼って生きる人びとが薬を利用できないようになる。

また、TPPは公衆衛生上の保障条項を骨抜きにするとともに、途上国に対し、製薬企業のために悪用された知的財産権の保護措置を盛り込む形で、法の改正を強いる。これによって、途上国の人びとを始め、その医療を担うMSFのような団体は、必要としている安価な医薬品を購入しにくくなる。

新薬のイノベーションにとっても不利

医薬品の価格が高くなることは、各国の所得水準を問わず世界共通の問題であり、日本も例外ではない。しかし、MSFが活動している途上国に住む人びとは、薬代を自己負担しているため、薬価の高騰によって特に大きな打撃を受けることになる。

高価格な医薬品と厳格な知的財産権保護の規定は、生物医学的イノベーションの世界的な危機を打開するにあたっても、何の役にも立たないだろう。例えば抗生物質への耐性対策に有効な新薬が不足しているが、薬価が高ければ、政府はその分、そうしたニーズに基づいて行われる研究開発ではなく、患者の負担軽減策に財源を確保せざるを得ない。それに伴い利潤を拡大するのは多国籍製薬企業だ。

市民に託された自国政府への働きかけ

2015年7月、MSFは安倍晋三首相に公開書簡を送り、TPPがアジア太平洋地域の患者に及ぼす影響について熟慮し、公衆衛生推進分野でリーダーシップを発揮するよう求めた。TPPに関する国会での議論は今春始まる見通しとなっており、日本の議員が安価な医薬品の普及を阻害する本協定への署名を退ける機会はまだある。

リウス・サンファンは「自国の政府に対し、患者の健康や家族の擁護に動くのか、それとも多国籍製薬企業の利益のために動くのかを問いただす役割は、一般市民に託されています。今回のTPP署名は手続きの段階の1つに過ぎません。TPPによって、人びとが安価な医薬品を取り上げられる事態を阻止する戦いは、まだ終わっていないのです」と訴える。
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