シリア:死亡者7000人、負傷者15万人――MSF支援施設の患者数(2015年)

国境なき医師団(MSF)は、2016年2月18日付で、シリア国内でMSFが支援している病院・診療所計70施設から得たデータに基づいて民間人の被害について詳述した調査報告書『シリア内戦2015:国境なき医師団(MSF)支援先施設における死傷者の記録』を発行した。

爆撃で全壊したマアラト・ヌマンの病院

 

MSF関連の70施設で、2015年だけでも、紛争による死亡者7009人、負傷者15万4647人と記録されている。こうした被害者の30%~40%が女性と子どもだ。

 

報告書(英語版)
http://www.msf.org/sites/msf.org/files/syria_2015_war-dead_and_war-wounded_report_en.pdf
 

MSF関連の70施設で、2015年だけでも、紛争による死亡者7009人、負傷者15万4647人と記録されている。こうした被害者の30%~40%が女性と子どもだ。


MSFは国連安全保障理事会の常任理事国――その中でもシリア内戦への影響力が強いフランス、ロシア、英国、米国――に対し、2015年12月に採択されたシリア和平決議を順守すること、民間人の保護を徹底すること、民間人の居住地での戦闘をやめることを求める。

MSFの支援先施設63ヵ所に94回の攻撃――2015年

 

国際的な医療・人道援助団体であるMSFが保有しているデータは、シリア内戦で民間人とその生活圏が標的となり、無差別攻撃を受けて深刻な被害が出ていることを証明するものだ。

 

MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は「データが示す内容は衝撃です。しかし、MSFのデータですら、膨大な犠牲の一部を反映しているに過ぎません。MSF関連の施設以外での死傷者数は把握できていないのですから。実情ははるかにひどいでしょう」と話す。

MSFの調べでは、2015年だけでも、MSFが支援している病院・診療所のうち63ヵ所が合計94回の爆撃または砲撃に遭った。12施設は全壊し、スタッフ23人が命を奪われた。2016年も既に6ヵ所の病院・診療所が被害を受けている。

病院爆撃の被害者を捜索する救助隊

市民190万人以上が包囲下に――2ヵ月で餓死49人

リュー医師は「国連安保理は、民間人保護という最低限の責任を果たすべきです。民間人と医療施設への攻撃および包囲戦と兵糧攻めを禁じる一連の決議を採択したにもかかわらず、そうした行為が続いています」と指摘する。

首都のダマスカス周辺地域では、少なくとも70の町や地区で、合計145万人が包囲下にあるとみられる。包囲地域への医療物資の搬入や患者の移送はほとんど認められていない。2015年は、負傷者9万3162人が包囲地域内でMSFが支援する医療施設で治療を受けている。

首都近郊のマダヤで発生した飢餓の原因も包囲戦だ。2015年12月と2016年1月の2ヵ月間で49人が餓死している。首都圏外でも、ホムス県やデリゾール県などで推計約50万人が包囲されている。MSFは包囲地域から重病患者を移送することや、定期的な人道援助を続けることを認めるようにと繰り返し求めている。

複数回の攻撃で全壊した拠点病院

2016年は既に、MSFが支援している6ヵ所を含む17ヵ所の保健医療施設が爆撃に遭っている。2月15日にはイドリブ県マアラト・ヌマンで、MSFが支援していた病院が複数回の空爆で全壊。スタッフ9人を含む25人が命を奪われた。この病院はベッド数30床で、機能が整っており、毎月、数千人を診療する地域の拠点病院だった。

リュー医師は「マアラト・ヌマンの病院爆撃は国際人道法のはなはだしい侵害です。このケースでさえも、シリアで起きている医療施設への攻撃の氷山の一角に過ぎません。すべての紛争当事者に声を大にして申し上げましょう。あなた方の“敵”を治療した医療従事者が、すなわちあなた方の“敵”ではないのです」と強調する。

MSFはシリア内戦の関係各国に対し、マアラト・ヌマンの病院爆撃について、国際事実調査委員会(IHFFC)およびその他の適切な独立組織による第三者的な事実調査を受け入れるように求める。

各国は難民保護の責務を果たせ

シリア北部のアザーズ郡では、直近2ヵ月だけで推計4万5000人がトルコとの国境付近に逃れた。国境地帯には既に、約5万5000人が避難しており、そこに新たな避難者が加わったことになる。

一方、戦線は避難キャンプからわずか8kmの場所まで急速に接近している。すべての紛争当事者は、避難者の周辺での軍事作戦をやめるべきだ。また、民間人の保護と保健医療施設の保護を徹底すべきだ。

リュー医師は次のように訴える。「避難者はもう逃げる場所がないのです。トルコなど周辺国が多くのシリア人難民を受け入れてきたことを、MSFは高く評価します。同時に、シリア北部のアザーズの状況が悪化しており、周辺国の人道面からの努力が継続されることを願っています。また、周辺だけでなくすべての国が責務を果たし、難民保護にあたることを望みます。特に、シリア内戦の関係諸国は、難民となった人びとの安全な移動と、尊厳を傷つけない方法での受け入れに向けて、尽力しなければなりません。難民を死に追いやることのないように、国境閉鎖の回避も求められます」

関連情報

MSFが発行した報告書は、シリア北西部、西部、中部に関するもので、医療援助の不足が著しい包囲地域に重点を置いている。同国におけるMSFの活動は、独立性を保つため、いずれの国の政府の資金も財源としていない。

MSFが支援している病院・診療所とは、支援が1年以上続いている施設を指す。支援内容は多岐にわたり、医療物資の供給、最低限の給与の立て替え(対象施設のスタッフを医療業務に専念させるため)、発電機用燃料の供給、損壊した医療施設の再建費用、医療に関する専門的な助言など。70ヵ所の施設でこうした包括的な支援を行っている。また、これ以外に約80ヵ所の施設に対し、医療物資の寄贈や専門的な助言を行っている。

MSFはシリアで2011年から医療・人道援助を続けているが、対象地域の年間の医療状況を俯瞰できる継続的かつ定期的な医療データの取得は、2015年にようやく実現した。

 

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