G7:各国首脳は、公衆衛生上の危機対応力の拡大と、命を救う薬の価格引き下げに団結を

国境なき医師団

西アフリカでエボラ出血熱の流行が始まってから2年が過ぎたが、世界は同様の緊急事態への備えをわずかにしか拡充できていない。国境なき医師団(MSF)は、伊勢志摩で一堂に会する先進7ヵ国(G7)の首脳に、緊急事態への対策を国際保健の仕組みの中核に据えた意欲的な公約を期待する。また、これまで解決策が十分に講じられてこなかった、命を救うのに必要とされる薬の研究開発不足と、法外な薬価という問題に関しても、高い関心と団結した行動が求められると訴えている。

シエラレオネ・フリータウンのエボラ治療センターにて撮影(2015年1月)シエラレオネ・フリータウンのエボラ治療センターにて撮影(2015年1月)

 

国際保健の仕組み:「救急処置室のない病院を建てるな」

MSFスイスのオペレーション健康アドバイザー、モニカ・ルル医師は「保健上の緊急事態への対応が、健康安全保障とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を巡る議論の中心に位置づけられるよう、特に留意が必要です。緊急対応の強化は、ある危機的事態が国際安全保障の脅威と見なされた時に初めて着手されるのではなく、その事態に見舞われた人びとの健康ニーズに基づいて対応がなされなければなりません」と指摘する。

UHCの大目標は、万人が保健医療を利用できるよう経済的困難を払しょくすることにあり、追求されてしかるべきだろう。しかし、集団疾病の流行に対する喫緊のニーズとリスクが残っていることは、今年初めの西アフリカにおけるエボラ症例の再発生や、アンゴラで続く黄熱病の流行からも明らかである。

現状では、情勢の不安な一部の途上国の緊急対応能力は著しく限られている。G7各国は今サミットを契機に、そうした国々が単独では埋められない不足を補うための施策の拡大について、国際社会をけん引すべきだ。

MSF日本事務局長のジェレミィ・ボダンは「緊急事態に応じるための能力と資源の拡充を欠いたまま、国際保健の仕組みを強化するということは、いわば救急処置室を設置し忘れたまま病院を建設するようなものです」と警鐘を鳴らす。

薬価の引き下げ:フランスの提起に続き、命を救う薬剤入手の促進を

MSFは、法外な価格などの薬の入手を巡る問題と、必要とされている薬の研究開発不足の問題を提起したフランス政府のリーダシップを好意的に受け止めている。しかし、価格その他の薬剤入手の問題に率先してG7諸国が取り組むことを明言するかどうかについては、他のG7諸国の反対が根強い。MSFは他のG7各国政府が、伊勢志摩サミットなどにおいて薬の入手に関する議論を黙殺したり減退させたりするよう迫る、製薬業界のロビー活動に屈しないよう求める。

またG7はこの議論だけではなく、国連事務総長の招集した「薬のアクセスに関するハイレベル・パネル」も大いに支持すべきだ。それには9月のニューヨークでの会合が最も重要な機会となるだろう。

MSF必須医薬品キャンペーンの医療コーディネーター、グレッグ・エルダー医師は「MSFの活動では、薬価が高すぎるせいで、または単に必要な治療薬がないせいで人びとが困難に直面しているのを日々目にしています」と訴える。「これは世界的な問題であり、最も有力な国々が対策を検討すべき問題なのです。万人の命を救い健康を維持するのに必要な薬を手に入れられるよう、各国政府がついに重い腰を上げ解決策を講じるか否か、世界が見守っています。各国はさらに、高価格な薬に対する取り組みなしには、UHCが絵に描いた餅に終わるであろうことも直視しなければなりません」

薬の研究開発:経済活動が人命に優先されるべきではない

C型肝炎新薬の法外な価格は、製薬企業が1錠1000米ドル(約11万円/治療1コースあたり10万米ドル=約1100万円)に設定し、注目を集めてきた。年間で患者数150万人、死亡者は70万人に及ぶこの致命的な病気の治療の世界的な普及が阻害されている。

新薬により12週間での治癒も望めるようになった今でも、C型肝炎は米国内の感染症による死亡例の主要因となっている。他方で、薬剤耐性感染症の治療に用いる抗生物質の不足への憤りも高まっている。先ごろの英国政府の報告によると、2050年までに毎年1000万人が命を落とす恐れがあるという。対抗できるワクチンも治療薬もなく手が付けられないといえば、エボラもその典型だ。これらの事例から、不可欠な保健ニーズを満たし、人びとが必要な薬を許容価格で手に入れられるよう、薬剤研究の方向転換を早急に進める必要があるだろう。

MSF必須医薬品キャンペーンのナタリー・エルヌーは「各国政府は、人命に対して経済活動を優先することをやめるべきです。時間的な余裕はありません。G7政府がこの問題をどのように進展させるか、世界が注目しています」と述べている。

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業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
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03-5286-6123
代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月