【プレスリリース】 ユニセフ最新報告書を発表 世界で広がる子どもへの暴力
データで明らかになる事実
・本信は、ユニセフ発表の情報に基づき、日本ユニセフ協会が編集したものです
・原文(英語)と報告書の閲覧をご希望の際は、日本ユニセフ協会 広報室に
お問い合わせください
【2014年9月4日 ニューヨーク発】
ユニセフが今般とりまとめた、子どもへの暴力に関するこれまでで最も広範なデータを
扱う報告書は、身体的・性的・精神的な虐待の驚くべき広がりと、それらの暴力を容認し
正当化している人々の考え方を明らかにします。子どもへの暴力は、世界のすべての国や
地域社会において、“白昼の死角”になってしまっているのです。
「これらは不快な事実です。政府も親たちもその現実を見たいとは思わないでしょう」
ユニセフ事務局長のアンソニー・レークは述べています。「しかし、私たちがこれらの
不快な統計の一つひとつが示す現実-安全で守られた子ども時代を過ごすという権利が
侵害されている子どもの人生-を直視しないかぎり、子どもへの暴力はふつうのことで、
許されることだ、という人々の考え方を変えることはできないのです。子どもへの暴力は
ふつうのことでも許されることでもありません」
報告書『子どもへの暴力防止キャンペーン レポート 統計版“白昼の死角”(原題:
HIDDEN IN PLAIN SIGHT A statistical analysis of violence against children)』
は、190カ国のデータを扱い、地域社会、学校や家庭といった子どもが安全であるはずの
場所における子どもへの暴力について報告します。暴力が及ぼす、持続的でしばしば世代
を超えて連鎖する影響について詳細に検証し、暴力を受けた子どもは将来職につかず、
貧困に陥り、他人に対して暴力的になる傾向が高いということを示します。報告書の
著者は、データは、調査に答えることができた人のみのものであり、最低限の推定に
過ぎない、としています。
報告書の主な内容は以下のとおりです。
■性的な暴力
20歳未満の女の子・若者の約1億2,000万人(約10人に1人)は、強制的な性交あるいは
その他の性的暴力を経験しています。結婚したことのある15歳から19歳の3人に1人
(約8,400万人)が、夫やパートナーによる精神的・身体的・性的暴力の被害にあって
います。パートナーによる暴力は、コンゴ民主共和国、赤道ギニアでは70%以上、
ウガンダ、タンザニア、ジンバブエでは50%前後です。スイスで2009年に15歳から17歳を
対象に行われた調査によれば、女の子の22%、男の子の8%が、少なくとも1度、身体的
接触を伴う性的暴力を経験しています。男女ともに、最も多かったのはインターネットが
関連する暴力でした。
■殺人
世界の殺人事件の被害者のうち5人に1人が20歳未満の子どもや若者で、2012年では
その数は9万5,000人でした。パナマ、ベネズエラ、エルサルバドル、トニダード・トバゴ、
ブラジル、グアテマラ、コロンビアでは、10歳から19歳の男の子・若者の死因のトップが
殺人になっています。ナイジェリアでは、最も多い1万3,000人の子どもが殺人事件の犠牲
となりました。西ヨーロッパと北米では、米国の殺人率が最も高くなりました。
■いじめ
世界の13歳から15歳の子どもの3人に1人以上が、学校で日常的にいじめにあっています。
サモアでは、その割合はほぼ4人に3人です。ヨーロッパと北米では、11歳から15歳のほぼ
3分の1が、いじめを行ったことがあると答えています。ラトビアとルーマニアでは、その
割合は10人に6人近くになります。
■暴力的なしつけ
58カ国の調査では約17%の子どもが激しい体罰を受けています(頭、耳や顔を叩く、
あるいは繰り返し強く叩く)。チャド、エジプト、イエメンにおいては、その割合は
2歳から14歳の子どもたちの40%を超えます。世界全体で、おとなの10人のうち3人が、
体罰は子どもをよく育てるために必要だと考えています。スワジランドでは、その割合は
82%にのぼります。
■暴力に関する考え方
15歳から19歳の女の子・若者の半数近く(約1億2,600万人)が、夫は場合によっては
妻をたたいてもかまわないと信じています。アフガニスタン、ギニア、ヨルダン、マリ、
東ティモールではその割合が80%かそれ以上にのぼります。性別ごとのデータが入手
できた60カ国のうち28カ国で、男の子より女の子の方が、妻をたたくことが時には正当化
できると考えている割合が高い結果でした。カンボジア、モンゴル、パキスタン、
ルワンダ、セネガルでは、そのように考える女の子は男の子の2倍もいます。30カ国の
データによれば、身体的・性的虐待の被害にあった15歳から19歳の女の子・若者の
約10人中7人が、一度も助けを求めていないことがわかりました。その多くが、それが
虐待だと思わなかった、問題だと思わなかった、と答えています。
ユニセフは、家庭や政府を含めた社会全体が、子どもへの暴力を防止し減らすことが
できるようになるための、6つの戦略を提示します。親への支援と子どもたちへのライフ・
スキルの提供、考え方を変えること、司法・刑事・社会的制度やサービスの強化などが
その戦略です。そして、考え方や規範を変えていくために、暴力とそれがもたらす
社会経済的なコストについての実態を明らかにし、意識を高めていくことも必要です。
「子どもへの暴力は毎日、世界中でおきています。最も傷つくのはそれぞれの子どもたち
ですが、社会の安定や進歩を損なうという意味で、社会を傷つけるものでもあります。
しかし、子どもへの暴力は避けられないものではありません。もし私たちが、暴力の
問題を直視することができれば、防ぐことが可能なのです」と、レーク事務局長は
述べます。「この報告書が示す事実は、被害にあっている一人ひとりの子どもたちのために、
そして将来の社会の強さのために、私たちが今行動することを求めています」
* * *
本日、ユニセフはあわせて、『子どもへの暴力防止キャンペーンレポート:予防のための
戦略(原題:Strategies for Preventing and Responding to Violence against Children)』
も発表します。
■参考:子どもへの暴力防止キャンペーン
ユニセフは2013年7月31日、子どもへの暴力をなくすための行動を求める「子どもへの暴力
防止キャンペーン」を開始し、暴力はどこにも存在するが、しばしば見えにくいところでおき、
また、社会的・文化的規範によって容認されているということを訴えてきました。
“見えないことを明らかにする”(“Make the invisible, visible”)という標語のもと、
キャンペーンは、まずは人々の考え方、行動や政策を変えるための意識の啓発に努めています。
同キャンペーンはまた、成功した取り組みを集め焦点をあてることで、暴力は防止することが
できるという考え方を伝えています。世界各地域の約70カ国がこのキャンペーンに参加し、
さまざまな形の子どもへの暴力の発見、追跡、報告に力を入れています。
詳しくは以下をご参照ください。
http://www.unicef.org/endviolence/
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■報告書原本のご提供
原本を事前にご覧になりたい場合は、日本ユニセフ協会 広報室までお問い合わせください。
公表後には日本ユニセフ協会HPからもダウンロードいただける予定です。
■本プレスリリースに関するお問い合わせ
(公財)日本ユニセフ協会 広報室
TEL:03-5789-2016 FAX : 03-5789-2036 jcuinfo@unicef.or.jp
または
Melanie Sharpe, UNICEF New York, Tel: +1 917 485 3344, msharpe@unicef.org
Rita Ann Wallace, UNICEF New York, Tel.: 1 212 326-7586, Mobile: +1 917 213 4034,
rwallace@unicef.org
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進
するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、
その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子ども
たちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのため
に活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する36の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの
任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会
のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ
活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
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