「高校生活と進路に関する調査」速報 高3生の9割が高校生活を振り返って成長を実感 主体的に進路選択をすると成長実感は高まる
本調査は、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクトにおける第1回親子調査に先立ち、プレ調査として実施したものです。「子どもの生活と学び」研究プロジェクトは、小学1年生から高校3年生までの子どもの成長と自立のプロセスを明らかにすることを目的としています。今回の調査は、その一環として、高校卒業段階の高校3年生が「高校生活を振り返ってどれくらい成長実感を持っているのか」、また、「何が成長実感に影響するのか」、「どれぐらい主体的に進路選択を行っているのか」について調べ、明らかにしました。
主な調査結果は以下の通りです。
【成長実感について】 1.高校生活を振り返って、「自分は成長した」と回答した高3生は約9割(「とてもあてはまる」+「まああてはまる」)。多くの高3生が成長を実感している。一方で、成長を実感していない高3生が約1割いる。(図1) 2.成長を強く実感した高3生には、以下の特徴がみられた。(数値は、「自分は成長した」に「とてもあてはまる」と回答した割合) ●高校生活での活動に積極的: 「学校の授業」「友だち付き合い」などに「積極的だった群」(とても積極的」+「まあ積極的」)ではいずれも5割前後。(図2) ●「人の考え方や話でわくわくした経験や体験」をしている: そのような体験が「多い群」では6割。(図3) ●「自分で何か目標を設定して達成」している: 目標の設定・達成について「あてはまる群」(とてもあてはまる」+「まああてはまる」)では6割弱。(図4) ●主体的に進路を選択している: 自分の進路について「真剣に考えた」「自分から進んで情報を収集した」「自分の意思で進路を選択した」と回答する傾向が強い群(「進路選択主体性・高群」)では7割弱。(図5) 【進路選択の主体性について】 3.将来に対する希望では、全体の7割が「社会のために貢献したい」(「とてもあてはまる」+「まああてはまる」、以下同様)と回答している。一方で、実際に高校生活を振り返って、「社会問題について真剣に考えた」と回答したのは4割にとどまった。(図6) 4. 「社会問題への関心」を持ち、行動している(「自分にできることをしている」、「自分にできることを考える」)高3生ほど、より主体的に進路選択を行っている。(図7) 5.「進路選択の主体性」と「どのような職業に就くか」を意識した時期の関連をみると、主体的に進路選択を行った高3生ほど、より早い時期から「どのような職業に就くか」を意識している傾向がみられた(「小学生のころ」+「中学生のころ」の割合:「進路選択主体性・高群」4割、「進路選択主体性・低群」2.5割)。(図8) |
本調査では、高3生の約9割が、高校生活を振り返って「自分は成長した」と回答しています。その背景を分析したところ、高校生活の積極性や様々な知的経験や体験、目標を設定して達成すること、進路選択における主体性などが成長実感につながっていることが明らかになりました。高校生が身近な生活のなかで様々な人の考え方にふれたり、目標を意識したりしながら、主体的に進路選択をすることが大切であることを示す結果です。
また、高校時代は、自分の将来や学ぶ意味、意義を深く考える時期です。社会問題に対する関心を持つことは、自身が社会とどう関わっていくのかを考える契機になります。本調査では、将来について、全体の7割の高校生が「社会のために貢献したい」と考えるものの、高校生活のなかで「社会問題について真剣に考えた」と答えたのは4割にとどまるという実態も浮き彫りになりました。一方で、社会問題に対する関心が高い高校生は、自分の意思で進路を選択するといった自立した行動がとれる傾向にありました。学校や地域、家庭で、社会問題に対する高校生の関心を高めるような働きかけをする必要があるといえそうです。
ベネッセ教育総合研究所でも、子どもたちに早い段階から様々な生き方や職業があることを示すことや、学ぶことの意味を考えるための情報を提供することなどを通して、子どもたちが主体的に進路を選択できる環境を整えていきたいと考えます。
■調査概要
名称 | 「高校生活と進路に関する調査」 |
調査テーマ | 高校3年生の学習や生活、進路選択についての意識と実態 |
調査方法 | 郵送法による自記式質問紙調査 |
調査時期 | 2015年3月~4月上旬 |
調査対象 | 全国の高校3年生(2015年3月時点) (配布数:735 有効回収数:483 有効回収率:65.7%)*東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクトの調査モニター対象。 |
調査項目 | 学校の授業での経験/勉強時間/成績/高校生になってからの知的経験や体験/様々な活動の取り組み状況/4月からの進路/進路を意識した時期/進路決定の参考にしたこと/進路決定に影響した人/進路選択時の悩み/大学でしたいこと/大学受験に対する考え/入試方法/希望した進路の実現度/進路選択における主体性/高校生活の振り返り/将来展望/「自立」に対する高校生の自己評価など |
「子どもの生活と学び」研究プロジェクト及び本調査企画・分析メンバー | プロジェクト代表者 ●石田浩(東京大学社会科学研究所教授)●谷山和成(ベネッセ教育総合研究所所長) 分析メンバー ●耳塚寛明(お茶の水女子大学教授)/秋田喜代美(東京大学教授)/松下佳代(京都大学教授)/佐藤香(東京大学教授)/有田伸(東京大学教授)/藤原翔(東京大学准教授)/香川めい(東京大学特任助教) ●木村治生(ベネッセ教育総合研究所副所長、主席研究員・東京大学客員准教授)/邵勤風(ベネッセ教育総合研究所初等中等教育研究室室長、主任研究員)/橋本尚美(ベネッセ教育総合研究所研究員)/木村聡(ベネッセ教育総合研究所研究員)/吉本真代(ベネッセ教育総合研究所研究員)/太田昌志(ベネッセ教育総合研究所特任研究員)/渡邉未央(ベネッセ教育総合研究所研究スタッフ) |
■主な調査結果
1.高校生活を振り返って、「自分は成長した」と回答した高3生は約9割(「とてもあてはまる」+「まああてはまる」)。多くの高3生が成長を実感している。一方で、成長を実感していない高3生が約1割いる。
2.成長を強く実感した高3生には、以下の特徴がみられた。(数値は、「自分は成長した」に「とてもあてはまる」と回答した割合)
●高校生活での活動に積極的: 「学校の授業」「友だち付き合い」などに「積極的だった群」(とても積極的」+「まあ積極的」)ではいずれも5割前後。
注1:「あてはまらない」は「あまりあてはまらない」と「まったくあてはまらない」の合計。無回答・不明は除外。(以下同様)
注2:「積極的だった群」は「とても積極的」「まあ積極的」と回答した高3生、「積極的ではなかった群」は「あまり積極的でない」「まったく積極的でない」と回答した高3生。
●「人の考え方や話でわくわくした経験や体験」をしている: そのような体験が「多い群」では6割。
注:高校生になってからの知的経験や体験を尋ねた質問では、「これまで知らなかった考え方に触れて驚いたこと」「人の話を聞いてわくわくしたこと」「外国語で海外の人と話ができて嬉しかったこと」の3項目を得点化し、体験が「多い群」「中群」「少ない群」の3分割にした。「中群」は図から省略した。
注:高校生活の3年間の振り返りを尋ねた質問で、「自分で何か目標を設定して達成した」の項目について、「とてもあてはまる」「まああてはまる」と回答した人を目標設定・達成した「あてはまる群」、「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」と回答した人を「あてはまらない群」とした。
注:進路選択における主体性を尋ねた質問で、「自分の進路について真剣に考えた」「自分から進んで進路に関する情報を収集した」「自分の意思で進路を選択した」の3項目について、「とてもあてはまる」を4点〜「まったくあてはまらない」を1点として合計得点を算出し、「進路選択主体性・高群」「進路選択主体性・中群」「進路選択主体性・低群」に3分割した。図7と図8も同様である。
3.将来に対する希望では、全体の7割が「社会のために貢献したい」(「とてもあてはまる」+「まああてはまる」、以下同様)と回答している。一方で、実際に高校生活を振り返って、「社会問題について真剣に考えた」と回答したのは4割にとどまった。
4.「社会問題への関心」を持ち、行動している(「自分にできることをしている」、「自分にできることを考える」)高3生ほど、より主体的に進路選択を行っている。
注:「社会問題への関心」について、ふだんの自分にもっともあてはまるものを回答してもらった。
5.「進路選択の主体性」と「どのような職業に就くか」を意識した時期の関連をみると、主体的に進路選択を行った高3生ほど、より早い時期から「どのような職業に就くか」を意識している傾向がみられた(「小学生のころ」+「中学生のころ」の割合:「進路選択主体性・高群」4割、「進路選択主体性・低群」2.5割)。
<ベネッセ教育総合研究所の活動/ウェブサイトについて>
ベネッセ教育総合研究所では、今後も、時代の変化に即したテーマで、子どもや教育に関する、調査や研究活動を行い、その結果を広く社会に開示することで、様々な方々との議論の輪を広げていきたいと考えています。ベネッセ教育総合研究所のウェブサイト(http://berd.benesse.jp/)では、今回の調査データのほかにも、様々な独自調査のデータ・報告書を公開しています。 |
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