ユニセフ 中東・北アフリカ地域事務所 報告書『戦火の中の教育』発表 【プレスリリース】

教育を奪われている子ども、1,300万人以上

紛争で破壊されたガザ地区にある学校の前で友達と手をつなぐ10歳の少女。© UNICEF_NYHQ2014-1771_El Baba紛争で破壊されたガザ地区にある学校の前で友達と手をつなぐ10歳の少女。© UNICEF_NYHQ2014-1771_El Baba

 

※本信は、ユニセフ本部の発信情報を元に、日本ユニセフ協会が作成・配信しています。
※原文はhttp://www.unicef.org/media/media_83072.htmlでご覧いただけます。

【2015年9月3日 アンマン(ヨルダン)発】

ユニセフ(国連児童基金)は、中東・北アフリカ地域で急増する紛争や政治的混乱により、1,300万人以上もの子どもたちが学校に行く機会を奪われていると、本日発表の報告書の中で指摘しました。

報告書『戦火の中の教育』(原題:Education Under Fire)は、中東・北アフリカの9カ国*で、暴力が学校に通う子どもや教育システムに与えている、直接的あるいは間接的な影響について、報告しています。時に意図的に行われる学校や教育設備への攻撃は、多くの子どもたちが学校に通わない主な理由の一つです。シリアやイラク、イエメン、リビアだけで、9,000近くの学校が、破壊されたり、避難所となっていたり、紛争当事者たちに占拠されているなどして使用できなくなっています。

それ以外にも、学校への行き帰り、あるいは学校内にいる時でさえ、何が起こるか分からないという恐怖から、何千人もの教師が職を離れたり、親が子どもを学校に行かせないという事態も起きています。

ヨルダンやレバノン、トルコでは、既に大きな負担を抱えた国の教育設備では生徒のさらなる増加に対応できず、70万人以上のシリア難民の子どもたちが、学校に通うことができていません。

「紛争は、この地域全体にわたって子どもたちに破壊的な影響を与えています」とユニセフ中東・北アフリカ事務所代表のピーター・サラマは話しました。「学校への攻撃は、物理的なダメージだけでなく、希望や未来を打ち砕かれた生徒たちに絶望感を与えています」

 

国内避難民のためのキャンプに設置されたテントの学校で授業を受ける子どもたち。(イラク)© UNICEF_IRQA2015-00002_Khuzaie国内避難民のためのキャンプに設置されたテントの学校で授業を受ける子どもたち。(イラク)© UNICEF_IRQA2015-00002_Khuzaie

 

報告書は、最も厳しい状況の子どもたちでも教育を受けられるよう、自己学習のための教材開発や学習スペースを増やすための校舎修復など、広範囲にわたる取り組みにも触れています。しかし、なすすべもなく紛争に巻き込まれている子どもたちや親たちにとって、教育は最優先事項であるにも関わらず、教育のニーズが急激に増大する中でこうした活動のための資金は不足していると、報告書は指摘しています。

特に、シリア危機の影響を受けている子どもたちの教育と保護への国際支援を促進するため、2013年にユニセフがパートナー団体とともに開始したイニシアチブ『失われた世代にしないために』(原題:No Lost Generation Initiative)は、さらなる支援が必要であると述べています。

さらに、報告書は国際社会、避難民を受け入れている周辺国政府、政治家、民間セクター、その他パートナーに対して、以下のことを呼びかけています。
  • 特に厳しい状況にある子どもたちに対する非公式の教育の機会を拡大することで、学校に通うことができない子どもの数を減らす
  • 紛争下の国々や、避難民を受け入れているホストコミュニティに対し、学習スペースの拡大や教員の雇用や研修、教材の提供などを通じて教育システムを支援する
  • シリア危機の影響を受けている国々での、非公式教育の認可促進 

*中東・北アフリカの9カ国(本報告書対象国):シリア、イラク、レバノン、ヨルダン、トルコ、イエメン、リビア、スーダン、パレスチナ

 * * *

空爆で瓦礫となった自宅から見つかった教科書を見つめる男の子。(パレスチナ・ガザ地区)© UNICEF_NYHQ2014-0894_El Baba空爆で瓦礫となった自宅から見つかった教科書を見つめる男の子。(パレスチナ・ガザ地区)© UNICEF_NYHQ2014-0894_El Baba

 


『戦火の中の教育』の報告概要
<概略>
○本報告書対象国9カ国において
・学校に通学していない子どもの数: 1,370万人(学齢期の子どもの40%)
・学齢期の子どもの人数: 3,400万人

○シリア、イラク、イエメン、リビアで使用不可能になった学校: 8,850校以上

○教育分野に必要な資金
・8カ国において必要な資金総計*:3億500万 米ドル *リビアはデータなし
 ・シリア危機(国内及び近隣諸国):2億 米ドル ― 必要資金の1/3しか調達できていない
・イエメン:990万 米ドル ― 必要資金の10%しか調達できていない
・イラク:7,400万 米ドル ― 必要資金の1/3しか調達できていない
・パレスチナ:800万 米ドル
・スーダン:1,390万 米ドル

<国別データ>
シリア

  • 国内の4分の1の学校が使用不可能
  • 昨年だけで60校が攻撃を受けた
  • これまでに5万2,000人の教師と523人のカウンセラーが職を離れた
  • シリアには5年間教育を受けられていない子どもたちもいる
  • 少なくとも20%の子どもたちが、試験を受けるために紛争の最前線を通過しなければならなかった


イエメン

  • 4分の1の学校が使用不可能
  • 約60万人の子どもたちが試験を受けることができていない
  • ここ数カ月の間に150万人以上の人々が自宅から避難しなければならなかった


イラク

  • 2014年はイラクにとって、2008年以来最も厳しい年であった
  • 700人近くの子どもたちが命を落とし、さらに500人が負傷した
  • 少なくとも95万人の学齢期の子どもたちが紛争の影響を受けた
  • 昨年約1,200の学校が家を失った家族のための共同避難所として使用された


リビア

  • 昨年だけで43万4,000人以上の人々が家を失った
  • ベンガジ(リビア東部)では就学率が半減し、3分の1の学校しか機能していない


スーダン

  • 推定約290万人の人々が紛争によって家を失った
  • 紛争に加えて、不十分なインフラ設備や安全性の欠如、貧困家庭にとっては高すぎる生活費が子どもの学校へのアクセスに影響を与えている


* * *

■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(http://www.unicef.org/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する36の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (http://www.unicef.or.jp/

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会社概要

URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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