緑に囲まれた暮らしをするハーバリスト・萩尾エリ子さんの蓼科から届く手紙のようなエッセイ集。

蓼科での四季を追った美しい写真。見て、読んで、優しい気持ちになれる一冊。『あなたの木陰小さな森の薬草店』扶桑社より発売。

株式会社扶桑社

2023年11月22日 10時20分

本書「小道の先に」より抜粋

　風の通る庭をくるりとまわって歩いてゆくと、森の小さな草たちがお迎えします。目をとめれば、花の終わった葉は赤ちゃんのようにお日様に両手を広げ、木々たちは青い香りを漂わせ、枝を伸ばして「ようこそ」と言葉をかけるでしょう。
　葉陰においた椅子に座れば、記憶の中の懐かしい人も、かつて触れあったあの毛むくじゃらの友だちも、どこからともなく現れます。窓から流れる透きとおった香りは大気に溶け、店内への案内人となって柔らかく静かに流れるのです。
　訪ねてくださる方は減り、出掛けることも控える日々の中で、あなたに手紙を書きました。月に一通、季節がふた巡りの時間です。そのあいだ、動かない、動く必要のない植物のように過ごして、植物のまなざしを持ってみると、世界は少し違って見えました。
　人生は旅のようですね。旅人たちへの小さなお供にと、二年分の手紙を小さく束ね、草の栞を添えてお届けします。歩き疲れたら緑に埋もれて休んでもいいし眠ってもいいけれど、まずは一杯、お茶をいかがですか。この店の物語を少しお話ししましょう。

「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」は、森の中にある小さなハーブ店。ハーブティーやアロマオイルなど、心と体を癒すアイテムが並びます。

　月刊誌『天然生活』にて２年間連載を担当していた店主の萩尾エリ子さん。その、やさしく語り掛けるような文章は、まるでハーブのように心をいやしてくれます。

連載記事に、新規のコラムを5編加えて一冊にまとめました。

四季を通じて、

美しい野花や瑞々しいハーブを記録した、蓼科の空気感ごと切り取った写真も必見です。

小さな春をあなたに