「卒業」を切り口に企業姿勢を示す!シーズンネタを活用したプレスリリース事例

春は出会いと別れの季節。3月は「卒業」をキーワードにしたキャンペーンや商品展開、関連調査をフックにしたPRなどが盛んになりますよね。「卒業」と聞くと学生や新社会人など一定のカリキュラムを終えて新たな社会へ飛び立つイメージが強いですが、今回ご紹介するプレスリリース事例は一味違った「卒業」を題材にしています。

多くの人たちが経験してきた様々な「卒業」は、このシーズンならではのテーマ。別れだけでなく新たな一歩を踏み出す節目として、自社の情報発信や企画に活かすにはどのような方法があるのでしょうか。今回は、PR TIMES MAGAZINE編集部がピックアップした2019年2月27日配信の東日本高速道路株式会社さんのプレスリリースを紹介します!

◆東日本高速道路株式会社さんのプレスリリースはこちら
“運転卒業式”をハッピーな家族イベントに 家族からのすすめで「免許返納」を決めたある夫婦を描いたロードムービー「父と母の卒業旅行 ~The Last Long Drive~」公開

こういう「卒業」もあるのか!東日本高速道路株式会社の「卒業」プレスリリース事例

今回注目した事例は、東日本高速道路株式会社さんのプレスリリース。東日本高速道路株式会社、通称NEXCO東日本さんは高速道路の管理運営や建設事業、高速道路関連ビジネスを行っています。今回のプレスリリースは、社会問題のひとつとして度々報道される「高速道路の逆走」を防止するためにおこなったプロジェクトに関連するもの。

NEXCO東日本さんは、高速道路の逆走は過半数が65歳以上のドライバーによるものだという事実を踏まえ、高齢ドライバーの運転について、本人だけでなく家族で一緒に話し合うことの大切さを伝えるために、あるひとつのロードムービーを公開しました。

社会問題解決の一助になりたいという想いが込められたこのロードムービーは、「運転卒業」というテーマで、「免許返納」を迷っている78歳の男性ドライバーが、73歳の妻とともに「運転卒業」の最後のドライブに出るというストーリー。プレスリリース配信後には、SNSでも様々な反響がありました。

https://twitter.com/sac_KockUdwn/status/1121400062024663041

このプレスリリースの人気の理由を紐解いてみたところ、

  • 「卒業」の機会を自ら生み出しポジティブに活用
  • 動画内容を丁寧に解説
  • 社会的な背景に真摯に向き合う企業の姿勢を随所で見せる

の3つのポイントが見えてきました。

GOODポイント1:「卒業」という節目を活かした前向きなメッセージづくり

このプロジェクトで最も注目すべきは、NEXCO東日本さんだからこそ提言できるメッセージを体現する卒業企画になっているという点です。卒業は別れを伴う節目。淋しげなイメージも想起されますが、この「運転卒業」は、家族みんなで新たな一歩を踏み出すというポジティブな読後感があります。

WEB限定ロードムービーのヒトコマ

企画意図を齟齬なく伝えるプレスリリースを作成するのは、とても繊細な配慮が必要です。本プレスリリースを参考にしたいポイントの一つ目は、プロジェクトに取り組む意義の明示です。プレスリリース冒頭では「高齢ドライバーによる車の運転や高速道路の逆走防止を家族で話し合うことの大切さを理解いただくことを目的に…」と明記されており、NEXCO東日本がなぜこのようなメッセージを発信するのかについて、姿勢を示す説明が丁寧になされています。

このような一文があるかどうかで、意図したメッセージが誤解されることなく伝わる可能性がグンとあがります。「運転卒業」の企画は、免許返納が目的ではなく、あくまで「家族で話し合うこと」の大切さを伝えようとするものであり、こういった一文は読み手の幅を広げます。つまり、高齢ドライバーに該当する人だけでなく、その家族や孫にあたる人たちにとっても自分事化しやすくなるのです。

GOODポイント2:動画のストーリーボードを丁寧に解説

様々な広告施策も伴う大がかりなプロジェクトになればなるほど、Web動画の視聴数は重要指標のひとつとされていることが多いでしょう。プレスリリースにも動画埋め込みの機能があることから、PR TIMES上でもYouTubeなどにアップした動画を添えた配信は非常に増えています。

このような背景から、「動画を見てほしい!」という思いのあまりプレスリリースでも動画埋め込みのみをおこない、動画の説明は省かれるということもあります。しかし今回のNEXCO東日本さんのプレスリリースのように、動画のストーリーを画像とテキストで丁寧に伝えることは非常に効果的です。

その理由は一言でいうと、動画視聴は「相手の時間を使う」ものだからです。そういった配慮として、動画のストーリーや分数などを明記しておくのは丁寧な説明だといえます。あらかじめ動画の内容や視聴時間が分かっていれば、再生の心理的抵抗も下げられます。また、動画が再生されない限りストーリーの内容も伝わらないのだとしたら、せっかくプレスリリースを目にしてもらえた好機を逃してしまいますよね。

動画の象徴的なシーンを静止画にし、簡単なあらすじを追えるようにしておくことで、社会問題の描き方やプロジェクトの目的も訴求しやすくなるでしょう。内容を丁寧に見せることで、「動画で見てみたい」という気持ちをむしろ強くさせることにもつながるので、動画コンテンツの紹介を行う場合には是非真似したいポイントです。

GOODポイント3:社会的な背景に真摯に向き合う企業の姿勢を随所で見せる

同プレスリリースは、単にプロジェクトの発表とそれに伴うロードムービーの紹介に留まらず、高速道路の逆走を無くすという目標実現に向けたデータや様々な立場の人からのコメントが付与されています。

  1. 「本当の家族」である出演者のコメント
  2. 高速道路での逆走発生件数など事実に基づくデータ
  3. 有識者からのアドバイスと運転能力のチェック法

①「本当の家族」である出演者のコメント

このロードムービーに出演しているのは、実在する本当の家族。物語の主人公である運転歴48年のドライバー 雨宮旭さん(78歳)本人には、一切伝えられていない「運転卒業式」のサプライズもあり、そのことに対するコメントもプレスリリースで紹介されました。

単に出演の感想を聞くだけではなく、このプレスリリースの読み手が逆走防止の意識を少しでも強く持てるような、目的に沿ったコメント取りになっている点は意識しないと忘れてしまいやすい大事なポイントです。

高速道路での逆走発生件数など事実に基づくデータ

高速道路の逆走の現状について、実態を示す客観的データが示されています。問題の深刻さについて正しく理解できるだけでなく、「自分の家族にも起こり得る」ということがリアルに感じられます。

自分たちの事業特性を踏まえ、開示することで強いメッセージとなるデータを付与することは、企画意図の裏付ける際にも大きな意味を持ちます。自分達の業界や、事業の周辺にある出来事をナナメから見ることのできる事実や根拠は、プレスリリースを配信する上で大事なファクトになることを今一度知っておきましょう。

③有識者からのアドバイスと運転能力のチェック法

最後に、家族の逆走事故を未然に防ぐために、すぐに取り入れられる運転能力のチェック方法が紹介されています。こちらも、読み手の行動を喚起するプレスリリース事例として、是非参考にしたいポイントです。

このような情報は、「誰が言っているか」とセットで紹介することが欠かせません。本リリースではメモリークリニックお茶の水院長の朝田 隆氏が監修しており、プロフィールと共に記載されています。

上記のような情報までしっかり揃えられていることで、高速道路利用者の命を守り、安心して利用できる公共交通の実現を目指すNEXCO東日本の熱意が伝わります。このご時世、企画に込めた想いがどれだけ素晴らしくても、一過性のプロモーションだと認識されてしまえばまったく違う解釈から賛否を呼ぶリスクもうまれやすいのです。言葉や表現の装飾ではなく、「その志のために何をするか」が伝わるプレスリリースは、読み手の心を動かす力を持ちます。今回のNEXCO東日本さんのプレスリリースは、そのお手本のような内容だと言えますね。

単なるシーズン切り口の活用ではなく、読み手の有益性を追求する発信を

多くの人が3月に想起する「卒業」というキーワード。今回ご紹介したNEXCO東日本さんのプレスリリースは、自社ならではの「卒業」を新たに生み出し、ポジティブな読後感へとまとめながらも、誠実な企業姿勢を体現するような情報発信だといえます。

「注目されやすいから」という理由だけで切り口を選んでは、プロモーションの域を超えたメッセージは伝わりづらい時代です。「卒業」に限らず、シーズンキーワードを活用する場合には、是非今回ご紹介したポイントを参考にしてみてくださいね。

<編集/鈴木 碩子>

この記事のライター

大森 美野

大森 美野

2015年にPR TIMES入社。主にPR活動レポート作成をしていましたが、もっとお客様の声が聞きたくて2019年よりカスタマーリレーションズ本部に異動。情報を欲していた広報担当時代を思い出しながら、PR TIMES MAGAZINEではたくさんのアレコレを届けていきたいと思います。石橋は叩きすぎて壊すタイプ。でもたまにスキップで渡っちゃいます。

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