コロナ禍でユーザーの共感と愛情を集めた行動とは。6curry × Retty 広報対談(前編)

SNSやPR TIMES上で話題になったPR事例の裏側に迫る本連載。今回は、2020年3月中旬から4月初旬にかけて実施された、会員制・招待コミュニティ「6curry」(シックスカレー)と実名口コミグルメサービス「Retty」(レッティ)の取り組みをご紹介します。

6curryのカレー。なんだかお腹が空いてきますね。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い大きな打撃を受けた飲食業界で、両社は次々とオリジナルの対応や自社ならではの支援の形を見出し、スピーディに実行。各プレスリリースのいいね!数やSNS・報道記事などからもその反響の大きさが伺えます。

Retty株式会社さんでは2つの取り組みが実施されました。まず3月中旬に、Twitter上でのハッシュタグ投稿企画を提案。

「グルメサービスRetty、「#私が応援したいお店」を募集。飲食店にファンの気持ちを届けたい。」(2020年3月13日)

 4月初旬には、いち早く飲食店のテイクアウト・デリバリー情報を可視化しました。

「グルメサービスRetty、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、テイクアウト・デリバリー導入店舗の情報掲載を開始。」(2020年4月7日)

株式会社シックスカレーさんは、飲食店の業態をガラッと変えた、オンラインでつながる体験を提案。

「withコロナ時代に向けて。会員制・招待コミュニティ「6curry」は次なる飲食店のカタチをはじめます – オフラインの飲食店業態からオンライン上でつながる新しいコミュニティの取り組みを開始」(2020年3月30日)

 情報収集・発信に悩みを抱える広報担当者が増えるいま、社内やユーザーを巻き込みながら企画を実行した裏側を、プライベートでも仲良しだという両社の広報PR担当者に聞きました。前後編でお届けします。

株式会社シックスカレー ブランドプロデューサー
もりゆか 
@morin_yuka

1988年、神奈川県、夏生まれ。新卒でWEB広告代理店に入社し、WEBクリエイティブの企画、分析、戦略立案から実行まで携わる。その後インバウンドメディアやSNSマーケ会社でのプランナーを経て独立。現職に至る。6curryにはコミュニティ立ち上げ時のクラウドファンディングのライターとして参画。その後プロデューサーへ。現在は編集・バックオフィスなども含め幅広く事業を見ている。

Retty株式会社 広報(カレー担当)
遠藤 彩(えんどう あや) 
@aya_pee

1987年生まれ、東京都出身。商社、保険会社でセールスを行い、個人営業、法人営業や経営戦略を担当。 その後、PR会社に転職しJリーグをはじめとしたスポーツ団体のPRに従事し、2019年4月、Retty株式会社にジョイン。サービス広報、コーポレート広報など広報業務全般を担当する。趣味はキャンプとFuji Rockとカラオケ。

居場所や商品の代わりに提供できる「価値」を考えた

ーーまず、6curryさんの企画についてお話ししましょう。飲食店という枠組みを超えて「サードプレイス」や「コミュニティ」としての機能が注目されてきましたよね。

 もり:私たちは、一般的な飲食店であることに加えて「みんなが混ざり合う“EXPERIENCE THE MIX.」がコンセプト。店舗内で積極的な交流を促すスタイルだったので、3月中旬に店舗の休業はやむを得ないと判断したんです。

6curryはサブスクリプションモデルの飲食店。利用者は「6curryメンバー」として、一緒にお店を作り上げるコミュニティの一員となる

飲食店というリアルな居場所や商品を提供できなくなった今、会員さんのために出来ることを社内の4名のメンバーで考えた結果、オンライン上で「6curry Zoom店」を開設しようという判断になりました。PR TIMESでの発表は決定から3日後に行いました。

遠藤:私、この発表にすごく納得感があったんです。この施策で提案したのは「新しい価値観」ただお店や場を提供するだけでなく、「想い合う」という文化ができていたんですよね。この下地があるからこそできるんだなって。

もり:わ、嬉しい!でも会員さんたちからも同じように受け取っていただけたのか、ポジティブなコメントが多数寄せられました。

Instagramでは6curry会員によるメッセージバトンも自然発生

遠藤:Zoom店をどう運営してるのか、興味あるなぁ。

もり:今までやってきたことをオンラインにスイッチしてる感覚ですね。私たちの根底にあるのは「みんなでみんなが主人公になれる場をつくる」というビジョン。そのために、創業時から「みんなが得意なものや好きなものを披露する」という文化があります。これを受け継いで、Zoom店でも会員さんたちに企画出しなどを積極的にやってもらっています。その日の司会進行をお任せしたり。

遠藤:リアル店舗との違いは感じる?

もり:お店なら、みんなでわいわいしたい時にも、二人でちょっと親密に話したい時にも対応できる。でもオンラインはそれが難しいな、とは感じます。企画に寄せすぎると一人のスピーチを聞く形式になってしまう時もあるので、双方向のコミュニケーションが取りにくいなと気づいたり……日々、仮説検証の繰り返しですね。

ただオンラインとリアル店舗での顔ぶれが異なるので、それも新しい「MIX,混ざり合い」に繋がっていると感じています。

恒例イベントの無期限延期が企画のきっかけ

ーーRettyさんの取り組みにも大きな反響がありました。Twitterハッシュタグ企画では、予想を大きく超える数の投稿が寄せられたとか。この企画はどういう経緯で生まれたのでしょうか?

遠藤:毎年恒例のユーザーイベントの中止がきっかけでした。「Retty Night」という、全国からコアなユーザーさんと飲食店さんを招待して行う大規模イベントで、今年も3月7日に予定していたんです。

グッズの用意や、メディアの誘致なども行なっていましたが、感染拡大防止に伴い無期限延期が決まって。準備をしていたメンバーを筆頭に、社員の心に穴が空いてしまったというか……。ユーザーさんたちも同じで、わかってはいるけど残念、と。

 この状況で何ができるか考え、生まれたのが「困難な状況にあるお店のためにできることをしよう」というアイデアでした。Rettyのユーザーさんなら、お店が喜ぶことを喜んでくれる。そこでTwitter上でユーザーさんや一般の方から「お店に行きたい」という想いを語ってもらうという企画が実現しました。

飲食店を応援するためにも、まずはユーザーさんの熱量をぐんとあげたくて、テイクアウト・デリバリー情報を公開する前にこの企画を実施したんです。

「#私が応援したい店」企画で投稿されたユーザーの声(一部抜粋)

もり:『Retty』は投稿を読むたびにユーザーさんの「愛情の深さ」に驚きます。みんな愛するお店の話、いわゆる「推しの話」が止まらない。だからこのプロジェクトを見たときにも、今までRettyさんが築き上げてきた世界観がそのまま反映されているなと感じました。

遠藤:Rettyを使っていない方にも共感してもらえたらいいなと思っていて。だからこそいろんな方に参加してもらえて嬉しかったですね。

反省点は社内メンバーへのケア不足 

もり:Rettyさんの企画は、誰の発案だったの?

遠藤:最初は私。いつもどおり、広報ネタを考えていた中で「今、会社の利益に直結する企画を考えたところで、社会の役に立てるのかな?」と感じて。創業からずっと飲食店とユーザーに向き合ってきた会社だからこそ、今できることを考えたかった。そこから、プロダクト部門や飲食店営業、両方のチームのメンバーと話す時間を作りました。

もり:広報発案だったんだ……!でも、難しいこともあったのでは。

遠藤:特にTwitter企画は、結構難しかったですね。実施自体は1週間くらいで決まったのだけど、社内の反応はそれぞれで。

というのも、発表当時(3/13)はまだ外食産業への影響について見通しが立ちにくい時期でした。欧米諸国が次々とロックダウンや外出禁止令を出し、「日本も緊急事態宣言が発令されるのでは?」という見方もあったけれど、外出は自粛されておらず、飲み会をやっている人たちもいました。この頃は外食サービスの関連企業は様子見が多くて

もり:たしかに、一番手はどういう捉えられ方をするかわからないよね。私たちも正直なところ、発表するときは不安だったな。

遠藤:だからこそ、二つ目の「テイクアウト・デリバリー導入店舗の情報掲載」を発表した時にはFAQ作成に注力しました。社外からの問い合わせへの対応はもちろん、社内に説明するためにも

もり:社内に対しても?

遠藤:Twitter企画の発表前後を振り返って、社内メンバーへのケアが足りなかったなと反省したんです。Rettyに在籍する150名のメンバーは国籍もバックグラウンドも様々。中には母国の悲惨な状況に心を痛めているメンバーもいたのですが、ユーザーさんや飲食店のことを思うあまり配慮しきれなかった。

広報が発信することで「そこまでしてプロモーションしたいの?」と誤解されないためにも、「キャンペーンではない」ということを解像度高く伝えることが必要で。プラットフォーマーとしての立ち位置を丁寧に共有しました。

「私たちらしさ」を考えたら自然と次の行動が決まった

遠藤:6curryさんはどうだった?

もり:たしかに難しい部分もありましたが、「6curryならどう考えるかな?」という視点を持つことで、私たちらしい発表ができたと思います。

私たちは、プレスリリースであっても第一の読み手は会員さんだと考えていて。だからこれまでの発表においても、内容や伝え方が「6curryらしいか」「会員さんが読んだときに違和感がないか」という視点でチェックをしてきました。

正直なところ、今回に関しては「私たちも被害者なのでは?」と、辛くなってしまった部分もあって。でも原点である「6curryらしさ」に立ち戻ったときに「明るく、新しいチャレンジにしよう」とメンバー全員が自然と思えたんです。「今は危機的状況だけど、新しい社会へのアップデートだと捉えているよ!」というメッセージのほうが「6curryらしい」なと。

遠藤:すごい。そのメッセージはすぐに決まったの?

もり:そうですね、結構スムーズに。というか「6curryらしい動きってなんだろう?」と考えたら自然と行き着いた感じですね。もちろん、4名それぞれ、個々では動揺していたり、不安だったりした部分もあったけど、6curryに引っ張ってもらった部分が大きいです。

ーー「6curryに引っ張ってもらった」……。印象的な表現です。お二人のお話から、日頃から社内やユーザーコミュニケーションに明確な方針・ルールがあったからこそ、世の中が変化したときにも「自社らしい動き」をいち早く見出すことができたのではないかと感じました。

遠藤・もり:それはあるかも。

ーーなるほど。次回はそのあたりを深掘りして考えていきたいと思います。

※後編はこちらよりご覧ください

(遠藤さん撮影:原 哲也、もりさんの写真はご本人より提供いただき編集しました)

この記事のライター

青柳 真紗美

青柳 真紗美

ビジネス書の編集者から広報PRパーソンへ。AI系スタートアップや不動産テック企業のPRなどを経て、現在フリーランスで広報・PR支援をしています。メディアリレーションからオウンドメディアの編集まで「コミュニケーションを考える」のが大好物。特にニッチ領域のサービス・プロダクトが好き。「みんなが嬉しい広報・PR」をモットーにその企業の「らしさ」を届け、ファンを増やすお手伝いをしています。

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