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理念に共感する株主を増やすには?オープンなIRコミュニケーションを目指す広報施策|PR TIMESカレッジVol.6~分科会~

ステークホルダーに向けて情報を適切に発信し、関係性を築くという点で切り離すことのできないIRと広報。堅苦しく思われそうなIR情報の発信を、オープンなコミュニケーション施策で企業理念への共感を生む場としているサイボウズ株式会社。「IRを通してサイボウズのことを知ってほしい」と語る広報担当の山見さんに、「らしさ」を伝えるIRコミュニケーションの取り組みを語っていただきました。

5月23日に行われた学びとつながりの広報PRイベント「PR TIMESカレッジ」の分科会でお話いただいた内容をレポートいたします。

サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部 広報

山見知花(Chika Yamami)

2019年1月サイボウズ株式会社入社。コーポレートブランディング部に所属し、メディア対応など広報業務を担当。ほか、IRコミュニケーション施策の一環として、IRイベント企画やコンテンツ制作などを行っている。

サイボウズ株式会社の最新のプレスリリースはこちら:サイボウズ株式会社のプレスリリース

サイボウズのオープンでフラットなIRコミュニケーション

「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念の通り、IRも「株主はチームの一員」という考えのもと、共感者を増やして行く手段としてIRの情報発信を行っています。オープンでフラットなサイボウズのIRコミュニケーションの取り組みと考え方をお話いただきました。

共感を生むための「らしさ」を伝えるIR企画

サイボウズは企業理念を理解して共感していただくために、一般的なIR活動の形にとらわれず「らしさ」を伝えることをモットーにIR企画を実施しています。

クローズドに行われるケースが多い機関投資家面談では、経営理解につながるような良い質問がでたり、実りあるディスカッションになったりすることが多いことから、あえてYouTube上でオープンにLIVEを中継。面談の内容を公開することに懸念の声もありましたが、結果としてサイボウズへの理解が深まったと好意的な反響が多く集まり、ほかの機関投資家の方からの共感も深まったそうです。

決算説明会については、LIVE配信はもちろん、質問にも経営陣がその場で回答する徹底したオープンぶりで、経営陣の言葉でサイボウズのビジネスを説明する機会にしています。

また、IRイベント以外でも「らしさ」を伝えていくために、会社に届いたIRに関する質問とその回答を自社サイトに公開。さらに、コーポレート・ガバナンス報告書の内容を経営者自身の言葉で伝えるために、オウンドメディアの「サイボウズ式」を通して社長の青野さんへのインタビュー形式にして記事化しています。

「チームの一員」と考えるからこそのオープンなコミュニケーション

「らしさ」を伝えるために、直近でも新たな取り組みに挑戦しているそうです。2022年の3月には「株主本部会」というオンラインイベントを開催。参加対象は株主に関わらず誰でもOKで、参加者から「質問」ではなく「助言」をいただくという内容です。サイボウズに興味のある方、理念に共感する方をチームの一員と捉えて、経営陣と参加者がフラットに議論する場を設けることによって、オープンで良い会話が生まれているとのこと。

これら従来のIRコミュニケーションには無いさまざまな取組みを展開する軸には、「らしさ」を伝えて株主の共感を得るという、サイボウズとしてのIRに対する考えがしっかりと根付いていることがわかります。

サイボウズが現在のIR活動に辿り着くまでの3つのフェーズ

サイボウズ株式会社01

共感を生む独自のIRコミュニケーションを続けるサイボウズですが、実は上場より長らくの間はこういった考えや活動はまったくしていなかったそうです。どのようにこういった考え方がうまれ活動をするようになったのか、ここからはその変遷についてご紹介します。

フェーズ1.副社長の一言で変わった「塩対応」のIR

2000年に上場をはたしたサイボウズは、実はその後2018年まで、シンプルで最低限のIR活動しか行っていませんでした。当時は社内の単純なリソース不足もあり、短期的な株価は気にせず、事業が成長することで長期的に緩やかに株価が上がることで、株主の幸せにもつながるという考え方だったとのこと。直近の株価対策は行わず、とにかく事業を成長させるための営業活動やマーケ活動など、目の前のことを優先した活動を中心にしていました。

そのため、必要な情報開示のみで機関投資家への対応にあまり時間をさかず、総会のお土産や株主優待などもほとんど提供していなかったそうです。

山見さんは当時を振り返り、株主に向けた説明やコミュニケーションがなく、いわゆる「塩対応」のIRだったと語ります。そういった対応もあり、市場や株主からサイボウズに対する厳しい言葉や反応がみられるようになっていきました。

しかし、ここから今のIR活動への大きな変化が起こるきっかけとなったのが、「塩対応」のIR活動に対して当時の副社長が言った「つまらない」という一言だったそうです。その言葉をきっかけに、そもそも株主との関係について、そしてサイボウズらしいIRとは何なのか、IRの本質に立ち戻るための議論が社内全体で行われていきます。

フェーズ2.サイボウズの企業理念を伝えるためにIR活動を一新

サイボウズらしいIRを考える中で出た答えが、「サイボウズに投資いただく方にも企業理念に共感していただきたい」という想いだったそうです。これは前述の通り、株主も理念に共感しチームの一員になることで、より大きなチームになるという現在の考え方にもつながります。ここからサイボウズのIR活動は共感を生む情報発信へと変化していきました。

株主総会では、サイボウズのことを面白く理解できるきっかけになるようにと、株主の方でなくても参加できる事前のトークセッションを開催。また、株主総会自体もサイボウズらしく自分の言葉で話して自分の言葉で議論する雰囲気を伝えるために、リハーサル後に急遽ステージレイアウトを変えることもあったそうです。総会後には、株主と本音トークをする「株主のから騒ぎ」というイベント企画も行いました。

そのほかにも、株主とコミュニケーション継続のため、オンラインMeetupや株主kintoneなどコミュニティ形成ができる施策にも取り組んだそうです。

こういった活動を通して、IRとしての正解ではなく、サイボウズらしさを追及することを意識したからこそ、現在のコミュニケーションの形が出来上がっていったのでしょう。

フェーズ3.さらなる広がりと想いの伝達に向けて

昨年2021年からは、株主の方に限定せずサイボウズの情報をよりオープンでフラットに発信していくことで、企業ブランディングへつなげていくという活動へ進化していきます。

社会全体に向けてサイボウズの存在意義や企業理念を理解して共感いただけるように、サイボウズに関する情報を伝えていくことを意識したことで、直近の投資家面談や株主総会のLIVE配信、IRに関する質疑応答の一般公開やコーポレート・ガバナンス報告書内容の独自コンテンツ化へとつながっていったそうです。

これら直近の活動の振り返りとして、株主だけに限定せず、企業理念を伝える場や手段としてとらえ情報発信を行っていることがサイボウズというブランドの広報活動へとつながっていると山見さんは語りました。

サイボウズ株式会社02

質疑応答|サイボウズ株式会社 山見氏

さまざまな変化を経験してきたサイボウズのIR活動。その裏側に関しての質問が寄せられていました。

現在のIR活動をされているメンバーはどのように編成されたのでしょうか?

最初は経理のものがIR中心に活動していたのですが、当時の副社長の話をきっかけに活動の方法を変えて行くことになったときに、さまざまなコンテンツとかイベントもやってみたいけど流石に経理メンバーではノウハウが無いなとなり、そこで広報やマーケティングメンバーも手伝えそうで、しかも方向性も面白そうで共感できるのでやってみようとなったのが今のメンバーですね。

短期間で大きな変化があったと思いますが、苦労されたことはありますか?

決まった成果を出すというプロジェクトではないので、コンセプトに迷いが生じそうになるところが難しかったポイントかなと思います。また、私自身も入社してすぐに「面白そうだ」と思ってこの活動に加わりましたが、IRの知識がまったくなかったので、IRプロジェクトを走らせながらIR知識を少しずつ学んでいくことに苦労しました。

逆に、経理メンバーは広告施策やイベントの立ち上げ方などの経験があまりないので、そこを広報畑の者としてフォローして、お互いの知見を補い合うことでうまくやってこれたのだと思います。

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分科会まとめ|サイボウズ株式会社 山見氏

最後に山見さんは、「株主の方も一緒になってチームワークあふれる社会を実現していく。それ自体がサイボウズにとってのIR活動だと思っております」と改めてまとめ、株主や投資家が企業にとってどういう存在でどうあってほしいのかを考えることの大切さを伝えてくださりました。

堅苦しく思えるIR活動や、身構えてしまう株主の方とのコミュニケーションも、サイボウズのように企業理念に共感し、一緒に理想の社会の実現を目指していく「チームの一員」づくりのための活動ととらえることで、ポジティブで独自の情報発信へとつながっていくのではないでしょうか。

 

自社の株主との理想の関係性を見つめ直し、IR活動を大切な企業としてのコミュニケーションの場として想いを発信していくことで、その企業の「らしさ」が伝わり共感者が増えていくきっかけとなるのかもしれません。

記事内のYouTubeは以下からご覧いただけます▽
サイボウズIRチャンネル – YouTube

PR TIMESカレッジの最新情報は、公式ページをご確認ください。
https://prtimes.jp/college/

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この記事のライター

髙木 健志

髙木 健志

出版社でライフスタイル・タウン系の雑誌とWEBマガジンの企画・営業・編集・ライティングを担当し、メディアやイベントを通した情報発信事業を様々な形で実施。現在は、PR TIMESのお客様により立体的な情報発信やPR活動をしていただくための伴走者として、PRパートナー事業部にてプレスリリースからPRの企画、進行管理のサポートなどを行っています。

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