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「パブリック・リレーションズ」は好き。だけど「PR」という肩書きは使わないーワンキャリア Evangelist 寺口浩大

さまざまな場所でのイベント登壇や、メディア出演、連載記事を受け持つ中でサービスについて発信されている株式会社ワンキャリアの寺口浩大さん。

その肩書は「Evangelist(エバンジェリスト)」。

あまり聞き慣れない肩書を持ちながら、「パブリック・リレーションズに取り組んでいる」という寺口さんに、なぜ「Evangelist」と名乗っているのか、その背景を伺ってきました。

株式会社ワンキャリア  Evangelist

寺口 浩大(Teraguchi Kodai)

1988年兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業。就職活動中にリーマンショックを経験。メガバンクで企業再生やM&A関連の業務に従事したあと、IT広告、組織人事のコンサルティングなどの経験を経てワンキャリアに入社。現在は仕事選びの透明化と採用のDXを推進。「ONE CAREER PLUS」リリース後、キャリアの地図をつくるプロジェクトを推進。専門はパブリック・リレーションズ。

「PR」と名乗るからこそ失うものもあると思った

── まず、寺口さんのご経歴を教えて下さい。 

寺口さん(以下、敬称略):メガバンクで企業再生やM&A関連の業務に従事したあと、IT広告、組織人事のコンサルティングなどの経験を経て、2017年にワンキャリアへ入社しました。ワンキャリアでは、最初は企業人事を相手にした営業活動を1年ほど。当初は主に既存顧客も新規顧客も相手にしていました。ただ、既存顧客を相手にした見積・請求などの事務作業が本当に苦手で。

一方で、人事の方との信頼関係の構築や、課題解決のための企画を考えることは好きだし手応えもありました。それを見た社長が、得意なことだけに集中できるように取り計らってくれたんです。そこからは主に新規顧客営業を担当しながら、パブリック・リレーションズに関連する業務にも関わるようになりました。

その後、「PR Director」という肩書のもと、経営企画部でパブリック・リレーションズ関連の仕事を主軸に活動するようになりました。いまは、「Evangelist」という肩書で、2021年6月にβ版をリリースした新たな転職サイト「ONE CAREER PLUS」での新規プロジェクトにも関わりつつ、引き続き、採用やキャリアについて、パブリック・リレーションズに関わる業務をしています。

── パブリック・リレーションズを生業にしている人たちに多い肩書としては「広報」や「PR」が多いと思うのですが、寺口さんはなぜ「Evangelist」と名乗るようになったのですか?

寺口:パブリック・リレーションズって、コミュニケーションを手段にあらゆるステークホルダーと関係を構築することで、ブランドの価値を高める仕事ですよね。ブランドと社会の合意形成をつくるとも言い換えられると思います。

ただ、この言葉を省略した「PR」という言葉自体が世の中との合意形成がとれていないと思ったんです。「自己PR」はアピールを、SNS等で使われる「#PR」というタグは広告を意味していますよね。パブリック・リレーションズを生業にしている業界の方であれば、その本質的な意味はわかると思うんですけど、それ以外の人にとって「PR」という言葉は人によって解釈が違いすぎて、伝えたいことが伝わりにくい言葉だと思ったんです。

ワンキャリア Evangelist01

僕はもともと、パブリック・リレーションズに関わる仕事をしていなかったので、この概念を知った時、すごく感動したんですよね。だからこそ、その本質を伝えられていないことが悔しいと思いましたし、その言葉を使うことに戸惑いがありました。

もちろん「PR」を名乗る方たちとたくさんの素敵な出会いに恵まれました。ただ一方で、PRを名乗ってはいないけどパブリック・リレーションズに関わっている人たちのところに越境しづらいとも感じました。特にPR担当の悩みで経営との距離が遠く、重要性を理解してもらえないというものはずっとある気がします。「PR」と名乗るからこそ得られることもあれど、名乗るからこそ失うものもあると思ったんです。

── パブリック・リレーションズの本質を伝えるために「PR」という言葉を使わないんですね。ちなみに「Evangelist」という言葉を選んだ理由はあるんですか?

寺口:「PR」に代わる言葉を考える中で、パブリック・リレーションズの本質的な意味を伝えられる言葉を選びたいと思っていました。ブランドの価値が伝わることを目指している、そして、合意形成を目指していることが伝わるニュアンスを含んでいる言葉にしました。

ただ、正直いうと「PR」以外であれば、言葉はなんでもよかったというのが本音です。「Evangelistとは?」と聞かれることも多いですが、定義は僕の中でも日々更新されています。強いていうなら、「ブランドと社会を、主にコミュニケーションリレーションでつなげていく仕事。ただし手段は問わない」という感じでしょうか。職種や肩書きにもブランドがあると思います。まだ日本では名乗っている人が少ないので、僕が言ったり、やったりすることも「Evangelist」という肩書きのブランドに少しでも関わっていると思うと責任は重大だとは思います。ただ、僕や同じ肩書を名乗る人たちがそれぞれのアクションを通じて、これからEnagelistという職種のブランドを作っていけばいいと思いますね。

「Evangelist」と名乗り始めて、PR業界の方々から、自分も「Evangelist」にしようかなという連絡をもらいました。同じ感覚を持っている人たちがいるのは心強いです。

ブランドと社会が握手した瞬間

── 寺口さんが「パブリック・リレーションズ」と出会うことになったきっかけはありますか?

寺口:僕の中で解像度が上がったのは、2018年9月に、P&Gさん、マテリアルさんとご一緒した「#就活をもっと自由に」というキャンペーンです。P&Gのヘアケアブランド「パンテーン」が、就職活動の実態に目を向けた、“1,000人の就職活動のホンネ”から生まれたブランドアクションでした。

── 当時、非常に話題になっていましたが、改めてどんなキャンペーンだったのでしょうか?

寺口:日本における没個性的で画一的な就職活動の中で、現代の就活生が、自分らしく就職活動ができるようにという思いを「#就活をもっと自由に」というハッシュタグに込めてパンテーンが展開したブランドアクションです。

最初は、個人的に応援していたのですが、プロジェクトメンバーの方々の熱い想いを受けて、僕自身も就職活動で学生が本音を言えない構造に課題感を抱えていたので、気づいたら自身もアクションをするようになっていました。P&Gさんの勇気あるチャレンジを社会に伝えたくてSNSやnoteを中心に自分に当時できる発信を行っていました。企画に協力させていただけたことも光栄でした。

このキャンペーンをきっかけに、いろんなところで連動して勇気あるアクションが次々に起きたことにとても感動しました。こうやって、ブランドと社会が握手するんだ、と。

ワンキャリア Evangelist02

── キャンペーンを通して、世の中との関係構築ができることを実感したということですね。

寺口:まさにそうです。それから、パブリック・リレーションズに対する関心も解像度も高まっていき、さまざまなブランドアクションに関わる機会に恵まれました。ワンキャリアでも、2019年3月の「#ES公開中」を皮切りに「#就活の真実」「ONE CAREER SUPER LIVE」「キャリアの地図」などに関わりましたが、やはりブランドと社会がどうすれば手を繋げるかという問いはいつも頭にありました。「人の数だけ、キャリアをつくる。」というコーポレートブランドのミッションをどう体現し社会と接続するかを考えてコミュニケーションをしています。これまでブラックボックスだった仕事選びに関する情報の透明化は、さまざまなアクションのひとつの軸になっています。

パブリック・リレーションズに関わるようになって「これが自分のやりたかったことだな」と思いました。というのは、小学校時代に転校生で最初馴染めずクラスの様子を観察していた時に、教室内に「ルールメーカー」と「ムードメーカー」がいると思ったことがありました。ルールメーカーは先生、ムードメーカーは生徒でした。ムードメーカーが、他の同級生とのコミュニケーションを通して、教室内の空気や方向性を変えていくのがかっこよかったことを鮮明に覚えています

自分が就職活動していた時にも彼を思い出して、彼のようにコミュニケーションで社会のムードをつくれる人になりたいって思っていたんです。就職活動時は、PRという言葉すら知りませんでした。広告代理店にその仕事があると思っていたのですが、残念ながらご縁がありませんでした。ただ、まわりまわって、こうしてコミュニケーションで社会のムードメイキングをできる仕事と出会えたのはすごく嬉しいことですね。

「SAY・DO」の繰り返しがパブリック・リレーションズを実現させる

── パブリック・リレーションズを実践する際に意識していることはありますか?

寺口:そもそもパブリック・リレーションズはブランドを構築していくための手段だと思うので、ブランドというもの自体に対する解像度を上げることを意識しています。具体的にはブランドが「何を言って、何をやるか」という「SAY」と「DO」を繰り返して、「信用」と「信頼」を蓄積していくことを大事にしています。またブランドには強度と濃度の2つの側面があると解釈しています。

ワンキャリア Evangelist資料1
寺口さんの図をもとに、編集部で作成
ワンキャリア Evangelist資料2
寺口さんの図をもとに、編集部で作成

「言って(SAY)、やる(DO)」を繰り返してできる面積が、これまでの約束を守ってきた履歴を表している、つまり「信用」として蓄積される部分だと思うんです。この面積をいかに増やせるか、つまりブランドの強度をつくることが、応援されるブランドづくりに欠かせません。

── 有言実行することでブランドができあがっていく、ということでしょうか?

寺口:はい、最初に「言う(SAY)」がくることがポイントです。ブランドのコミュニケーションには「報告型」と「宣言型」の2つがあります。「報告型」は、何をやるかの宣言(SAY)無しに実績を作ること。多くの企業が実績作りに励むものの、最初のSAYが無いため、その後の「期待」がつきにくいんです。一方、「宣言型」は、その名の通り、言って(SAY)から、やる(DO)ので、「信用」と同時に「信頼」も蓄積され、「期待」のベクトルも得られます。

今の時代、応援や期待の気持ちでお金や時間を投資する人が多いので、「期待」のベクトルの傾きを上向きに伸ばしていくことがすごく大事です。そのため、「何を言って、何をやるか」を意識してブランドを構築し、パブリック・リレーションズを達成させることが、継続して応援される企業になるポイントだと考えています

例えば、先ほど紹介した「#ES公開中」というキャンペーンも、僕らが掲げているミッション(SAY)をブランドのアクションとして実行した(DO)結果、個人や企業から多くの賛同の声やアクションをもらうことができ、さらにはワンキャリアへの就職を希望する方も増えました。SAY・DOすることで、さまざまなステークホルダーに対してパブリック・リレーションズが実践できていると証明した事例ではないかと思います。P&Gの「令和の就活ヘアをもっと自由に」への賛同企業の方からも、賛同がきっかけで採用につながったという声を聞いています。

── SAY・DOを意識することで、採用広報にも良い影響を及ぼすわけですね。

寺口:そうですね。採用の領域が、最もSAY・DOが一致していない領域、パブリック・リレーションズの観点が足りていない領域だと思うんですよ。企業や採用担当者の自画自賛の発信「だけ」になっているケースも多くもったいないと思います。採用候補者や社員との持続的な関係構築を意識していたら、圧迫面接、オワハラ、退職者の裏切り者扱いなどしないと思います。これまでは不透明だからこそ見過ごされてきたんだと思います。今までブラックボックス化されていた採用の領域にパブリック・リレーションズの視点を持って、透明化させていくことが僕らの使命だと思うので、人事の方向けの登壇時には必ずパブリック・リレーションズの重要性を話すようにしていますね。

── ありがとうございます。パブリック・リレーションズにかける想いが伝わってきました。そんな寺口さんの今後の目標はありますか?

寺口:パブリック・リレーションズってすごく面白いと思うんです。ただ、それを「広報・PR」の業界だけで閉じてしまうのはもったいない。PRこそPRが必要だし、いろんな業種の人たちにもっとパブリック・リレーションズの面白さに気づいて入ってきてほしいですね。そのためにも、僕自身が「Evangelist」として越境していって、パブリック・リレーションズの面白さをあらゆる手段を使って伝えていきたいと思います。大好きなPRの業界に恩返ししていきたいんですよね。

ワンキャリア Evangelist03

パブリック・リレーションズは自由演技

改めてパブリック・リレーションズの面白さは何か?との問いかけに、寺口さんは少年のような笑顔で「パブリック・リレーションズって、目的達成のためなら何をやってもいい自由演技種目だと思うんです。この余白がたくさんあるところが好きですね」と答えてくれました。

日々の忙しい業務に向き合う中では「パブリック・リレーションズ」の本質や魅力について考える余地を生み出しにくく、視野が狭くなってしまうかもしれません。

そんな時には、「Evangelist」を名乗る寺口さんのことを思い出して、パブリック・リレーションズの面白さに思いを馳せてみてはどうでしょう。改めてパブリック・リレーションズに向き合う大切さに気づけるのではないでしょうか。

(撮影:原 哲也、取材はリモートで実施しました)

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この記事のライター

林 優

サイバーエージェント新卒入社、Makuake配属。イベント企画・運営を担当するとともに、ガジェット・ファッション・飲食店・日本酒…など、毎月数百件開始するプロジェクトの広報業務を担当していました。 多岐にわたるジャンルのプロジェクトPRを担当する中で積んできた広報業務経験を活かしたコンテンツづくりに取り組んでいます。

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