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ティール組織とは?進化を続ける組織になるまでの5つの発達段階と、実現するまでに必要な3つのこと

近年、注目されている組織構造「ティール組織」。提唱者であるフレデリック・ラルー氏の著書『ティール組織〜マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現〜』は日本でも大きな話題となり、10万部を超えるベストセラーとなっています。

本記事では、ティール組織の意味や「ホラクラシー組織」との違い、ティール組織を導入するためのポイントや注意点を解説。あわせて国内の導入事例や、ティール組織について理解を深めるための書籍についても詳しくご紹介します。

ティール組織とは?

まずは、ティール組織の意味と、しばしば混同される「ホラクラシー組織」との違いについてご紹介します。

ティール組織の意味とは

「ティール組織」とは、経営者層やマネジメント層ではなく、個々のメンバーに意思決定件が委ねられている組織のこと。日本企業では当たり前だった、ヒエラルキーやマネジメント、組織としての目標設定や定例会議などとは無縁の組織形態です。

ティール組織の概念は、2014年にフレデリック・ラルー氏が著書『Reinventing Organizations』で提唱したもので、後に日本語版も発刊され10万部を超えるベストセラーになるなど注目を集めています。

ティール組織とホラクラシー組織の違い

ティール組織としばしば混同される組織形態として2007年に米ソフトウェア開発会社の創業者であるブライアン・J・ロバートソン氏が提唱した「ホラクラシー組織」があります。

ホラクラシー組織は、階級が存在せず、ヒエラルキーのないフラットな組織形態であること。そして、意思決定権がメンバー全員に与えられていることが、ティール組織と共通しています。しかし、ホラクラシー組織には、運営するための厳密なルールが存在する点に違いがあります。

ホラクラシー組織は、ルールに沿って進められる経営手法であり、再現性の高い組織の運営形態です。ビジネスモデルがなく、自由度の高いティール組織とは一線を画したスタイルであるといえるでしょう。

ティール組織になるまでの5つの発達段階

ティール組織を提唱したフレデリック・ラルー氏は、ティール組織に至るまでの組織の進化を、5段階に分けて捉えています。詳しく確認していきましょう。

発達段階

衝動型:レッド組織

初期の段階は、特定のメンバーが支配的にマネジメントをする「レッド組織」です。

ラルー氏の書籍では「オオカミの群れ」と評されているレッド組織は、1万年以上も前からあるともいわれる古い組織構造。力を持ったリーダーの圧力のもとに他のメンバーが従う図式で成り立っています。目の前の短期的な目標を追いかけるため、衝動的な行動を起こすことが多く、再現性が低いともいわれています。

順応型:アンバー組織

レッド組織から一段階発展したものが「アンバー組織」です。「軍隊」とも評され、絶対的な上下関係が存在する組織構造です。

アンバー組織では明確なヒエラルキーの元、メンバーは自身に与えられた役割に基づいて行動します。指揮命令系統がはっきりしているので、人数の多い組織でも、トップダウンで安定した運営が可能です。しかし、周辺環境の変化には弱く、VUCA時代とも言われる現代においては、マッチしない組織構造であるともいわれています。

達成型:オレンジ組織

ヒエラルキーは存在するものの、年功序列ではなく成果主義の組織が「オレンジ組織」です。「成果」を求めて切磋琢磨するため、イノベーションが起こりやすく、時代の変化に対応しやすい組織構造であるといえます。

ただ、成果を追い求めるあまり、徹底したマネジメント下で働くことを強いられるため、「機械」と評されることも。現代の日本企業の多くがオレンジ組織形態であるとされていますが、「成果」のためにがむしゃらに働き続ける必要があり、それが「働き方改革」へ繋がっているという説もあります。

多元型:グリーン組織

ヒエラルキーは残っているものの、メンバーそれぞれの「自分らしさ」を重視し、多様性が認められる組織構造が「グリーン組織」です。これまでの組織形態のように、「成果」ではなく「個人」に目が向けられるようになり、主体性も発揮しやすい環境です。「家族」とも評され、メンバーにとって働きやすい環境であるといえるでしょう。

一方、意思決定権が明確でない分、合意形成に時間がかかり、時には時代の変化に乗り遅れ、チャンスを逃してしまうリスクも含んでいます。

進化型:ティール組織

組織形態の最終段階であるティール組織では、メンバー間に上下関係がなく、全員が平等に扱われます。組織の目的や使命を十分に理解した上で、メンバーそれぞれが自身の役割を認識し、自律的に行動する組織構造で「生命体」とも評されます。

ティール組織では「合意」することが絶対ではないため、グリーン組織のように合意形成に力を注いだり、ミーティングや会議などに多くの時間を割いたりすることがなく、効率的で生産性の高い組織構造であることが評価されています。

ティール組織を実現するために必要な3つのこと

フレデリック・ラルー氏は、ティール組織を実現するために、3つのプロセスが重要だとしています。それは「セルフマネジメント」「進化する目的」「ホールネス」です。ひとつずつ詳細を解説します。

1.セルフマネジメント(自主経営)

ティール組織を実現するひとつめのプロセスが「セルフマネジメント(自主経営)」です。

ティール組織ではヒエラルキーがなく、各メンバーに意思決定権が与えられます。大きな判断が求められる際には、特定の専門性やスキルのある人物に相談するなど「助言プロセス」とよばれるシステムを採用します。ただし、助言は受けるものの、最終的な判断は意思決定者に委ねられています

意思決定権をメンバーに与えることは、経営者とメンバー間の信頼を揺るぎないものにする必要があります。各自が能動的に考え、行動し、理想的な意思決定を行うことができるように、まずはセルフマネジメントができる状態を目指しましょう。

2.進化する目的

これまでの組織では、中期的・長期的な固定化された目標を追いかけていました。しかし、ティール組織ではビジョンは明確に持ちながらも、その目的(企業が存在する目的)は日々変化し続けます。

ティール組織は「生命体」とも評される組織形態です。ティール組織を実現するためには、目的が進化することもあると認識し、組織もメンバーも、柔軟で臨機応変な対応力を身につけておくことが求められます。

3.ホールネス(全体性)

メンバーの持っている力を最大化するためには、組織の心理的安全性に配慮し、それぞれが他者の反応を過度に意識することなく、自由に自然体で発言できるホールネスな環境を整えることが重要となります。

ティール組織は、多様性を尊重する組織形態です。メンバーがありのままの状態で存在し、長所を発揮しやすい環境づくりが求められます。

ティール組織の実現に取り組む前に知っておきたい3つのこと

チームの生産性や効率性を上げるために、ティール組織を目指しているチームも多いのではないでしょうか。「ティール組織になるまでの5つの発達段階」からもわかるように、組織がティール組織になるまでには、段階を追って発達していく必要があります。

「明日から多様性を認めよう」「今日から全員に決済権を渡そう」と突然ティール組織を真似ても、チームとして機能しないのは想像に容易いのではないでしょうか。

では、ティール組織を実現させるポイントはどのようなことがあるのでしょうか。3つのポイントについて紹介します。

知っておきたいこと

1.マネジメントが機能しにくい

ティール組織には管理職が存在せず指揮命令系統がないため、メンバーそれぞれが、今どのような状況にあるのかを把握することが困難。マネジメントが難しいという側面があります。

ただし、マネジメントができないことで経営者が不安になったり疑心暗鬼になったりしてしまうと、「管理型」の組織に戻ってしまう可能性もあります。

ティール組織を実現させるためには、まず経営者とメンバーとの信頼関係の構築に努めましょう。また、メンバー間での日々のコミュニケーションを意識して取る、ITツールなどを駆使してお互いの進捗を確認できる体制を構築するなどの対策も有効です。

2.経営リスクの管理に注意が必要

ティール組織は承認プロセスがなく、いわば全員に決定権が与えられています。そのため、例えばプロジェクトを進めるにあたり、メンバー個人の価値観が判断に大きく影響する場合があります。そこには当然、経営的なリスクも伴ってくるでしょう。

経営のリスク管理としてあらかじめ、メンバー全員が同じ方向性を向き、会社の価値観に沿って判断ができるように、組織の目標、個人の役割について、共通認識を持っておく必要があります。

3.メンバーの自主性を育てる必要がある

ティール組織を実現するにはメンバーの自主性が重要です。つまり、自主性をもち、組織課題を「自分ごと」と捉えて自ら考え、動ける人材、セルフマネジメントできることが最大のポイントです。

例えば、上司からの指示を待って動くタイプの人材や、自主的にアイデアを出すことが苦手な人材が多い組織の場合、ティール組織は成立しにくいといえます。ティール組織を導入する際には、メンバーの自主性を見極め、不足していると感じる場合には、あらかじめ自主性を育てるステップも必要となるでしょう。

ティール組織の成功事例

ティール組織の実現は、メンバーの自主性を育てながら、マネジメントが必要ないように信頼関係や、共通認識を揃える必要があるとわかりました。少しハードルが高いようにも感じてしまいますが、日本企業でもティール組織を実現している組織も増えています。

実際にティール組織を実現している企業例から、自社のティール組織実現の参考になる部分を検討してみてはいかがでしょうか。

成功するイメージ

株式会社オズビジョン

フレデリック・ラルー氏の著書『ティール組織〜マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現〜』に唯一日本企業として登場しているのが、ポイントモール「ハピタス」を運営する株式会社オズビジョンです。同社は、組織としての「ホールネス(全体性)」を取り戻すために、著書内で紹介されている「物語ること(ストーリーテリング)」を活用している事例として掲載されました。

同社には、当時2つの制度がありました。ひとつは「Thanks Day」。希望するメンバーに対し、周囲の人に感謝するための特別休暇と2万円を支給するというもの。利用した人は、ブログで誰にどのような感謝を贈ったのか、その詳細を綴るというものです。

もう一つは、「Good or New」。これは、毎朝、仕事上で接点の少ないメンバー5〜6名で会話をするというもの。会話の内容は、メンバーのよいところ(Good)と、24時間以内に起きた出来事(News)です。

この2つの制度は数年で廃止となりました。「Thanks Day」は利用者が減り形骸化してしまったこと、「Good or New」はだんだん「話さなければならない」という義務感が出てきてしまったことが原因でした。

制度としては廃止となりましたが、狙い通り色々な社員同士での会話が増えたとのこと。施策には「効果」と「副作用」があるため、まずは、やってみる。そして役割を終えたら止めるという選択をするのもティール組織の理想の姿といえるかもしれません。

参考:組織は変化し成長する。『ティール組織』に登場したオズビジョンの当時と今/YAHOO!ニュース

GCストーリー株式会社

東京都に本社を構え、屋外広告の施工業などを営むGCストーリー株式会社。以前はヒエラルキー型の組織形態でしたが、そのマネジメント手法に合わない社員がストレスを抱えることも増えてきました。「全従業員の幸福」を企業理念に置く同社では、このままでは理念が実現できないと、1年間のお試し期間を経て、現在はティール型のフラットな組織に変化しています。

同社では、ティール組織に移行する過程で大きな壁に遭遇しました。それは、「コミュニケーション」。フラットな組織において、相談する相手がわからない、連帯感が得られないという声が多く挙がるようになります。

そこで、社内アンケートを取り、現場で何が起こっているのか、具体的な課題を抽出。結果をもとにPDCAを回すことで、課題をひとつずつ解決に導きました。

現在では、事業計画もトップダウンではなくメンバー全員で作り上げています。そうすることで、当事者意識が生まれ、自律的なティール組織の実現に成功しています。

参考:「ヒエラルキー」からフラットな「ティール」組織へ。GCストーリーが取り組んだ組織改革

ティール組織について学べるおすすめの本3選

最後に、ティール組織について学べる書籍をご紹介します。

1.ティール組織〜マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現〜/フレデリック・ラルー

ティール組織〜マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現〜』は、日本でティール組織が知られるきっかけとなった書籍です。世界17カ国で翻訳され、日本でも10万部を超えるベストセラーとなりました。

フレデリック・ラルー氏が膨大な調査から導いた、新しい時代の組織論。組織モデルの発達段階から、組織事例まで幅広く紹介されています。まずは、ティール組織の基本を知りたいという方におすすめの一冊です。

2.イラスト解説 ティール組織〜新しい働き方のスタイル〜/フレデリック・ラルー

ティール組織――新しい働き方のスタイル』は、ティール組織をイラストで解説した書籍です。組織理論の入門編として、また「ティール組織〜マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現〜」の副読本として、ティール組織についての理解を深めるために活用できる一冊です。

3.実務でつかむ!ティール組織/吉原史郎

実務でつかむ! ティール組織』は、日本初Holacracy(ホラクラシー)認定ファシリテーターである吉原史郎氏の著書。ティール組織やホラクラシー組織の概要、組織モデルの実務的な解説、組織の土台づくり、日本企業における次世代型組織の土台作りに繋がる取り組みまで、幅広く紹介されています。

ティール組織の基礎だけでなく、実務に活かす方法を知りたい方におすすめの一冊です。

メンバーが自律的に行動する「ティール組織」で、変化の激しい時代に対峙

ITの普及やコロナ禍もあり、時代の変化は年々激しくなっています。その変化に乗り遅れないためには、組織のメンバー一人ひとりが自律的に考え、行動することが必要不可欠。それを実現する「ティール組織」は、時代に即した優れた組織形態であると言えるでしょう。

ただし、ティール組織の形態は決まった「型」がある訳ではなく、個々の組織にマッチした形に、柔軟に育てていくことが重要です。また、日本企業に多いマネジメント型組織の場合、導入するまでには多くの障壁があるでしょう。

本記事でご紹介したようなポイントをおさえ、注意点に配慮しながら、自社にあったティール組織を実現する方法を見つけて実践してみてはいかがでしょうか。

ティール組織に関するQ&A

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