今年8月に創業75年を迎える株式会社東海理化は、愛知県に本社を構え、スイッチやシフトレバー、キーロック、シートベルトなどの製造を手掛ける国内で有数の自動車部品メーカー。国内に10拠点を加え、北米やアジアなど世界各地に連結子会社や関連会社を展開するグローバル企業です。
東海理化は、2021年に新規事業を手掛けるニュービジネスマーケティング部を新設し、翌年にその開発部門と営業部門が一体になったニュービジネスセンターを名古屋駅エリアに移転。新規事業であるクラウドビジネスの開発・営業拠点として事業拡大を進めています。
なぜ今、新規事業に挑戦しようと思ったのか。その背景や、新規事業の成長を後押しする広報PR活動について、ニュービジネスマーケティング部で広報を務める狩谷昇吾さんにお話を伺いました。
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株式会社東海理化 ニュービジネスマーケティング部 マーケティング室 広報
大学卒業後、名古屋の電気機器メーカーに就職。情報システム部や広報室、営業企画部など複数の部署で幅広い経験を積む。広報室ではコーポレート広報とリクルート広報に注力し、SDGsのイベントでは地元の全紙全局の取材を獲得した実績を持つ。2022年9月に東海理化にジョイン。現在はニュービジネスマーケティング部に所属し、一人広報として全国各地を飛び回り、新規事業の認知拡大をめざしている。
安定した経営基盤に甘んじることなく新規事業に挑戦
──まず、東海理化について教えてください。
東海理化は1948年創業で、トヨタ自動車株式会社のグループ企業のひとつとして、車のスイッチやキーロックをはじめとする自動車部品の製造を行っています。従業員数は、国内だけでなく北米やアジアを中心とした世界各地に展開する連結子会社や関連会社を含めると、2万人ほど。売り上げ規模もおよそ5,000億円と、愛知県ではそれなりに知名度のある会社だと思います。
──創業70年を超える歴史を持つ東海理化が、新規事業を立ち上げることになったのはどのような背景があったのでしょうか。
私たちの会社は自動車の部品メーカーなので、一般的には安定した会社の部類に入ると思います。しかし、現在の社長に変わった際に、会社の将来を考えて「崖っぷち宣言」を出しました。それをきっかけに従業員が会社の未来を考え、新しいことをチャレンジできる文化が芽生えたと思います。
現在の新規事業のアイデアというのも、トップダウン方式ではなくてボトムアップで従業員から出た意見が形になっています。新規事業のアイデアを社内で公募し、1,900件を超える応募がありました。そこからテーマを選定し、実際に活動しています。
──広報担当として既存事業と新規事業とで違いを感じることはありますか?
新規事業は既存事業と比べてPDCAがとても早いという点で違いを実感しています。東海理化という会社はもともと社風もどちらかというと落ち着いていてゆったりとしたイメージですが、新規事業に関しては、とにかくスピード感があります。開発部門と営業部門がワンフロアに集約されているので、何かあったときにもすぐに連携が取れるんです。このPDCAを早く回せるという点が、私たちニュービジネスセンターの大きな特徴でもあると思います。
また、既存事業はマーケティングの部署がそもそもなくて、新規顧客を自ら飛び込みでつかみにいく部署もありません。それが新規事業に関しては、自動車業界以外のお客様もいらっしゃいますので、セールスチームや開発とも連携を取ってマーケティングをしっかり考えていく必要があります。そこもまた既存事業との違いを感じる部分のひとつですね。

新規事業の無限の可能性を伝える広報PR
──広報PRの体制を教えてください。
もともと本社に総務部広報室があり、そちらは10人ほどの部署です。ただし、大手自動車メーカーさんから仕事をもらってクオリティを担保するという既存事業の従来のスタンスでは、新規事業のマーケティングや広報PRをやっていくには異なる部分もあって、新規事業専任の広報PR担当を設置しました。現在は、ニュービジネスマーケティング部に広報PRを置いて、私がひとり広報として本社に協力してもらい新規事業の広報PRを担当しています。
新規事業の広報PRとしては、「世の中の流れを変える、行動変容を促す」というのが一番大きな目標としてあり、そのためにやるべきことを一つひとつクリアしたうえで、最終的にはやはり「売り上げにつながる広報」というのが大切な役割になってくると思います。現時点では、広報PR的なパブリシティを獲得し、皆様に新規事業を知っていただくためにプレスリリースなどで情報を発信するという部分をメインで動いている段階です。
──新規事業の広報PRとして現在掲げているミッションと、それを達成するための取り組みについて教えてください。
社用車管理DXサービス「Bqey(ビーキー)」やレンタカーマッチングアプリ「Uqey(ユーキー)」という新しい事業の認知拡大と、売り上げにつなげるための広報PRというのがミッションだと思っています。
そのための主な取り組みとして現在特に注力しているのが、メディアとのリレーション構築とプレスリリースの配信です。普段、新規開拓のためにメディア回りをするときに、「自動車部品メーカーが本気でアプリを開発していますよ」と伝えても、知名度がないために東京や大阪ではまったく相手にされないことが多いんです。そこを払拭するためにも、まずはプレスリリースを積極的に配信し、パブリシティを積み重ねることで世間の方々にも広く知っていただく。それと同時に、メディアとも直接コミュニケーションをとっていくということが大切な役割のひとつだと思っています。

──狩谷さんがプレスリリースを配信する際に工夫されていることもお聞きしたいです。
まず世間の動きを常に追うように心がけていて、トレンドのキーワードは意識して使っています。外からの情報だけでなく、社内の情報が世間の方にとって面白いこともあるので、それらもうまく組み込んでひとつのコンテンツに仕上げるのもポイントです。
また、届ける相手によって伝え方を変えるというのも工夫していることのひとつだと思います。例えば、Bqey(ビーキー)は完全にBtoBの商材なので、プレスリリースの読み手はビジネスマンの中でも管理部門の方というとてもニッチな領域です。そこに向けて情報を発信する際には、その方々が読んでいそうな媒体は常にチェックして、トレンドやキーワード、法律的な部分などもしっかりプレスリリースに落とし込むように心がけています。
これに対し、私たちにとって初めてのBtoC商材であるUqey(ユーキー)は、Bqeyとは完全にターゲットが異なります。一般ユーザーと事業者の両方が対象となるので、双方の市場をしっかりとチェックしつつ、プレスリリースを配信する際にもどちらに向けて発信するのかを明確に決めて、ある程度片方に振った内容でプレスリリースを作成するのがポイントです。
届ける相手によって伝え方を変えるプレスリリース
ここからは、東海理化がこれまでに配信した実際のプレスリリースをピックアップ。届ける相手によって工夫された点を、プレスリリースの内容とともに狩谷さんに解説していただきます。
事例1.プレス発表会につなぐBtoB向けプレスリリース

こちら「Bqey」の新機能を紹介するものでBtoB向けのプレスリリースです。社用車管理の課題を解決する商材ということで、社用車を所有する企業の安全運転管理者の方々が常に注目している情報を盛り込むことを意識しました。
こだわったポイントとしては、トップビジュアル(アイキャッチ)をあえて入れなかったこと。プレスリリースでは全容を明かさずに、記者発表の会場で実際のデモ車を披露することで開発力をアピールすることと、パブリシティを得ようというのが狙いです。もちろん、機能などの詳細については表をつかってしっかりと伝えつつ、ワクワクした期待感も残したいと思いました。実際に発表会に参加してくださった記者さんからは、「本当にエンジンがかからないんだね!」という声も挙がり、Bqeyの機能を肌で感じていただけたのではないでしょうか。
事例2. SNSに連動したBtoC向けプレスリリース

参考:東海理化、レンタカーマッチングアプリ「Uqey」のTwitter開設
このプレスリリースは、UqeyのTwitter(現 X)開設を記念したキャンペーンの実施を伝えるものです。Uqeyのマーケティングチームからこのような施策をしたいというリクエストがあり、広報PR担当として連携しながら一番効果的に拡散できそうな内容にしました。
SNSによるキャンペーンは、今まで会社としてもやったことがなく知識がゼロだったので、これは私たちにとっても新しいチャレンジだったなと思います。結果的に、初日からTwitterのフォローとリツイートをたくさんいただくことができて、担当者も驚いていました。
普段、プレスリリースを作成するときには、伝えたい相手にしっかりと届けることを大切にしているので、そういう意味でもこのプレスリリースは成功だったと思います。
事例3.パブリシティ獲得を狙うBtoC向けプレスリリース

参考:自動車部品メーカーの東海理化からより幸福なゲーム体験を提供する新ゲーミングギアブランド『ZENAIM』誕生
このプレスリリースは、東海理化が得意とする人間工学の知見を生かして作られたeスポーツのゲーミングギアブランド「ZENAIM(ゼンエイム)」の誕生を伝えるものです。完全にBtoCで、なおかつゲーミング界隈の方に向けた商材ということで、書き方だけでなくタグの使い方なども改めて勉強して書きました。
ZENAIMについては、情報を少しずつ小出しにしていき、イベント会場で大きく発表したいと考えていたので、メディアとも綿密に連携しようという作戦がありました。「ZENAIMとは何か」からはじまり、「ZETA DIVISION」さんというゲーミング界隈で有名なeスポーツチームの監修を受けることで、信頼されているサービスであることをもしっかりPRしています。最終的にはイベントの集客につなげることが目的だったので、イベントのMCも集客力のある方など、ターゲットに対して影響のありそうな方々を考えてセッティングしました。
開発秘話などのストーリーも載せて、今までの東海理化ではやったことがない種類のプレスリリースになったと思います。
新規事業への理解を得るために社内広報にも注力
──狩谷さんは社内広報にも力を入れていると伺いましたが、その理由はなぜですか?
私たちが新規事業をできるのも、既存事業をしっかりやってくださっている方々がいるおかげです。その方々から新規事業に対する理解を得たいという思いがあって、社内広報にも注力しています。
具体的な取り組みとしては、本社の広報室が社内報を担当しているので、新規事業の取り組みやイベントの案内のほか、世間では今どのようなことが注目されているのかなどの情報を発信したり、新規事業に関するコンテンツを一緒に作ったりということです。広報室と常に連携を取り、トレンドを確認して面白いネタも入れながら、社内のみなさんに情報を届けています。
──取り組みに対する社内の反応はいかがですか?
昨年、地元のテレビ局から新規事業のセミナーの登壇依頼を受けたことがあって、私の上司が登壇しました。それは、もちろん愛知の製造業へのPRになったと思うんですが、それよりも社内へのPRになったことが個人的には何より良かったと思っています。同じ会社で働く仲間が、どういう思いで新規事業をやっているのか、こういうものが世の中に必要なんだということを、セミナーでしっかりお伝えし、本社広報室とも連携して社内イントラにも上げてもらうことができました。私たちの新規事業に対する思いを、社内のみなさんに共有できたのは、とても有効だったと思います。
地道な取り組みでメディアとのリレーション構築を実現
──狩谷さんが考える広報PRと広告の違い
広報PRというのは、顧客のゾーンや業種などに縛られず、いろいろな方々に広く情報を伝える活動だと思います。一方、広告というのはある程度ニッチで、縛りがあって、メイン顧客をターゲットにした活動ではないでしょうか。そういう意味では、広報PRは幅広い対象にさまざまな情報を平等に、しかもファクトに基づいて伝えることがもっとも重要です。プレスリリースを作成するときにも、できるだけ抽象的な表現を使わないようにするなども意識して、事実をしっかり発信し、それをメディアに拡散してもらい、コミュニケーションを取るためのひとつの武器にするのが広報PR活動だと思います。
個人的には、最近はWebでもいろいろな広告が出てくるので、広告だけではお客様との信頼関係が作りにくいものだと感じています。もちろん、広告も必要なものではありますが、私にとってはそれよりも広報PR活動に注力して、信頼感のあるメディアを活用して情報を伝えていく方が理想的です。そのうえで、いろいろな方々とリレーションを構築しなくてはいけないのかなと思います。
──広報PR担当として、狩谷さんの今後の目標をお聞かせください。
東海理化という会社は、愛知県ではそれなりの知名度がありますが、地元を離れると本当に無名です。例えば、キー局の方に取材をお願いしても、「東海理化ってなに?」というレベルで、そのような会社が新規事業をやっていますとPRしても怪しいと思われてしまいます。そこを少しずつ克服していくためには、今後もプレスリリースを積極的に配信し、まずは地元でのパブリシティの実績をしっかりと積み上げ、地元メディアとのリレーションを構築することが重要です。今は徐々に地元メディアとのつながりができつつあって、ほかのキー局からの出演依頼を受けるようになってきていますが、東京や大阪、福岡のキー局から呼ばれてもすぐに出ていけるようにと思っています。
──最後に、狩谷さんと同じように新規事業の広報PRを担当する方へ、アドバイスをお願いします。
広報PR活動というのは地道な活動ですが、取り組んだ分だけ結果として返ってくるものです。製造業で新規事業をはじめた企業の中には、どのようにして広報PRに取り組めばよいのかわからない、メディアとのリレーションがなく情報の拡散がうまくいかないなどの課題を抱えている担当者の方もいらっしゃると思いますが、めげずに辛抱強く継続していくことが大切なのではないでしょうか。
私自身も、今はとにかく行動量を増やすことを意識していますが、確実に拡散力がある媒体やさまざまな仕組みを活用しながら、ターゲットにしっかりと情報を届けていくという地道な活動を今後も頑張っていきたいと思っています。

リレーション構築と社内への発信を大切に
国内で有数の老舗自動車部品メーカーという現状に甘んじることなく、新規事業で存在感を増す東海理化。その背景にある広報PR活動で大切にされているポイントは下記の通りです。
- 新規事業の認知拡大のために、まずはメディアリレーションズに注力
- プレスリリース配信は社内からの情報提供も積極的に活用
- 新規事業の理解を得るために社内広報にも注力
- プレスリリースは届ける相手によって伝え方を工夫
新規事業の広報PR担当者として日々奮闘する狩谷さん。既存事業へのリスペクトと社内外とのコミュニケーションを大切にしながら、生き生きと広報PR活動に取り組んでいる様子が印象的でした。新たな挑戦を続ける東海理化の広報PR活動に今後も注目です。
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