【イベントレポート】未来教育会議、社会・企業に関する『2030年4つの未来シナリオ』を発表 

-マルチステークホルダーと共に「変容型シナリオ・プラニング手法」で導出、活動報告会を実施

 博報堂ブランドデザインbemo!チームが企画・運営を務める未来教育会議(※)は、“2030年の未来の社会・企業の姿”を描き出す「21世紀未来企業プロジェクト」の活動報告会を6月12日(日)、東京大学駒場キャンパスにて開催した。

※未来の社会、未来の人、未来の教育のあり方をマルチステークホルダーで共に考え、創造していくためのプロジェクト。2014年2月に発足。実行委員会は下記の通り。
・代表:熊平美香/一般財団法人クマヒラセキュリティ財団
・株式会社教育と探求社
・Ideal Leaders株式会社
・慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究所ソーシャルデザインセンター
・株式会社博報堂 博報堂ブランドデザインbemo!チーム(事務局)
2015年10月〜2016年2月を活動期間とした本プロジェクトのテーマは、“不確実な未来への準備として2030年の社会・企業・人のあり方を考える”。2030年にはどのような社会が訪れるのか、そこで賞賛され、生き残る企業とはどのような企業か、そして未来企業のもつべき価値観とは何かをマルチステークホルダーで共に考え、導き出そうというものだ。
当日は、企業関係者や教育関係者、NPO/NGO関係者、行政や団体関係者、学生など、多様な約70人が参加。本プロジェクトの成果として導出した『2030年の社会・企業の4つの未来シナリオ』を共有したのち、参加者自身が未来像について考え、語り合う機会が設けられた。

2030年の社会、企業、人のあり方に関する4つの異なる世界

シナリオを導き出す上で、立脚したのは「未来に影響を及ぼす根本要因は何か」ということ。テクノロジー、サステナビリティなど世界を動かしうる6領域の膨大なトピックスから、“ほぼ確実に起こること(※)”と“起こるかどうかは不確実だが起きた場合にインパクトが大きいこと”を抽出。その中で、不確実かつインパクトが大きい二つの要因として、<企業経営のものさしの変化>と<働き方の変化>に着目した。この二つの変化の組み合わせ方によって2030年に起こりうる4つの世界のシナリオを描き出した。

※日本の人口減少、グローバル化、資源危機リスク、自然災害リスク、AIやロボットなどテクノロジーの進化等
 

 

ここから、4つのシナリオを具体的に紹介する。


【2030年シナリオ① 三すくみシナリオ ~失われた半世紀~】

-閉じる政府、利益を求める企業、画一的な市民


■高齢化社会と「20世紀型労働」神話の維持
安定的な雇用へのニーズは根強く、転職や起業を積極的に志向する人は少なく、ジョブ型雇用や兼業(副職)、リモートワークやワークシェアリングといった自由な働き方を求める声は小さい。

■「五輪ロス」と日本企業の構造的弱体化
企業においては、株主と短期的収益を重視するものさしが中心的に機能。短期視点での経営に偏っていた企業は「五輪ロス」により経営難に陥っている。一方で、 解雇規制が厳しく、リストラも限界。社員平均年齢は高くなるばかりだ。

■イノベーション後進国・日本の「失われた半世紀」
働き方の自由・多様性・テクノロジーなど土壌づくりの面で立ち遅れた日本は、 イノベーション後進国に転落している。

■「三すくみ」の社会
一方、政府は、年金支払い費用・医療費で毎年巨額の財政赤字。政府・企業・市民の各セクターがビジョンを共有しないまま、自己の行動を最適化しようとした結果、「三すくみ」 状態によって構造改革が阻害されている。

 
【2030年シナリオ② 個の台頭シナリオ ~大格差の発生とニッチの台頭〜】

-負担が増加する政府、利益を求める企業、格差が広がる市民


■テクノロジーによる「働き方のシフト」と「消える職業」
個人が時代の変化をリードする社会。「テクノロジーの発達」が個人の働き方をエンパワーメントし、働き方の多様化が拡がる。常にライフスタイルを更新しようという志向があるミレニアル世代の影響力も大きくなっている 。一方で、ロボット技術やAI技術で代替され消える職業も。

■オープンで柔軟な雇用制度・人事制度
企業も、女性、シニア、中途採用、ジョブ型雇用等多様性ある人材を活用。また、解雇の規制も緩和され、成長分野への柔軟な人材配置が進む。

■“近視眼的”経営と個人起点イノベーション
企業の長期視点やサステナビリティへの志向は薄く、短期的収益・株主志向。イノベーションを生み出すのはテクノロジーを駆使した個人である。

■“電気羊が人間を喰い殺す” 大格差の時代
「就労格差」が増大し、個人の力の差がより顕著に表れる弱肉強食の時代。また、財政負担は増大、格差の拡大と社会保障制度危機が時代の一大テーマとなっている。


【2030年シナリオ③ 企業の目覚めシナリオ ~超国家CSV企業主導の社会〜】

-黒子の政府、利益と持続可能性の両立を求める企業、従属する市民


■世界食料危機の勃発
食料価格が暴騰し、大規模な自然災害が発生。サステナビリティを求める消費者の声が国際世論として拡がる。

■経営の最大課題は「持続可能性」に
資源調達危機・事業継続危機が眼前となり、自然資本や多様なステークホルダーに配慮しながら営利活動を行う企業のみが受け入れられるように。「社会的価値」が重視され、長期的視野で研究開発や新分野・新市場の開拓に取り組む企業も増加。

■現代の黒船…「超国家CSV企業」
国家の枠組みを超え活動し、影響を及ぼす巨大なグローバル企業が登場。一方資源調達危機・事業継続危機を乗り越えられず破綻する企業も増加し、M&Aも活発に。

■新しいゲームのルール…国際デファクトの確立と展開
超国家企業および国際機関が、調達や会計に関する新たなルールを確立、日本に強硬に主張してくる。

■次世代型リーダーの台頭と“笛吹けど踊らず”の苦悩
新しい企業の経営のあり方へ舵を切る次世代型リーダーが登場する中、労働市場の流動性は低いまま、弾力性のない人材市場、慣行にひたる企業風土や個人資質が浮き彫りに。 リーダーだけが掛け声をかけても組織は動かずの状況。

【2030年シナリオ④ クワトロ・ヘリックス・シナリオ ~4セクターの相乗効果で、21世紀型社会へ~】

-政府・企業・市民に加え、アカデミアの役割が増大、4つのセクターが協働する社会


■変化の季節…セクター共創ムーブメントと「危機の2020年代」
「五輪ロス」で大量の失業者が生まれ、大規模な反格差運動が起きる中、アカデミアからの発起により、政府と経営者団体、市民代表の間で対話の場と合意が実現。以降 「フレキシキュリティ(※)」モデルの労働市場政策が敷かれるように。 また、2016年の18歳選挙法の施行を契機に市民の政治参加意識が向上した。

■「クワトロ・ヘリックス」型社会
企業セクター、政府セクター、アカデミアセクター、市民セクターという4セクターがひとつの未来ビジョンを共有し、民主主義的な合意形成をはかりながらイノベーションを生み出している。

■イノベーションとサステナビリティを両立する21世紀型企業
企業は、時間的、場所的、組織的制約を超えて多様なプレーヤーと協働しており、長期的な事業継続可能性とマルチステークホルダーの包摂がミッションに。労働関連法制も変化し、多様な働き方が実現している。

■ふたたび、日出づる国へ
一方、大量の“埋もれる中間層”が発生することは避けられない、「自己責任」の時代でもある。しかし、人口減少の時代に「ミドルパワーをいかに効率的に、イノベーティブに発揮するか」という発想の転換が起きている。

 
※フレキシビリティ(柔軟性)とセキュリティ(安全性)を組み合わせたことば。雇用の柔軟性を保ちながら、失業保障によって労働者の生活安定をはかり、かつ就労に向けた再教育を行う雇用施策。デンマークで導入され、効果が得られているとされる。

 なお、これらのシナリオは、いずれにもチャンスとリスクがあり、“必ずこうなる”という「未来予測の正しい答え」を示すものではなく「未来をどう創っていくかの問い」ととらえている。
 

各シナリオに聞き入る参加者


 

未来シナリオを味わい、各々のビジョンを語る

 
シナリオ共有が終わると、各参加者が、自分事としてそれらの問いに向き合う時間となった。まず、各シナリオの中で生きる自分を想像した上で、おのおのが「一番興味のあるシナリオ」を選出。〈そのシナリオの世界に生きるとき、あなたは何を感じ、何をしますか?〉という問いに同シナリオを選んだ4〜5人が1グループとなり語り合う。その後は、メンバーを変えてグループを組み直し、〈それぞれのシナリオが全て起こりうる今、私たちは何をしますか?〉という問いについて向き合うというものである。いずれのグループでも白熱したディスカッションが行われた。
 

ディスカッション風景


 対話を通じた気づきはおのおの付箋に記入。またたく間に模造紙は気づきで埋め尽くされていった。
 

付箋で埋まる模造紙




これらのシナリオが起こりうる今、教育のあり方とは?

 最後に、社会・企業のあり方と表裏一体である“教育”のあり方について、再びダイアログの時間が設けられた。これらの未来シナリオが起こりうる今、教育はどうあるべきかについて、おのおのの願いを共有する時間だ。
 

ディスカッション風景



その後、プロジェクト代表の熊平美香氏よりご挨拶があり、本報告会はお開きとなった。

 

参加者からは、「ディスカッションの中で、社会の変革の原点は教育だと改めて気付いたが、現状と理想はかけ離れている。教育単体ではなく何かとかけあわせて良きものをつくっていくことを考えていきたい。今後の活動に活かせる場となった。(教育関係者)」「自分自身が未来に危機感を持っていたため、セッション参加者と共有できたことが非常に嬉しい。(教育関係者)」「不確実性を楽しめるような強さや柔軟性を身につけた大人や子供を育成していくことが大切なのではと思った。(企業関係者)」といった声が聞かれた。

プロジェクトメンバーである博報堂ブランドデザインの原は、「一人一人の “変えたい”“動きたい”というパワーを感じ、自分たちも勇気づけられた。参加者にとっても、今回の報告会が変化のきっかけになればと思う。」とコメント。また、「異なるバックグラウンドを持つ多様な人たちが集まって一つのテーマで議論をするつながりの機会を今後も作っていきたい。」と語った。

 これらのシナリオをベースに、2016年度は、起こりうる未来に対し持続可能な組織・人材開発の具体的なアクションプランを導きだす「複雑系時代における経営と創造プロジェクト」を発足する。本プロジェクトを通じ、引き続き博報堂ブランドデザインbemo!チームは、ゆたかな未来を創造する活動を展開していく。


○未来教育会議 WEBサイト
http://miraikk.jp/
○博報堂ブランドデザイン bemo!チーム
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/579
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