切って、貼って、測るだけ。簡便・多目的のフレキシブル・ウェアラブル化学センサーをLucasLandが開発・販売開始

迅速、高感度、簡便な化学センサーを提供する株式会社LucasLand（本社：東京都千代田区、代表：古屋 哲郎）は、東京大学と提携して開発した簡便・多目的フレキシブル・ウェアラブル化学センサー【LL-SN-01: 銀ナノメッシュSERSシート (大)】と【LL-SN-02: 銀ナノメッシュSERSシート (小)】を2023年12月25日に販売開始します。銀ナノメッシュSERSシートは、表面増強ラマン分光法（SERS）と呼ばれる技術を応用した、３次元ナノ構造の超薄型センサーです。伸び縮み自在で丈夫なため、どこにでも貼り付けてその場で簡便に超高感度な化学測定を行うことができます。
URL：http://www.lucasland.jp/jp.html

はさみで切って貼り付けるだけ。手軽で高度な化学測定

　普通「化学測定」と言うと、専門知識を持った人が長い時間をかけて行うもの、というイメージがあります。実際、多くの研究現場や産業分野で行われる化学測定は、時間と専門知識を要するものです。
　しかし本センサーでは表面増強ラマン分光法（SERS）と呼ばれる技術を応用して、極めて簡単でかつ詳細な化学測定を可能にします。ハサミでセンサーを好きなサイズに切り、分析したい物質に貼り付けてレーザーを当てるだけ。センサーの裏側には糊が塗られているため、様々なものに貼り付きます。片面しかSERS機能が無い従来のSERSセンサーと異なり、超薄型の本製品は両面がセンサー機能を果たすため、測りたい物質の上に貼り付ければそのまま測定が可能。発生したシグナルをもとにして、物質に含まれる化学種をたった５秒ほどで検出します。

伸び縮み自在で丈夫。様々な場面に応用可能

　実際に現場でセンサーを使うとなると、柔軟さと壊れにくさの両方が重要になりますが、本センサーは、1000回におよぶ柔軟性テスト後でも、テスト前となんら変わらぬ検出能力を保っていました。また、室内でそのまま放置しても経年劣化しにくいという利点を持っています。1ヶ月経っても性能は変わりません。
　丈夫で柔軟な構造を持つ本商品は、ヒトの肌やキーボード、衣服といった動きやすい部位にも貼り付けでき、簡便なフレキシブル・ウェアラブル化学センサーとして高い汎用性を秘めています。毎日の健康管理やスポーツ科学のために、涙や尿などに含まれる微量の代謝物質を検出することも可能です。また、本商品はフレキシブル・ウェアラブル化学センサーとしてだけではなく、犯罪捜査にも応用可能です。ボタン、手すり、スマートフォンといった人が良く触る場所に貼り付けておいて、麻薬などの検出もできます。さらに、ミカンやリンゴなどの食品に貼り付けてSERS測定を行い、残留農薬を検出する食品安全検査を行うことも可能です。SERSはサンプルを破壊しないので、測定によって食品が損なわれることもありません。
　これまでは、その高価さと加工の困難さによって、実用化が難しいとされてきたSERSセンサーですが、低コストで丈夫な本商品の登場によって、より広い産業界に普及していくことが大いに期待されています。残留農薬検査、マイクロプラスチック検出、感染症センシング、有害物質の検出など、幅広い用途に使えます。

表面増強ラマン分光法（SERS）を用いた、安価で実用的なセンサー
　本センサーを使えば、分析したい物質に貼り付けてレーザーを当てるだけで、そこに含まれる化学種を検出することができます。別売りの小型レーザー付き検出器【LL-PR-01: 超小型ラマン分光器】【LL-PR-02: ベルト装着型ラマン分光器】を併せて使用することで、スマートフォンを通して誰もが簡単にその場で、超高感度な化学測定が可能になります。しかも様々な波長のレーザーが使えるので、既にお持ちの分光器と組み合わせることもできます。
　このセンサーには表面増強ラマン分光法（SERS）と呼ばれる技術が応用されています。従来のSERSセンサーは、ナノ加工を施した金や銀を使うため高価なものとなっていましたが、LucasLandはナノファイバー状にした糊の上に銀を定着させることで、最大限までコストを抑え、その上で感度を高めるという革新的な製造法を生み出しました。

論文：V. Kesava Rao et al, “An ultralow-cost, durable, flexible substrate for ultrabroadband surface-enhanced Raman spectroscopy”, Advanced Photonics Research, DOI: 10.1002/adpr.202300291 (2023) https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adpr.202300291

 
今後の展開
　東京大学と提携した研究成果が評価されたことで、LucasLandは、第４回東京大学協創プラットフォーム開発株式会社1st Round（起業支援プログラム）、2022年度Kawasaki Deep Tech Accelerator、および2023年度Plug and Play Japan アクセラレータープログラムに採択された他、HVC KYOTO 2023 にも選出されました。今後も品質の向上に努め、SERSセンサーの多分野への展開及び産業化を目指していきます。

担当者コメント
株式会社LucasLand　社長・古屋哲郎　コメント

　近年おなじみとなりました不織布マスクに使われている技術を本センサーに応用することで、迅速、無標識、高感度な測定ができる化学センサーを安価に提供することができる様になりました。有名な格言「沈黙は金」には「雄弁は銀」という言葉が付くのですが、表面増強ラマン分光法（SERS）では、まさにその言葉通り、銀を用いることで豊富な情報が得られる安価かつ高性能な簡便化学センサーを生み出すことができました。別売りの小型レーザー付き検出器と組み合わせるとスマートフォン片手に、どんな場所でも試料を採取することなく高度な化学測定が可能になります。専門家でない方々でも簡単に測定できますので、ぜひ様々な分野でお使いいただければと思います。

株式会社LucasLandについて
　迅速、簡便、高感度な化学センサーを開発・提供。創薬、食品検査、環境安全、感染症検出、がん検出、犯罪捜査など、多様なアプリケーションを支える革新的な表面増強ラマン分光（SERS）技術をベースに、迅速、簡便、高感度の化学センサーを提供している、東京大学発ベンチャーです。SERSは、金属基板上で局所的な表面プラズモン共鳴を励起することにより、本来弱いラマン散乱よりも数桁以上高い感度を得ることができる一方で、設計された金属ナノ構造からの高いラマン信号増強のための「ホットスポット」への依存、生体分子への有害な影響を引き起こす金属ナノ構造上の大きな光熱の発生、金属表面の酸化などにより、計測再現性、表面の均一性、生体適合性、耐久性が低く、その利点は損なわれています。同社独自のSERS技術である、金・銀ナノメッシュSERS基板および金属フリーのポリマー炭素SERS基板は、これらの問題を克服し、これまで実現できなかった化学計測能力を提供します。創業者である東京大学大学院理学系研究科の合田圭介教授が社外取締役（CSO）を務めています。

【会社概要】
社名：株式会社LucasLand
本社所在地：東京都千代田区神田小川町3丁目28番地5　Axelお茶の水２階C01
代表取締役：古屋 哲郎
事業内容： 理化学機器製造・販売
設立： 2022年04月
HP：http://www.lucasland.jp/jp.html