デジタル公共財のための研究機関Beacon Labs設立

Fracton ResearchがFracton Ventures株式会社のR&D事業から、一般社団法人Beacon Labsとして独立

一般社団法人Beacon Labs

2025年9月2日 09時00分

これまでFracton Ventures株式会社のR&D部門としてデジタル公共財に関する研究を行ってきたFracton Researchは、このたび一般社団法人 Beacon Labs（代表理事：赤澤直樹、以下Beacon Labs）として独立し、正式に活動を開始しました。
Beacon Labsは、デジタル公共財の持続的な発展を目的に、インパクト評価や資金提供メカニズムに関する研究開発を行う研究機関です。

これまでの活動

Fracton Researchは2023年10月に立ち上がり、Ethereumエコシステムを中心にデジタル公共財の資金提供メカニズムに関する研究を進めてきました。
近年は、運営モデルの異なる助成プログラムを定量的に分析する研究を主に実施。助成金額や受給者数などの指標を横断的に比較した結果、民主的な運営モデルでは資金が比較的均等に分配される一方、トップダウン型の財団モデルでは受給額に大きなばらつきが見られる傾向が明らかになりました。

この研究成果は、タイのバンコクで開催されたEthereum Foundation主催の国際カンファレンスDevcon SEAで発表し、記事および動画として公開しています。

さらに、Funding the Commons Bangkokでは、助成プログラム分析に関するワークショップを開催。併催のハッカソンでは、IES（Impact Evaluation Service）プロトコルを開発し、インパクト評価者のレポートを評価し適切なインセンティブを与える仕組みを提案しました。このプロトコルは、チェンマイで1か月間実施されたFunding the Commons Builders Residencyを通じて開発され、ハッカソンで表彰されています。

また、日本初開催となるFunding the Commons Tokyoを共催。Ethereum開発者に加え、NPO、研究者、行政関係者など多様な参加者が集い、テクノロジーを活用した公共財への資金提供について議論しました。Ethereumエコシステムと実社会をつなぐ重要な試みとなりました。

デジタル公共財と資金提供の課題

オープンソースソフトウェアをはじめとするデジタル公共財は、インターネット基盤やグローバル性を特徴とします。しかし、これらを持続的に維持・供給するには、十分なリソースが開発者や支援者に届く仕組みが不可欠です。特にEthereumエコシステムでは、デジタル公共財のために様々な資金提供の実験的取り組みが行われています。

代表例の一つがQuadratic Funding（QF）です。QFは、寄付総額ではなく「どれだけ多くの人に支持されているか」に重点を置き、より広く関心を集める取り組みに多くの資金を集める仕組みです。Ethereumで実証されたQFは、近年では実社会での応用も進んでいます。

しかし、特定の仕組みだけに依存することには限界もあります。公共財はそれぞれ異なるアウトカムを目指しており、単一の価値基準ではその多様な文脈や価値を公平に評価することはできません。
多様な価値観を尊重し、多角的な視点で資金提供の仕組みを構築することが必要とされています。