沖縄ワーケーション ビジネスの感性を高めるウェルネス効果検証 自然豊かな沖縄の環境が仕事に好影響をもたらすことが判明

業務における「集中度」は30%以上高まる結果も!沖縄でのワーケーションでより効果を得やすい職種は“マーケティング職”

沖縄県

 沖縄県が推進する「沖縄ワーケーション促進事業」では、豊かな自然や穏やかな雰囲気のなか、年間を通して密にならない屋外アクティビティが楽しめる沖縄の資源を活用しながら、心身ともにリフレッシュして生産性の高い仕事ができる「沖縄ウェルネスワーケーション」を提案しています。
 沖縄県は今回、沖縄でのワーケーションに「ビジネスの感性を高めるウェルネス効果」があることを検証するため、2021年11月8日(月)〜11日(木)に、東京と沖縄にて同一人物での実証実験を実施。その結果、睡眠の質や、集中度、ひらめき力、ストレスに対して好影響をもたらすことが明らかになりました。

 

 
  • 実証実験サマリー
① 沖縄ワーケーション全体トピック
睡眠評価では、深い睡眠をしている時間の割合は、沖縄へ行く前と比較して21%多い結果に。
やる気については、東京と比較して午前:27%、午後:13%の向上が見られ、沖縄での就業環境の方がやる気が出やすい傾向が明らかになりました。ひらめき力についても、独自のアイデア率※が8%向上。更に、那覇・中部チーム単体のテスト結果では、14%の向上が見られました。その他、集中度やストレスに関しても沖縄の方が良い結果が得られました。
※ 独自のアイデア率=他の人と被らなかった数/出した個数

② 職種別トピック
マーケティング職、エンジニア、営業職においては、東京よりも沖縄の方が「睡眠の質」や「集中度」「グループディスカッションの満足度」など、各項目において複合的に向上する結果に。また、事務職においては、「睡眠の質」が大幅に向上しました。

③ アクティビティトピック
「川平湾グラスボード」「八重山星空鑑賞」「竹富島水牛車」の体験は、ぼんやりしている時の脳の状態になり、ひらめきが起こりやすいと言われるデフォルトモードネットワーク※が優位になることが明らかに。また、「朝のビーチ散歩等」「やちむん陶芸体験」「ミンサー織体験」の体験では、脳への新しい刺激とポジティブな影響を与える結果となりました。
※ぼんやりとした脳が行っている神経活動
 
  • 実証実験方法
日程:2021年11月8日(月)〜11日(木)3泊4日
実施エリア:2チームに分かれ、それぞれエリア特性を活かした体験を実施・効果検証
      ①八重山(石垣島・竹富島):自然を活用したリフレッシュ・リラックス体験
      ②那覇・中部エリア:沖縄の伝統文化や異国文化などを活用した文化刺激体験
被験者:5名(同一人物にて東京と沖縄の比較検証を実施)
    30代女性:マーケティングリサーチャー、30代女性:事務職
    30代男性:研究職、30代男性:エンジニア、 40代女性:営業
検証方法:東京と沖縄の共通タスクと沖縄ならではのアクティビティ実施時の脳波を計測。
     睡眠の質を確認するため、FITBITにて脈拍を計測。
     朝夕2回、睡眠とやる気に関するアンケートを実施。
共通タスク:グループディスカッション(1日1回、30分)、ひらめきテスト(朝夕2回、5分)
      タイピングテスト(朝、5分)、安静計測(朝夕、1分)、通常業務
※本実験は、沖縄県コロナ感染対策のガイドラインに留意し実施いたしました。

 
  • 東京に比べて沖縄は「睡眠深度」「やる気」「集中度」「ひらめき力」が向上し、ストレスは「軽減」
①睡眠テスト
脈拍による睡眠評価をしたところ、合計睡眠時間は東京の方が長いものの、深い睡眠をしている深睡眠時間割合は、東京と比較して21%多い結果に。また被験者アンケートでも、午前中の眠気は東京と比べて平均21%下がっていて、疲労度に関しても、午前:平均20%、午後:平均11%下がる結果となりました。

②やる気テスト
業務に対するやる気を脳波で測定したところ、沖縄の方が、午前:27%、午後:13%向上する結果となりました。


③集中度テスト
朝の集中度を脳波で測定したところ、沖縄全体で4%向上。また、那覇・中部チーム単体では13%の向上が見られました。英語文章のタイピングによる集中度測定では、沖縄の方が5%向上する結果となりました。また、朝の集中度測定とタイピングによる集中度測定共に、沖縄滞在3日目から集中度が上がる傾向が明らかになりました。


④ひらめき力テスト
朝夕2回に分けて5分間のひらめきテスト※1を実施したところ、沖縄の方が独自のアイデア率※2が8.5%向上する結果に。更に那覇・中部チーム単体のテスト結果では、14%の向上が見られました。
※1  1つのテーマに対して使い道を多く考えるアイデアテスト
   テーマ:「レンガ」「靴紐」「ホウキ」「ヤカン」「輪ゴム」等
※2  独自のアイデア率=他の人と被らなかった数/出した個数

⑤ストレステスト
朝の安静時にストレス度を脳波で測定したところ、那覇・中部チーム単体では東京と比較して16%下がる結果になりました。


⑥グループディスカッション
グループディスカッション時の脳波を測定したところ、東京と比較して沖縄の方が13%満足度が高いことが明らかに。ストレスに関しても、研究職は7%、エンジニアは14%下がっていました。


【実験結果からの考察】
これらの結果から、沖縄でのワーケーションでは、睡眠の質が上がることで脳の回復が期待できるほか、やる気が高まったり、集中しやすい傾向にあることが分かりました。集中度に関しては、沖縄滞在3日目から上昇することが明らかになり、3泊以上の少し長めの滞在することで、より効果的なワーケーションになることが期待できます。また、沖縄の自然や文化など、五感を使ったアクティビティによって脳が刺激され、独創的なアイデアが出る“ひらめき力”が向上されたと考えられます。グループディスカッションにおいても、満足度が高まり、ストレスが下がっていたことから沖縄の方が人とのコミュニケーションがとりやすい傾向にあると思われます。このことから、沖縄は個人のワーケーションだけでなく、チームビルディングやグループでのワーケーションにも効果的であることが期待できます。
 
  • 職種別の比較においては、マーケティング職に大きな変化があることが判明
①マーケティング職
東京と比較して、深睡眠時間割合は16%向上し、ストレスは9%減少。朝の集中力は11%、タイピング時の集中度は32%、グループディスカッションの満足度も12%向上する結果になりました。

②事務職
東京と比較して、深睡眠時間割合は64%、グループディスカッションの満足度は29%向上していました。

③研究職
東京と比較して、朝の集中力は21%向上。グループディスカッションにおいては、満足度が19%向上し、ストレスが7%減少することが判明。

④エンジニア職
東京と比較して、深睡眠時間割合は31%向上し、ストレスは13%減少、朝の集中力は12%向上。グループディスカッションにおいては、満足度が8%向上し、ストレスが14%減少していました。

⑤営業職
東京と比較して、深睡眠時間割合は2%向上し、ストレスは20%減少。朝の集中力は16%、タイピング時の集中度も11%増加しました。


【実験結果からの考察】
さまざまな仮説を考えるマーケティング職は、沖縄特有の開放感や五感を刺激するアクティビティで気持ちがリフレッシュされ、沖縄ワーケーションの効果が出やすく、業務に対しても良い影響をもたらすことが考えられます。
  • ミンサー織体験は感性刺激効果、グラスボード体験はデトックス効果があることが明らかに
沖縄ワーケーション効果検証の一環として、沖縄県ならではアクティビティ体験を実施。デトックス効果のあるアクティビティ(川平湾グラスボード、八重山星空鑑賞、竹富島水牛車)は、ぼんやりしている時の脳の状態になり、ひらめきが起こりやすいと言われるデフォルトモードネットワーク(※)が優位になることが明らかに。また、感性刺激効果アクティビティ(朝のビーチ散歩、やちむん陶芸体験、ミンサー織体験)は、五感をフルに使うことで、脳への新しい刺激とポジティブな影響を与える結果となりました。
※ぼんやりとした脳が行っている神経活動

 

図の見方について
横軸:Valence(感情価)、縦軸:Arousal(活性度)を示しています。
   左下に行くほど落ち着いた状態、右上にいくほど昂る状態となります。
 
  • 脳科学者 コメント
 沖縄本島はほどよい都会で仕事モードにもなりやすく、沖縄の独特な空気感で開放感もある。そして、自然がすぐ近くにあるので、モードの切り替えがしやすい環境です。今回は沖縄のみでの実施であることから、他エリアとの比較はできませんが、「沖縄ならでは」のアクティビティがビジネスの感性を高める要素として関与した可能性があります。
 アイデア発想という点においては、沖縄の「牛車体験」や「星空観察」といったゆったりとした時間で脳がリラックス状態になり、アイデアが出やすくなるだけでなく、普段接していない食事や人が良い刺激になるようです。また、沖縄は心も体もゆたかになり、本来の自分を取り戻せる場所。沖縄にくることで睡眠の質も高まっており、都会の仕事を持ち込んでいても休息ができていました。
 適度な都会で不便もなく、手の届く自然、ゆったりとした空気。アクティビティも豊富にあることからわくわく感もあり、沖縄ならではのワーケーションが確立する可能性がある。今回は調査が目的のため、ごく限られた日数でしたが、滞在日数を多くすることで気持ちのスイッチングもしやすくなり、ワーケーションがより効果的になることが期待できます。
 

枝川義邦
1998年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了(博士(薬学))、2007年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年、早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサー(STO)の称号を得る。2020年より早稲田大学理工学術院教授。一般向けの著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)などがある。
 
  • 主催者 コメント

玉城デニー沖縄県知事玉城デニー沖縄県知事

 昨今の新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大は、経済活動や社会活動に大きな制約をもたらしました。ウィズコロナ時代の新たな生活様式に対応する中で、人々の意識や旅行に対するニーズも変化しており、国内外の観光のあり方も変わってきています。
 その一例として、従来のバケーションとは異なる、旅行先でテレワークを活用して仕事をしながら滞在する「ワーケーション」が注目されています。最近では、ワーケーションを導入する企業や実践される個人の方も多く見られ、そのニーズは高まっていると感じています。
 沖縄県は、地域ごとの豊かな自然や独特の文化など、数多くの魅力的な観光資源があり、これまでも多くの方に訪問いただいておりますが、今後の観光においては、時代の変化を踏まえて、人々のニーズに合った新たな旅のスタイルを提案していく必要があると考えています。
 ビジネスの感性を高めるウェルネス効果など沖縄の新たな魅力を発見して頂ければと存じます。

 

 
  • NIKKEIワーケーション会議in沖縄について
 2022年3月11日(金)に、沖縄ウェルネスワーケーションに関するセミナーが行われました。セミナーでは、枝川先生より今回の実証実験に関する結果と考察をご説明いただき、一緒にトークセッションをした公益団法人Well-being for Planet Earth代表理事を務める石川氏、独立研究家/著作家/パブリックスピーカーの山口氏からコメントをいただきました。
 石川氏からは「今の時代すぐに仕事ができてしまいます。人にもよりますが、極端な例だとバケーションに行ってもワークをしてしまう。沖縄のようにバケーションが色濃くあると、そういった方でもワーケーションをしたときにワークとバケーションのバランスが取りやすくなって良いと思います」と、沖縄でワーケーションをするメリットなどを考察いただきました。
 山口氏からは「自分自身も葉山で暮らすようになって仕事のやり方が変わりました。日が沈む前に海に行ってビールを飲みながら夕日を眺められるとなると、一刻も早く仕事を終わらせようとします。魅力的なコンテンツがあればあるほど仕事をコンパクトにしようと考えるので、そこがワーケーションの重要なポイントになるのではないかと思いました」と、仕事以外の魅力的なコンテンツの重要性などをご自身の経験を踏まえつつ語っていただきました。
 最後に枝川先生から「ワーケーションは、仕事そのものに対するエンゲージメントを高めることが期待できると思います。ワーケーションは立ち上がったばかりです。それを上手く育てていくためにも、エビデンスに基づいた情報発信が重要だと考えます」とワーケーションの今後に対してもコメントいただきました。

■実施概要
イベント名:NIKKEIワーケーション会議in沖縄
      〜ビジネスの感性を高める沖縄ウェルネス&ワーケーション・テック〜
日時:2022年3月11日(金)13時
会場:オンライン配信
登壇者:玉城デニー沖縄県知事、石川善樹氏、山口周氏、枝川義邦氏
    川村佳央氏、宇野大介氏、なかのかな氏、兼村光氏、関口和一氏
内容:【第一部】冒頭メッセージ、キーノート・スピーチ「移動の価値について」
        トークセッション「ウェルネスが生み出す新しい創造的環境とは〜科学的な検証を元に〜 」
   【第二部】トークセッション「ウェルネス効果を最大化させる沖縄ワーケーション・テックの可能性」
  • 「沖縄ワーケーション促進事業」について
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、「新しい生活様式」として、都市と地域の両方で働く新たな暮らしのスタイルが求められている今、沖縄県は2つの戦略を持ってワーケーションを推進しております。
 一つ目は、沖縄県の新たな観光ツールとしてのワーケーションを確立させていきます。二つ目に、沖縄ワーケーションを定着させ、交流人口から関係人口の創出・拡大に繋げていきます。そのために昨年度は、ニーズ・受入環境の調査、沖縄ワーケーション・モデルプランの作成、モニターツアー、プロモーションの実施に取り組みました。今年度からは、造成したモデルプランを活用して各種プロモーションを行い、沖縄でのワーケーションを促進してまいります。
 ワーケーションには「三密回避」といったコロナ禍において生まれた新しい価値観、「健康意識の向上」などのニーズの変化、リモートワークという新しい働き方から生まれる「社員交流の減少」や「労働環境改善」といった企業の課題などがあるとされています。その中で沖縄県は、美しい海や豊かな自然、穏やかな雰囲気の非日常空間で、心身ともにリフレッシュしながらも、快適かつ生産性の高い仕事ができる環境を備えた、沖縄県ならではのワーケーションを提案していきます。

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