1型糖尿病細胞治療を目的とした均質なヒトiPS細胞由来膵島細胞の大量培養生産シングルユースシステムの実用化に向けた共同開発の開始
当社は、引き続き、CiRA及び共同研究先からiPIC関連資産の譲渡を受けたバイオベンチャーであるOZTx社と共に、細胞製造施設に適した仕様へと同システムの最適化を行い、Good Manufacturing Practice (GMP) に準拠した治験薬製造へとつなげていく。OZTx社は、2024年頃を目途に同システムで製造したiPICの患者さんへの移植を目指す。
なお、iPICは、CiRAの豊田太郎講師が見出した膵分化誘導法を土台に開発された、細胞治療への応用に適したヒトiPS細胞由来の膵島細胞である (Sci Rep. 2022;12:4740)。
【技術説明】
高効率連続培養システムは、当社が剪断耐性の弱い細胞培養を目的として開発・製品化した上下動撹拌培養装置VMFリアクターをシングルユース化したVMF-SUBと、これを完全密閉系で接続したシングルユース連続培養システムTCSを組み合わせたものである。iPICのような剪断ダメージに脆弱な細胞に対し、一般的にVMF-SUBは最適な培養環境を提供することで大量培養を可能にした。それに加え、特に付着性の高い本培養系において長期間にわたり目詰まりを起こすことなく、安定した連続培養を可能としたメンブレンデバイスを開発したことで世界的に例のない分化誘導効率及び細胞収量を達成し、産業化に向け飛躍的な前進となった。この細胞と培地を完全に分離するメンブレンデバイスは、当社が独自開発し特許出願中の金属膜と、OZTx社が特許出願中の培地交換ホルダーを融合させることで、通常は困難であった完全な固液分離を実現した。
また、本システムの制御プログラムは、繊細な制御を自動で行えるよう工夫されており、人的な負担とヒューマンエラーのリスクを抑制している。これらシステム全体がシングルユースデバイス・パーツで構成されており、培養用のシングルユースボトル・バッグをはじめ、メンブレンデバイス等は国産としている。当社は、装置供給メーカーとして商用生産に向けた供給リスクを低減するため、一部のパーツやチューブを除き極力メイドインジャパンに拘っており、パンデミックや世界情勢に左右されない供給体制を構築している。今後は、協力会社と共にパーツ類も国内製へシフトさせる。
なお、本共同研究成果は、日本医療研究開発機構(AMED)再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(再生医療シーズ開発加速支援)の支援を受けて実施されたものである。
【おわりに】
OZTx社の先進的で優れた細胞技術、分化誘導法を社会実装するためには、それを安定的に低コストで量産するためのシステムが必要不可欠である。同時に、安全で安心な装置・システムであることが求められ、今後はエラーゼロを目指した装置・システム開発を進めていくとともに、さらなるスケールアップに挑戦する。
均質な細胞の連続大量培養の実現は、iPICに限らず再生医療分野におけるあらゆる取組みにおいてコストの面で極めて重要な技術であり、この培養システムの確立は今後の同分野における産業化を飛躍的に加速させるものと考えている。
<オリヅルセラピューティクス株式会社(OZTx社)について>
2021年4月に京都大学イノベーションキャピタル株式会社によって設立されたOZTx社は、「科学の無限の力で世界により良い健康への希望をもたらす」というビジョンを掲げています。患者さんに細胞医療を届けるために、以下の事業内容を通じて、再生医療等製品および革新的なiPS細胞関連技術の社会実装を推進します。
1. 細胞移植による再生医療等製品の開発
2. iPS細胞関連技術を利活用した、創薬研究支援および再生医療研究基盤整備
詳細については、https://www.orizuru-therapeutics.com/ をご覧ください。
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