世界初の発見 ホタテ由来プラズマローゲンがナチュラルキラー細胞を活性化し、ウイルス殺傷力を高める
The Journal of Immunology掲載
◆免疫には生まれた時から備わっている「自然免疫」と後天的につくられる「獲得免疫」があります。コロナワク
チンなどを接種するのは「獲得免疫」を得るためです。「自然免疫」は、あらゆる生き物が持つ基本的な生体防
御システムで、病原体など体に異物が侵入した時、いち早く反応し排除する事ができます。病気にかかる以前に
健康を守るという予防医学の観点からは、「自然免疫」が重要な役割を果たしています。そしてナチュラルキラ
ー(NK)細胞は、ウイルス感染やがんと闘う重要な自然免疫細胞の一つです。
◆プラズマローゲンは、脂質(リン脂質)の一種で、脳や心臓、骨格筋、そして免疫細胞に非常に多い事が分かっ
ています。また、ホタテ貝、鶏、ホヤなど多くの生物からプラズマローゲンを抽出する事が可能ですが、中で
も、DHAを最も多く結合しているホタテ由来プラズマローゲンは、機能性が高いことが知られています。
◆レオロジー機能食品研究所(藤野武彦代表、馬渡志郎所長、Shamim Hossain基礎研究部長)の研究グループ
は、ホタテ由来プラズマローゲンがNK細胞を活性化してがん細胞やウイルス攻撃力を高めるメカニズムを発見
しました。
<発表のポイント>
・ホタテ由来プラズマローゲンを摂取したマウスは、ウイルス感染やがん増殖が抑制されました。
・ホタテ由来プラズマローゲンは、ナチュラルキラー(NK)細胞の受容体(GPCR21)を活性化し、NK細胞の
がん細胞に対する殺傷能力を高めました。
・ホタテ由来プラズマローゲンはNK細胞の受容体(GPCR21)を活性化し、ミサイル的役割をするパーフォリン1
(細胞膜に穴を開け破壊する)の放出を促進しウイルス感染細胞などを殺傷しました。
・ヒトの免疫細胞(PBMC)にホタテ由来プラズマローゲンを添加すると、NK細胞の受容体(GPCR21)とミサイ
ル役のパーフォリン1が増加したことから、プラズマローゲンはウイルス感染症やがんに対する新たな治療薬と
なる可能性が期待されます。
① ホタテ由来プラズマローゲンがNK細胞を活性化してがん細胞やウイルス感染細胞を殺傷するメカニズムを
発見しました。
公開日 2022年7月20日
【動画】ホタテ由来プラズマローゲンがNK細胞を活性化してがん細胞やウイルス感染細胞を殺傷するメカニズム
② ホタテ由来プラズマローゲンはマウスのウイルス感染死を防ぐことが分かりました。
図 カブラン・マイヤー生存曲線の比較
ウイルス感染マウスは2週間で生存率は50%以下ですが、ホタテ由来プラズマローゲンを投与したマウスは、
80%近い生存率を示しました【図】
③ ヒト血液免疫細胞でもマウスと同じ結果が得られました。すなわち血中プラズマローゲン濃度が低いヒト
(病気や疲労している人)では、血液細胞のGPCR21の発現が低いことが分かりました。つまり、NK細胞が
弱ってウイルスやがんに対する抵抗力が低下していることを示します。
一方、ヒト血液にプラズマローゲンを添加するとNK細胞を含む血液免疫細胞のGPCR21が著明に発現しま
した。つまりNK細胞が元気になりウイルスやがんに対する抵抗力が高まったと言えます。
●今後の展望
以上の結果は、ホタテ由来プラズマローゲンがNK細胞を活性化することで自然免疫を高める、すなわち、
ウイルスやがんに対する抵抗力を高めることを示しています。このことは、今後、プラズマローゲンが新たな
抗ウイルス薬、抗がん剤となる可能性を示唆しています。
●論文情報
論文名:Plasmalogen-mediated activation of GPCR21 regulates cytolytic activity of NK cells
against the target cells
掲載紙:The Journal of Immunology
著 者:Shamim Hossain, Shiro Mawatari and Takehiko Fujino
U R L : https://www.jimmunol.org/content/209/2/310
●参考文献
1 Fujino T et al. 2017. Efficacy and Blood Plasmalogen Changes by Oral Administration of Plasmalogen
in Patients with Mild Alzheimer's Disease and Mild Cognitive Impairment: A Multicenter, Randomized,
Double-blind, Placebo-controlled Trial. EBioMedicine 17:199–205.
2 Fujino T et al. 2018. Effects of Plasmalogen on Patients with Mild Cognitive Impairment:
A Randomized, Placebo-Controlled Trial in Japan. J Alzheimers Dis Parkinsonism 8:419.
3 Fujino T et al. 2019. Effects of Plasmalogen on Patients with Moderate-to-Severe Alzheimer’s Disease
and Blood Plasmalogen Changes: A Multi-Center, Open-Label Study. J Alzheimers Dis Parkinsonism
9:474.
4 Fujino T, Hossain S and Mawatari S. 2020. Therapeutic efficacy of plasmalogens for Alzheimer’s
disease, Mild Cognitive Impairment and Parkinson’s disease in conjunction with a new hypothesis for
the etiology of Alzheimer’s disease. In: Lizard G (ed). Peroxisome Biology: Experimental Models,
Peroxisomal Disorders and Neurological Diseases. Switzerland: Springer International Publishing, pp.
195-212.
5 Hossain S, Mawatari S and Fujino T. 2020. Biological Functions of Plasmalogens. In: Lizard G (ed).
Peroxisome Biology: Experimental Models, Peroxisomal Disorders and Neurological Diseases.
Switzerland: Springer International Publishing, pp. 171-193.
6 Fujino M et al. 2022. Orally Administered Plasmalogens Alleviate Negative Mood States and Enhance
Mental Concentration: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial: Frontiers in Cell and
Developmental Biology. Volume 10, Article 894734.
7 Hossain S, Mawatari S and Fujino T. 2022. Plasmalogens, the Vinyl Ether-Linked
Glycerophospholipids, Enhance Learning and Memory by Regulating Brain-Derived Neurotrophic Fact
or. Frontiers in Cell and Developmental Biology. Volume 10, Article 828282.
●参考情報
・レオロジー機能食品研究所
https://www.reoken.com/research/
・一般社団法人プラズマローゲン研究会
https://pls.jp/
●本件お問い合わせ先
一般社団法人プラズマローゲン研究会
〒812-8582 福岡市東区馬出三丁目1番1号
九州大学大学院医学研究院加齢病態修復学講座
(事務局)
TEL:092-273-2411
FAX:092-273-2421
メールアドレス:info@pls.jp
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