糸魚川総合病院 65歳以上高齢者における 頭痛・片頭痛・痛み止めの使いすぎによる頭痛 (薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛) 有病率調査

高齢者でも片頭痛の可能性あり

 糸魚川総合病院 脳神経外科と糸魚川市 健康増進課の研究チームは、能生国民健康保険診療所、仙台頭痛脳神経クリニックとの共同研究で、「65歳以上高齢者における頭痛・片頭痛・痛み止めの使いすぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)有病率調査」を糸魚川翡翠研究と題して日本で初めて行いました。新型コロナワクチン接種後の待機時間を利用したこの調査において、糸魚川地域の65歳以上高齢者における頭痛・片頭痛・痛み止めの使いすぎによる頭痛の有病率はそれぞれ11.97%、0.91%、0.70%であることを報告しました。
 本研究は令和4年8月11日に医学雑誌「Journal of Clinical Medicine」に掲載されました。
 【背景】日本における片頭痛の年間有病率は8.4%で、20-40歳代の若年女性に多いと言われています。片頭痛を含め頭痛の大半は命に関わることはなく軽視されがちですが、片頭痛による欠勤や休業、学業や労働のパフォーマンス低下などによる間接的経済損失は1人あたり176万円/年と言われています。片頭痛を含め頭痛の多くは、①痛いときに飲む「痛み止め」の適切な選択と内服 ②痛くなって困らないように頭痛の重症度や頻度を改善する「予防薬」の内服 の2本柱の治療により、生活への支障を最小限にコントロールすることができます。そのため、月に2回以上頭痛があるなど、頭痛により普段の生活に支障をきたしている場合は医療機関で適切な治療を受けることが、患者さん自身の生活の質の向上および日本の経済発展のために重要です。
 日本において片頭痛患者の約7割は医療機関を受診せず、市販の痛み止めを使ったり我慢をしたりしているのが現状です。片頭痛は進行性の疾患と言われており、適切な治療をしないと年間3%の人が難治な「慢性片頭痛」へと移行します。また痛み止めを毎日のように使用すると「痛み止めの使いすぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)」を発症してしまいます。慢性片頭痛や痛み止めの使いすぎによる頭痛のおよそ3割は頭痛が軽快しにくいことが言われており、若い時からの頭痛がこのように難治になる可能性もあるのです。

片頭痛の進行のイメージ片頭痛の進行のイメージ


高齢化が進む日本では健康寿命が長くなり、社会進出の機会が増え、仕事・趣味・家事などに励む高齢者が増えています。そのため、頭痛は高齢者にとっても負担となっていることが推測されます。本来加齢とともに片頭痛は軽快していくのですが、このような難治な頭痛を伴うと、年齢を重ねても軽快せず頭痛で生活に支障が出てしまうことが予想されます。また日本における高齢者の頭痛の有病率やその特徴も詳細に調査されたことはありませんでした。
 【方法と結果】第3回新型コロナワクチン接種後の待機時間を利用して、糸魚川総合病院と能生国民健康保険診療所で65歳以上高齢者の糸魚川市民の皆様にアンケート調査を行いました。その結果、糸魚川地域の65歳以上高齢者における頭痛・片頭痛・痛み止めの使いすぎによる頭痛の有病率はそれぞれ11.97%、0.91%、0.70%であることが疑われました。また人工知能によるクラスター解析では、従来の緊張型頭痛、片頭痛、痛み止めの使いすぎによる頭痛の他に、「脳卒中・脂質異常症・うつ病などを既往にもつ重症な頭痛」が高齢者特有の頭痛として存在しうることが分かりました.
 【今後の展望】およそ1%の高齢者に片頭痛や痛み止めの使いすぎによる頭痛があることがわかりました。諸外国の報告に比べるとやや少ない印象ですが、社会で活躍する高齢者が多い日本において、高齢者の頭痛に対する社会の認識はまだ乏しいと思われます。さらに、若い時から持っている片頭痛が不適切な治療により悪化し、歳を重ねても治らなくなっている可能性も示唆されます。片頭痛による社会的経済的損失は重大です。頭痛は適切な治療でその生活への支障を最小限にすることが可能な疾患であるため、今回の調査をきっかけに、若年者のみならず高齢者においても、片頭痛への理解、医療機関への適切な受診、痛み止めの使いすぎによる頭痛の予防・啓発が広まることが期待されます。

(論文情報)
論文名 Questionnaire-based survey during COVID-19 vaccination on the prevalence of elderly’s migraine, chronic daily headache, and medication-overuse headache in one Japanese city -Itoigawa Hisui Study
著者 Masahito Katsuki, Junko Kawahara, Yasuhiko Matsumori, Chinami Yamagishi, Akihito Koh, Shin Kawamura, Kenta Kashiwagi, Tomohiro Kito, Akio Entani, Toshiko Yamamoto, Miyako Otake, Takashi Ikeda, Fuminori Yamagishi
掲載誌 Journal of Clinical Medicine (https://www.mdpi.com/2077-0383/11/16/4707
DOI 10.3390/jcm11164707

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ビジネスカテゴリ
医療・病院
ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

URL
https://www.itoigawa-hp.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
新潟県糸魚川市竹ケ花457-1,
電話番号
025-552-0280
代表者名
山岸文範
上場
未上場
資本金
-
設立
-