「学校か、家か」の二択にしない。不登校の子どもに“第三の選択肢”を

子どもの「安心」と「関係」を考える講演会を名古屋で開催~全国の不登校児童生徒は35万人超。保護者・教育関係者・支援者が、地域でできる支援を考える~

一般社団法人 子育て未来支援 おやとこネスト

 一般社団法人 子育て未来支援「おやとこネスト」(代表理事:渡辺眞由美)は、2026年9月6日(日)、イーブルなごや(名古屋市)にて、牧真吉氏を講師に迎え、講演会「子どもの『行きたくない』はSOSかもしれない」を開催しました。

 当日は、不登校や登校しぶりに関心を持つ保護者、教育関係者、子どもの支援に携わる方など25名が参加しました。

 講演では、不登校を「どうしたら学校へ戻せるか」という視点だけで捉えるのではなく、子どもの「行きたくない」という気持ちの背景に目を向け、安心できる人や場所、関係性をどのようにつくっていくかについて考えました。

 特に、言葉だけで「大丈夫」と伝えただけでは意味がない、子ども自身が「この人と一緒なら安心できる」「ここにいても大丈夫」と感じられる、言葉ではない感覚を築いていくことの大切さについてお話しいただきました。

 講演後には、参加者が少人数のグループに分かれて対話を行い、講演を聞いて感じたことや、それぞれの立場から考える「子どもの安心」について意見を交換。その後、各グループで出された意見や気づきを全体で共有しました。

 そして最後にもう一度話されたのは、さまざまな意見を無理に「一つの答え」にまとめないことでした。それぞれの立場や経験から生まれた考えをそのまま持ち帰ることも、子どもを支える上で大切な視点であることを参加者と共有しました。

 今回の講演会は、不登校を「早く学校へ戻すべき問題」としてだけ捉えるのではなく、「子どもが安心して育っていくために、私たち大人や地域に何ができるのか」を参加者とともに考える機会となりました。

 おやとこネストでは今後、学校へ行くか、家庭で過ごすかという二択だけではなく、子どもがその日の状態に応じて過ごし方を選べる「学校と家庭の間の居場所」についても、地域の関係者や支援機関等との連携を図りながら、そのあり方を模索していきます。

講演会当日の様子

■全国で35万人超、愛知県でも約2万5千人。不登校の子どもは過去最多に

 文部科学省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、全国の小・中学校における不登校児童生徒数は35万3,970人となり、12年連続で増加し、過去最多となりました。そのうち小学生は13万7,704人、中学生は21万6,266人となっています。

 愛知県でも、小学生10,028人、中学生14,899人の計24,927人となり、小・中学校ともにこれまでで最も多い結果となっています。

 さらに全国の不登校児童生徒のうち、約13万6千人は、学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていません。不登校を経験する子どもが増える中、「どうしたら学校へ戻れるか」だけではなく、子どもが安心して過ごし、人や社会とのつながりを持ちながら育っていくために、学校・家庭・地域がどのように支えていくのかが重要になっています。

 おやとこネストでも日々、不登校や登校しぶりを経験する子どもや保護者からの相談に向き合う中で、学校へ行くことが難しいときにも、子どもが安心して過ごし、人とつながることのできる選択肢の必要性を感じてきました。こうした問題意識も背景に、今回の講演会を開催しました。

※出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」、愛知県「不登校の現状(全国と愛知県の実情)」

■「行きたくない」の奥にあるものを見る

 子どもが学校へ行けなくなると、大人は「勉強が遅れてしまうのではないか」「友達との関係が途切れてしまうのではないか」「このままで大丈夫だろうか」と不安を抱きます。そして、「なぜ行けなくなったのか」という原因を探し、「どうしたら再び学校へ行けるのか」を考えがちです。

 児童相談所の所長を務めるなど、長年にわたり子どもや家庭に関わってきた牧氏は、講演の中で、そうした視点だけではなく、不登校の子どもの姿を別の角度から捉えることを参加者に投げかけました。

学校へ行かないことで、初めて自分の「嫌だ」という気持ちを表現できるようになることもある。学校ではなく家庭で過ごすことで、少しずつ安心を取り戻していくこともある。

 そして、不登校をマイナスの側面からだけ見るのではなく、子どもが「学校よりも我が家の方がいい」と家庭を選んだと捉えるなら、それだけ家庭が子どもにとって安心できる魅力的な場所であり、「そんな家庭をつくってきたことは素晴らしいこと」と、保護者に向けた温かな視点も示しました。

「学校へ行けなくなった」「以前できていたことができなくなった」という部分だけを見るのではなく、その子の中で今、何が起き、何が育とうとしているのかを見ること。

子どもの行動をすぐに変えようとするのではなく、まず、その行動の背景にある気持ちを受け止めることの大切さが、参加者に伝えられました。

講演会で話す牧氏の様子

■子どもの育ちの土台にある「安心できる関係」

 講演で繰り返し語られたテーマの一つが「安心」でした。

 人に甘えること。
 困ったときに人を頼ること。
 自分の気持ちを否定されずに聞いてもらうこと。

 こうした経験の積み重ねが、人との間に安心できる関係をつくっていきます。また、子どもの気持ちは必ずしも言葉だけで表現されるものではありません。表情や態度、行動など、まだ言葉になっていない子どもの気持ちを受け止めることも大切です。

 牧氏は、言葉が生まれる以前からある人と人との関係に目を向けること、そして安心できる関係の中では、人は立ち止まったり、戻ったりしながらも、自分なりのペースで再び前へ進んでいくことができると語りました。

 不登校を経験する子どもにとって、まず必要なのは「正しい方向へ進ませること」ではなく、安心して立ち止まることのできる人や場所なのではないか。参加者にとって、子どもとの関わり方を改めて考える機会となりました。

講演会で話す牧氏の様子
参加者がメモをとる様子

■「原因探し」から「一緒に支える関係」へ

 不登校になると、「学校に原因があるのではないか」「家庭に何か問題があるのではないか」「本人に何らかの原因があるのではないか」と、理由を探そうとすることがあります。しかし原因探しが続くことで、本人や家族、学校などの誰かが「問題の原因」として扱われ、さらに苦しくなってしまう場合もあります。

 牧氏からは、誰かを悪者にするのではなく、子どもを中心に、家庭、学校、周囲の人たちが「ともに支える関係」をつくっていくことの大切さが示されました。

 また牧氏は、「学校は、すべてが楽しい場所というわけではない」と話します。子どもたちは、それぞれに嫌なことや大変なことも抱えながら、その子なりに頑張り、その中にある「ちょっとだけ楽しいこと」も支えにしながら学校へ通っています。

 だからこそ、学校へ行っていることを当たり前と捉えるのではなく、「頑張っているね」と、その子の頑張りを認めること。そして、疲れたときやつらいときには安心して甘えられる関係をつくっておくことが大切だと語られました。

 時には「だっこ」をすることも、子どもがまた頑張るための「エネルギーチャージ」になる。安心できる大人との関わりの中で十分に甘え、心のエネルギーを蓄えることが、その子が自分の力で次の一歩を踏み出すための支えになるというお話もありました。

 不登校を「早く解決すべき問題」としてだけ捉えるのではなく、学校へ行っているか、行っていないかにかかわらず、その子が今どれだけ頑張っているのかに目を向けること。そして、安心して甘え、エネルギーを蓄えられる関係をつくること。

今回の講演を通して、子どもが安心を取り戻し、自分なりのペースで次へ進んでいくために、大人や地域がどのように支えていけるのか、その視点を参加者全体で共有しました。

「一つの答え」にまとめない――それぞれの気づきを持ち帰る対話の時間

 講演後は、参加者が少人数のグループに分かれ、対話を行いました。講演を聞いて心に残ったこと、自身の子育てや教育・支援の中で感じてきたこと、子どもの「行きたくない」という言葉をどう受け止めるかなど、それぞれの立場から意見を交わしました。

 対話の中では、言葉だけに頼らないコミュニケーションの大切さについて多くの意見が出されました。

 子どもの言動をすぐに理屈で理解しようとするのではなく、「なんとなく、この子の中で何かが起きている」と感じ取ること。その感覚を大切にしながら、自分の感性で子どもの姿を見ていくことも必要ではないか、という声がありました。

 また、支援の現場での経験として、訪問しても布団から出ることができなかった子どもに、無理に会おうとせず、手紙を置いて帰るという関わりを続けた事例も共有されました。少しずつ布団から出られるようになっていったその姿から、「自分を見てくれている人がいる」「気にかけてくれている人がいる」と子ども自身が感じられることの大切さについても話し合われました。

 それぞれのグループで交わされた内容を代表者が全体に共有した後、牧氏から改めて伝えられたのは、「ここで出た話を、一つにまとめなくていい」ということでした。

 立場や経験が違えば、見えている子どもの姿も、感じることも違います。一つの「正解」をつくるのではなく、それぞれの考えや感覚をそのまま大切にする。そして、自分とは違う誰かの視点に触れることで、それまでとは違う子どもの見方に気づくこともできます。

 今回の対話は、講演を「聞いて終わる」のではなく、参加者一人ひとりがそれぞれの気づきを持ち帰り、自身の子育てや教育・支援、そして地域でできることを改めて考える時間となりました。

参加者がグループに分かれて話をする様子
グループで話した内容を全体に共有する様子

■「学校か、家か」の二択にしないために

 おやとこネストでは、日々、不登校や登校しぶりを経験する子どもや、その保護者からの相談に向き合っています。その中で感じている課題の一つが、子どもが朝「学校へ行けない」となったときに、選べる場所が限られていることです。

 学校へ行く。
 それが難しければ、家にいる。

 しかし、本当にこの二つだけなのでしょうか。朝、学校へ向かうことが難しい日は、まず安心できる別の場所へ行ってもいい。そこで誰かと過ごし、気持ちが整った結果、「今日は少しだけ学校へ行ってみよう」と思う日があってもいい。その日は学校へ行かず、ゆっくり過ごして翌日につなげる日があってもいい。

 子どもがその日の自分の状態に合わせて過ごし方を選べる「学校と家庭の間の場所」が地域にあれば、子どもにも保護者にも新たな選択肢が生まれるのではないか。

 おやとこネストでは現在、こうした「第三の選択肢」となる子どもの居場所のあり方について、地域の関係者や支援機関等との連携を図りながら模索しています。今回の講演会で語られた「安心できる関係」という考え方を、講演会だけで終わらせることなく、これからの地域での実践につなげていきます。

当日の講演会を振り返って話をする代表理事・渡辺眞由美の様子

■参加者の声――「言葉以前の関係づくり」への気づき

 講演後に実施したアンケートでは、参加者から多くの感想が寄せられました。

 特に多く聞かれたのは、牧氏が講演の中で伝えた「言葉だけに頼らない」という視点への共感です。

子どもに「大丈夫だよ」と声をかけるだけで安心が生まれるのではなく、その言葉以前に、「この人なら自分を分かろうとしてくれる」「困ったときには支えてもらえる」と子ども自身が感じられる関係が築かれていることが大切だと牧氏は語りました。

 参加者からは、

「起きていること、子どもの求めていることを言葉に頼らず、さぐって、つきあうことを今後もやっ  ていく勇気がもらえました」

「同じ考えがある人がいることが勇気づけられました」

「グループでの話し合いも楽しかったです。悩みを共有できて楽になりました」

などの声が寄せられました。

 また、「学校に行くのが当たり前」と考えていた自身の経験を振り返りながら、不登校の子どもを抱える身近な人に今回の話を伝えたいという感想や、「起きていること、子どもの求めていることを、言葉に頼らず探って付き合っていきたい」と、今後の子どもとの関わりにつなげようとする声もありました。

 アンケートには今後について、「また牧先生の話を聞きたい」「少人数でじっくり話せる時間を増やしてほしい」といった要望も寄せられました。

 今回の講演会は、知識を得るだけではなく、参加者自身がこれまでの子どもとの関わりを振り返り、他者の考えに触れながら、それぞれの気づきを持ち帰る機会となりました。

 一般社団法人子育て未来支援「おやとこネスト」では、今後も、子ども・保護者・教育関係者・地域の支援者が立場を越えてつながり、「一つの答え」にまとめるのではなく、それぞれの子どもにとっての安心とは何かを共に考えられる場をつくっていきます。

参加者からの声

■代表理事・渡辺眞由美 コメント

 私は38年間、学校現場で子どもたちと関わってきました。

 学校にいた頃は、学校へ来られなくなった子どもに対して、「どうしたら学校へ戻れるだろう」と考えることもありました。

 けれど、学校を離れ、子どもや保護者の相談を受ける中で、改めて考えるようになりました。

学校へ行くことよりも先に、その子が安心できていることが大切なのではないか。

 学校へ行けない日があってもいい。
 立ち止まってもいい。
 誰かに頼ってもいい。

 そして安心できたとき、子ども自身が「次はどうしたいか」を考えられる。

 今回、牧先生のお話を伺い、参加された皆さんと語り合ったことで、私自身も「安心できる人や場所」の大切さを改めて感じました。学校、家庭、地域がそれぞれ別々に子どもを支えるのではなく、子どもを真ん中に置いてつながっていく。おやとこネストは、そのつながりをつくる場所の一つになりたいと考えています。

■開催概要

講演会名
 「子どもの『行きたくない』はSOSかもしれない」

開催日時
 2026年9月6日(日)10:00~11:30

会場
 イーブルなごや 第1集会室

講師
 牧 真吉 氏

 元名古屋市中央療育センター所長、みどりの風南知多病院勤務

 専攻:児童先進医学、特に乳幼児医学

内容
 講演/参加者によるグループ対話/全体共有

主催
 一般社団法人 子育て未来支援
 おやとこネスト

参加者数
 25名

■一般社団法人 子育て未来支援「おやとこネスト」について

 「おやとこネスト」は、子育て、不登校、登校しぶり、学校生活などに悩む子どもと保護者への相談・支援を行っています。

 代表理事の渡辺眞由美は、小学校教員として38年間勤務し、教頭・校長を経験。公認心理師・キャリアコンサルタントの資格を取得。現在はスクールカウンセラーとしても、学校の内側と外側の双方の視点を生かしながら、親子への相談支援、講演・研修、地域の関係機関との連携などに取り組んでいます。

 今後は相談支援に加えて、不登校や登校しぶりを経験する子どもが安心して過ごせる地域の居場所づくりについても取り組んでいきます。

■取材・お問い合わせ

 今回の講演会の内容をはじめ、不登校・登校しぶりを経験する子どもと保護者への支援、発達特性のある子どもへの関わり、地域での居場所づくりなど、おやとこネストの取り組みについて取材を受け付けています。

 代表理事・渡辺眞由美は、38年間の学校現場での経験と公認心理師としての専門性を生かし、保護者からの個別相談に加え、療育・教育現場の支援者を対象とした講座や研修にも取り組んでいます。

 現在は、療育施設において、子どもの「困った行動」を表面的に捉えるのではなく、その背景にある発達特性や気持ちを理解し、具体的な支援につなげるための連続講座を実施しています。「癇癪への対応」「授業中の立ち歩き・奇声などの困りごと」「ADHDとASDでは不安の現れ方がどのように異なるのか」など、日々の支援に直結するテーマを扱っています。

以下のようなテーマについても取材可能です。

・不登校・登校しぶりを経験する子どもと保護者への支援
・38年間の学校現場経験と公認心理師の視点から考える不登校支援
・「学校か、家か」の二択にしない、地域の居場所づくり
・学校、家庭、地域が連携して子どもを支える仕組み
・発達特性のある子どもの「困った行動」の背景を理解する支援
・療育・教育現場の支援者を対象とした研修・講座
・ADHD・ASDなど、子どもの特性に応じた不安の理解と関わり方

講演・研修、保護者支援、地域での居場所づくりなど、実際の取り組みや現場で見えてきた課題を交えながらお話しすることが可能です。

一般社団法人 子育て未来支援
おやとこネスト
代表理事 渡辺眞由美

所在地:名古屋市緑区
TEL:070-8350-5245
E-mail:contact@oyatokonest.or.jp
公式LINE:https://lin.ee/I3iHMtl
ホームページ:https://oyatokonest.or.jp/

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会社概要

URL
-
業種
教育・学習支援業
本社所在地
愛知県名古屋市中区栄2-1-12 ダイアパレス伏見1111
電話番号
070-8350-5245
代表者名
渡辺眞由美
上場
未上場
資本金
-
設立
2025年09月