ブランド体験がメディア化する時代。UGCが自然に生まれる体験設計の条件を、国内外4事例から読み解く
〜ブランドナラティブレポート2026年5.6月号「体験がメディア化する」を公開〜

マーケティング戦略・事業開発コンサルティングを手がける株式会社manage4(本社:東京都目黒区、代表取締役:南坊泰司、以下「manage4」)は、国内外のマーケティング事例・ブランド施策・SNS上の生活者反応をもとにブランドの潮流を読み解くレポート「ブランドナラティブレポート2026年5.6月号」を公開しました。今月のテーマは「体験がメディア化する」です。
「ブランドナラティブレポート」は、manage4が継続的に蓄積している約1,000件の国内外マーケティング事例アーカイブをもとに、個別事例の紹介ではなく、複数事例を貫く生活者変化とブランドの見立てを読み解くレポートシリーズです。
本号の見立て|ブランド体験が"メディア化"する3条件
発信素材を配るのではなく、体験そのものに「語りたくなる構造」を組み込む
1.生活者が自分の関与を感じられること(最後のひと手間=余白を残す)
2.語る必然性があること(場・文脈・体験に投稿する理由がある)
3.共有する相手と文脈が明確であること(拡散量ではなく関係性で設計する)
背景:企業発信だけでは届かない時代へ
ブランドが生活者に情報を届ける方法は、企業発信の広告やキャンペーンだけでは完結しにくくなっています。生活者自身が体験を撮影し、編集し、投稿し、友人やフォロワーに共有することで、ブランド接点そのものが広告媒体のように機能する場面が増えています。
ただし、拡散される体験は単に「映える」だけでは足りません。生活者が「自分が関わった」「自分だけのものになった」と感じられる余白があってはじめて、投稿する理由が生まれます。
今月の見立て:UGCは「投稿依頼」ではなく「体験設計」から生まれる

これまでのUGC施策は、ハッシュタグ投稿やキャンペーン参加を促す形で設計されることが一般的でした。しかし直近の事例を見ると、生活者が自然に撮りたくなる・語りたくなる・誰かに見せたくなる構造を、体験そのものに組み込む動きが目立っています。
重要なのは、生活者を単なる来場者や購入者として扱うのではなく、体験の一部を完成させる「参加者」として位置づけることです。企業が完成品を提示するのではなく、生活者が最後のひと手間を加えることで、体験はその人自身の物語になります。
着目した生活者トレンド
・完成品よりも、自分が関与した体験のほうが共有されやすい
・場所や空間の「違和感」が、投稿したくなるきっかけになる
・SNS 疲れのなかで、限られた相手に残す記録の価値が高まっている
関連事例|国内外4事例
事例1:Gap「コーチェラフーディーハウス」カスタマイズ体験がGoogle検索数5,000%増を生む
概要 Gapは音楽フェス「コーチェラ」で参加型ポップアップ「フーディーハウス」を展開しました。来場者はコーチェラ仕様のパーカーを購入し、ワッペンやデザイン要素を使って自由にカスタマイズできます。開催前にはクリエイターへ限定メーラーを送付し、ティーザー投稿で期待感を醸成。会場ではカスタマイズの過程そのものが撮影機会となり、関連コンテンツは100万回超の視聴を記録、Google検索数は5,000%以上増加しました。
注目ポイント
・完成品を見せるのではなく、来場者自身が仕上げる参加型の仕組みを採用している
・フェスの熱量・限定感・カスタマイズ性が重なり、「投稿する理由」を作っている
・事前ティーザーと現地体験を接続し、来場前から拡散導線を設計している
manage4の見立て 商品そのものよりも「自分で作った」という過程が価値化されている点がポイントです。生活者が自分の手で完成させる余白を持つことで、投稿は宣伝協力ではなく自己表現になります。UGCを生むには、発信素材を用意するだけでなく、生活者が発信者になりたくなる関与の余地を作る必要があります。自分で作る余白がある体験は、宣伝されるのではなく語られる。
引用元:Gap Inc. 公式ニュース
事例2:#FR2「#FR2T・U・C」―換金所跡という「場の違和感」が語りを生む
概要 「#FR2」が神保町で展開する「#FR2T・U・C」は、実際に使われていたパチンコ換金所跡を活用した不定期営業型店舗です。換金所の構造をそのまま活かし、来店者とはガラス越しにやり取りする仕組みを採用。空間は金銀を基調にネオン演出を加え、購入時にはスロット体験を組み込み、「7」が揃った来店者だけが限定アイテムを購入できる仕掛けも導入しています。
注目ポイント
・元換金所という場所の記憶を、ブランド体験の舞台として活用している
・ガラス越し接客により、通常のアパレル店舗にはない緊張感と非日常性を生んでいる
・購入にスロット要素を組み込み、買う行為そのものを参加型体験に変えている
manage4の見立て 空間そのものがメディアになっている事例です。商品を陳列するだけでなく、場所の文脈・接客方法・購入方法までが一体となり、「行ったこと自体を話したくなる」体験を作っています。ブランド接点は売り場ではなく、語られる場として設計され始めています。売り場ではなく語られる場として設計された店舗は、それ自体がメディアになる。
引用元:PR TIMES「#FR2 T・U・C」関連リリース
事例3:群馬県「GUNMA PASSPORT」―ネットミームの公式化が参加熱と行列を生む
概要 群馬県が発行した「GUNMAPASSPORT」は、ネット上で長年親しまれてきた「グンマー帝国」などのミーム文化を行政が公式に取り込んだ施策です。本物のパスポートに近い仕様やスタンプ機能で観光・文化・地域情報を体験化し、初日だけで申請が殺到して受付終了、県庁には2,000人以上が列を作りました。
注目ポイント
・生活者が既に共有している文脈(ミーム)を起点にしたことで、SNS上で自然な拡散と参加熱が生まれている
・「集める」「巡る」体験への転換により、話題化にとどまらず県内回遊やリピーター形成へ接続している
・自虐的に消費されていた文脈を、地域愛というポジティブな物語へ転換している
manage4の見立て 企業や行政がゼロから物語を作るのではなく、生活者の間に既にある文脈に乗ることで、発信が「説明」ではなく「参加」になります。UGCの起点は必ずしも新しい話題である必要はなく、語る言葉を既に持っている生活者に「公式に語ってよい理由」を渡すことでも生まれます。生活者が既に語る言葉を持っているなら、ブランドの仕事は新しい話題を作ることではなく、語ってよい理由を渡すことである。
事例4:Yope「少人数共有×自動コラージュ」―「広く拡散」ではなく「深く共有」する設計
概要 米国を中心にGenZの支持を集めるSNS「Yope」は、特定の相手とだけ写真を共有できる仕組みと、双方の投稿を自動で一枚にまとめるコラージュ機能を特徴とするサービスです。従来のSNSが不特定多数とのつながりや評価指標に重きを置いていたのに対し、Yopeは限られた関係性のなかでの共有に価値を置いています。
注目ポイント
・投稿を特定の相手だけに限定し、公開型SNSよりも心理的ハードルを下げている
・自動コラージュにより、思い出を手軽に一枚の記録として残せる
・評価されるための投稿ではなく、関係性を確認するための共有体験を作っている
manage4の見立て 共有行為そのものの意味が変化していることを示す事例です。生活者は必ずしも広く拡散したいわけではなく、限られた相手と深く共有したい、自然な記録を残したいというニーズも強まっています。UGCを考えるうえでは、拡散量だけでなく「誰と、どのような関係性のなかで共有されるのか」を見る必要があります。UGCの価値は、もはや拡散量では測れない。誰と、どんな関係性のなかで共有されたかが、体験の重みを決める。
事例から見える共通点
4事例に共通するのは、生活者が「見る人」ではなく「体験を完成させる人」として設計されている点です。Gapは来場者がカスタマイズすることで自分だけの体験を作り、#FR2は場所の違和感や購入方法まで含めて来店を語りたくなる出来事に変えました。群馬県は生活者が既に持っていた文脈に公式の物語を重ね、Yopeは共有を「広く見せる行為」から「近い相手との関係を残す体験」へ変えています。
ブランド体験がメディア化する条件は、派手さや話題性ではありません。生活者が自分の関与を感じられること、語る必然性があること、共有する相手と文脈が明確であること。この3点です。
代表コメント
株式会社 manage4 代表取締役 南坊 泰司
「今回の4事例に共通するのは、UGCがもう『お願いして生まれるもの』ではなくなっているという事実です。ハッシュタグ投稿を促したり、発信素材を配ったりする時代から、生活者が自然に語りたくなる体験そのものを設計する時代へと、起点が移っています。
これは小さな変化に見えて、実は責任のありかが変化したことを意味します。UGCが生まれなかったとき、これまでは『生活者が動いてくれなかった』で片付けられました。しかしこれからは、語りたくなる余白を用意できたか、語る必然性を設計できたか、というブランド側の問題になります。
ブランドナラティブは、企業が一方的に語る物語ではありません。生活者が自分の体験として語り直せる構造まで含めて設計されるものです。UGCの成否は、生活者の熱量ではなく、企業の体験設計の精度で決まる。今後のマーケティングは、広告枠を買う発想から、生活者が語り手になる体験をどう設計するかへと、問いそのものが変わっていくと考えています。」
よくある質問(FAQ)
Q1.「ブランドナラティブレポート」とは何ですか?
A. manage4が国内外のマーケティング事例約1,000件のアーカイブをもとに、複数事例を貫くブランドと生活者の変化を「見立て」として読み解き、定期的に発信するレポートです。
本レポートは、以下のような検討に活用できます。
・ポップアップストアやイベント体験の設計
・UGCを前提にしたブランド施策の企画
・店舗・空間・展示のSNS拡散設計
・地域・行政施策における参加型プロモーション
・生活者が語りたくなるブランドナラティブの設計
Q2.過去の事例アーカイブは閲覧できますか?
A. manage4公式サイトの TREND RESEARCH ページ(https://manage4.com/case-study)で事例アーカイブの一部を無料公開しています。
Q3.自社のマーケティングへの活用について相談できますか?
A.可能です。トレンド・事例を用いたワークショップや講義、ブランド体験設計・UGC施策のご支援も承っています。
事例アーカイブのご案内
本レポートのもととなる事例スライドをまとめたページはこちら:TREND RESEARCH(事例アーカイブ)
週に一度、厳選されたトレンドと洞察をmanage4代表取締役自らが発信するニュースレターはこちら:なんぼーのマーケティングアンテナ(ニュースレター登録ページ)
レポート概要
・名称:ブランドナラティブレポート2026年5.6月号「体験がメディア化する」
・発行:株式会社manage4
・対象:マーケティング・広告・PR・ブランド担当者、生活者トレンドに関心のある方
・内容:国内外のマーケティング事例、ブランド・生活者トレンドの見立て、実務への示唆
会社概要
・会社名:株式会社manage4
・代表取締役:南坊泰司
・所在地:〒153-0042東京都目黒区青葉台3丁目18番3号THEWORKS
・事業内容:マーケティング戦略・戦術策定、事業開発コンサルティング、プロモーション制作
・URL:https://manage4.com/
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