【イベント開催レポート】国際ホテルカンファレンス「AHICE Far East Asia」が示した次の市場機会
日本のホテル市場は「質の成長」を追求する新たなステージへ
日本のホテル市場は、新たな成長フェーズを迎えています。9月3日(木)にグランドプリンスホテル高輪で開催されたホテル業界屈指の国際カンファレンス「AHICE Far East Asia 2026」では、国内外の主要ホテルグループ、ホテルオーナー、運営会社、投資家、デベロッパーなどが一堂に会し、地方市場への展開、既存ホテルのコンバージョン、外資系ホテルブランドの拡大、テクノロジー活用、そして収益性の向上を今後の日本市場を形づくる重要なテーマとして位置づけ、白熱した議論を繰り広げました。

日本のホテル市場は稼働率から「単価・収益性」重視へ
ホスピタリティ業界のデータベンチマーキング企業であるSTRのアジア太平洋地域(中国を除く)リージョナルディレクター、マシュー・バーク氏は、日本のホテル市場について、3年間にわたりRevPAR(販売可能客室1室あたりの売上)が2桁成長を続けた後、「日本市場は現在、転換期にある」と指摘しました。
需要が徐々に正常化する中、ホテル事業者の関心は、客室稼働率の向上から、客室単価やレベニューマネジメント、そして収益性の向上へと移りつつあります。
日本の客室稼働率は依然として2019年の水準を下回っているものの、絶対水準では非常に高い稼働率を維持しており、RevPARもコロナ禍前を大きく上回っています。こうした中、今後は売上の伸びをいかに利益につなげるかが、ホテル経営における重要な課題になるとの見方が示されました。

東京・大阪・京都のゴールデンルートだけでなく、成長機会は地方市場に拡大
今回のカンファレンスでは、東京、大阪、京都の「ゴールデンルート」を超えた地方市場の成長が、大きなテーマのひとつとなりました。福岡、北海道・札幌、長野・白馬、沖縄など、各地で新たなホテル開発・投資機会が広がっていることが指摘されました。
パン パシフィック ホテルズ グループのCEO、チョー・ペン・サム氏は、「この3つのゴールデンルート以外にも非常に多くの機会がある」と述べる一方、地方への成長拡大には、国際線を含む航空アクセスと建設コストが課題になると指摘。建設費が大幅に上昇する中、土地を取得してホテルを新築するよりも、既存ホテルを取得し、改修・再生する方が事業性の高いケースが今後増えていくとの見方も示されました。
また、西武・プリンスホテルズワールドワイド 代表取締役社長 社長執行役員の金田佳季氏は、札幌への国際線の拡充とアドベンチャーツーリズム需要の高まりが、北海道のホテル市場にとって大きな成長機会になると指摘しました。
建設費高騰を背景に、コンバージョン・リポジショニングが加速
建設費の高騰、施工会社の供給力不足、開発期間の長期化を背景に、既存ホテルのコンバージョンやリポジショニングへの関心が急速に高まっています。また、地方のリゾートホテル、ライフスタイルホテル、長期滞在型ホテルなどにも新たな投資機会が広がっています。「Japan Development Outlook」のセッションでは、日本のホテルオーナーやデベロッパーの間で、外資系ホテルブランドやグローバルな販売網、ロイヤルティプログラムに対する理解が深まっていることも指摘されました。
BWH HotelsのManaging Director Development Asia PacificのCyrill Czerwonka氏は、建設費の上昇によって、特にアップスケールおよびラグジュアリー分野で、コンバージョンが今後の成長における重要な手段になるとの見方を示しました。
IHGホテルズ&リゾーツ マネージング ディレクター 日本&マイクロネシア アビジェイ・サンディリア氏も、コンバージョンと外資系ブランドの成長に強い勢いがあると指摘しました。

IHGは最近、京都で12軒のガーナーホテルを含む計14軒のホテルポートフォリオを契約。サンディリア氏は、この契約について、IHGのビジネスに対するオーナーからの信頼の高まりを示すものであり、日本全国でコンバージョンブランドを拡大する大きな機会があると述べました。
外資系ホテルブランド、日本市場に大きな成長余地
グローバルホテル各社は、日本における外資系ホテルブランドのさらなる成長に強い期待を示しました。その背景には、他のアジア市場と比較して外資系ブランドの浸透率が低いことに加え、新規ホテル供給が限定的であることがあります。
「Global Demand for Japan」のパネルディスカッションでは、BWH Hotelsが、日本における外資系ホテルブランドの浸透率は約5%で、タイの約25%と比較して大幅に低いと指摘。また、新規供給もアジア太平洋地域全体の平均を大きく下回っているとの見方が示されました。
北海道を拠点とするホテルアドバイザーのMichael Flynn氏は、旺盛なインバウンド需要、安定した国内需要、客室単価の上昇、そして限定的な新規供給が重なる現在の日本市場を、「極めて理想的な市場環境」と表現しました。
ラディソン ホテル グループのAsia Pacific Development Head、Ramzy Fenianos氏も、日本市場はグローバルホテルブランドにとって非常に魅力的な市場であると評価。その一方で、外資系ホテルオペレーターが日本で成長するためには、巨大な国内旅行市場への理解と浸透も欠かせないと指摘しました。
「日本ならではのおもてなし」が競争力に

日本独自のホスピタリティ文化は、国内ホテル事業者にとって大きな競争優位性であるとの意見が相次ぎました。西武・プリンスホテルズワールドワイド 代表取締役社長 社長執行役員の金田佳季氏は、同社が培ってきた日本市場への深い理解とサービスの伝統は、他社が簡単に再現できるものではないとした上で、「日本は、品質、信頼、優れたサービスとホスピタリティ、そして食で知られています」と語りました。
また、同社ではテクノロジーを活用し、ホテル間で宿泊客の嗜好を共有する一方、人材への投資も継続しています。500人を超える新卒社員を採用し、年間離職率を10%未満に維持していることを紹介し、「この業界では、人が違いを生み出す」と強調しました。
AI・テクノロジーは「実験」からホテル運営の実践段階へ
今回のAHICE Far East Asiaでは、テクノロジーとAIも大きなテーマとして議論されました。
ホテルテクノロジー企業やホテル事業者は、宿泊客とのコミュニケーション、レベニューマネジメント、従業員の生産性向上、採用、サービスのパーソナライズ、モバイルアクセス、定型業務の自動化など、ホテル運営における具体的な活用方法について議論しました。
共通して示されたのは、「テクノロジーはホスピタリティに取って代わるものではない」という考え方です。テクノロジーによって煩雑な業務や事務作業を減らし、ホテルスタッフが宿泊客と向き合う時間を増やすことが重要だと指摘されました。
さらに議論は生成AIにとどまらず、ホテル運営の中で実際にアクションを実行するAIシステムやAIプラットフォーム、大規模言語モデル(LLM)が、旅行者によるホテルの検索、比較、予約の方法そのものを変えていく可能性にも及びました。
日本市場は「回復」から次のステージへ
AHICE Global Conferences グループプレジデントのジェームズ・ウィルキンソン氏は、日本のホテル市場をめぐる議論は、すでに「コロナ禍からの回復」という段階を明確に脱したと述べました。

「数年前まで、多くの議論は『海外からの旅行者はいつ日本に戻ってくるのか』というものでした。その問いには、すでに答えが出ています。現在の焦点は、どこにホテルを開発すべきか、コストが高騰する環境の中でどう事業性を確保するか、そしてホスピタリティの人間的な要素を失うことなく、テクノロジーによっていかに生産性を高めるかという点に移っています。日本市場への期待は依然として非常に大きい一方、これから問われるのは、単なる成長の『量』ではなく、成長の『質』です。」
スポーツ、デザイン、ファッションからもホスピタリティを考える
ビジネスセッションに加え、スポーツ、デザイン、ファッションの分野からも多彩なゲストが登壇しました。
元冬季オリンピック日本代表でKamui Resort Directorの三浦豪太氏は、自身の経験を紹介するとともに、ステージ上でスキーのデモンストレーションを披露。Netflixシリーズ『ブリジャートン家』のセットデコレーター、ナタリー・パパジョージアディス氏は、ラグジュアリーホテルのデザインから映画・テレビ業界へと至ったキャリアについて語りました。また、英国発のファッションブランド「AllSaints(オールセインツ)」創業者のスチュアート・トレヴァー氏は、アップサイクル素材で作られた洋服によるショーを行い、ファッションとサステナビリティ、ホスピタリティとの関係について発表しました。

来年9月も引き続き、東京で開催へ
2024年から3年連続で東京カンファレンスを開催しているAHICE Far East Asiaは、2027年9月にも東京で開催されることが決定しました。
ウィルキンソン氏は、「東京は世界中から非常に高い需要を集める素晴らしい都市です。AHICE Far East Asiaが来年9月に東京へ戻ってくことを大変うれしく思います。世界で最もダイナミックでエキサイティングな都市のひとつである東京は、AHICE Far East Asiaのホームです。私たちは東京をホームと呼べることを誇りに思っています」と述べました。
AHICEは、2024年~2026年の3回の実績を基盤に、日本で開催されるホテル業界の国際カンファレンスとして、さらなる成長を目指します。
AHICE について:
AHICEは、2010年に「Australasian Hotel Industry Conference and Exhibition」としてスタートし、現在ではホテル運営と投資をテーマとする国際的な業界イベントへと成長しています。ホテルの所有、投資、開発、ブランド、運営を担うシニアリーダーをつなぐプラットフォームとして、オーストラリア、日本、シンガポール、ニュージーランド、フィジー、モルディブ、ハワイ、ロンドン、ロサンゼルスなどでカンファレンスやサミットを開催しています。AHICEは、The Intermedia Group傘下のTravel Business Mediaが所有・運営しています。
Travel Business Media、The Intermedia Group、HMについて:
Travel Business Mediaは、オーストラリアでB2B出版、デジタルメディア、イベント事業を展開するThe Intermedia Groupの、ホテル、ホスピタリティ、旅行分野を専門とする部門です。「HM」誌、AHICE Global Hotel Industry Conferences、HM Awards for Hotel and Accommodation Excellence、Wayfarer、Design Inn、INN Techなどを展開しています。1997年創刊のHotel Management(HM)は、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋地域、アジアをカバーする宿泊業界の主要専門媒体です。誌面、ウェブサイト、業界向けニュースレターを通じて、ホテル投資・取引、開発、ブランド、運営、観光市場の動向、業界リーダー、テクノロジー、デザイン、政府の政策などについて、業界のシニア層に向けて情報を発信しています。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
