「日本のアート産業に関する市場調査2021」を実施。日本の美術品市場規模は2,186億円。ギャラリーと百貨店で明暗くっきり、全体では3%減。美術品の資産性商品として分析するために、アート指数を提案
今年も6回目となる「日本のアート産業に関する市場調査2021」(主催:一般社団法人アート東京、制作:エートーキョー株式会社)を実施いたしました。約二万人を対象とした購入動向調査により、日本全体の美術品市場規模を2,363億円と推計。昨年からの減少率は約8.4%の減少となりました。これは欧米のアート先進国で20%以上の減少となる中で、限定的な減少幅となりました。
その結果、世界の美術品市場における割合を推計すると、2020年の世界の市場規模(7.0兆円)に対して日本(国内事業者の市場規模・2,270億円)は3.2%と推計されます。
同時に、美術鑑賞と購入の関連性を調査し、展覧会の市場拡大への寄与を検討いたしました。
本調査では、アンケートによる動向調査にとどまらず、過去の美術品の価格動向を調査・分析して、美術品が資産性についても考察いたしました。そして新たに国内アートオークションの売買データを分析し、美術品には、経年による減価するもの(美術工芸品と呼ぶ)、に対して、一定の原資産価値を有し、資産とみなせるものもあることを結論づけました。
第一部①美術品、美術関連品、美術関連サービスの市場規模
アート産業に関する市場規模として、古美術や洋画・彫刻・現代美術などの「①美術品市場」を2,186億円と推計。合わせて、グッズやカタログなどの「②美術関連品市場」が240億円、美術館入場料や日本各地で開催される芸術祭消費額を含む「③美術関連サービス市場」が355億円となり、3つの市場を対象とした総額は推計2,781億円となりました。
図表1.アート産業に関する市場規模の全体像
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2021」エートーキョー(株)・(一社)芸術と創造
第一部②世界の美術品市場における割合
日本の市場規模の世界全体に対する割合について、2019年では3.2%と推計しておりましたが、本調査の前年国内事業者の市場規模である2,363億円について2020年の世界の市場規模(7.0兆円)に対する割合を計算すると3.7%となり、このコロナ禍において減少が限定的だった日本は、世界でのプレゼンスが上昇したと言えます。
図表2 各市場規模の推移
世界の美術品市場調査期間: 2020年1月〜12月
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2021」エートーキョー(株)・(一社)芸術と創造第一部③美術品購入の目的: 高額購入者(3年間で100万円以上)との比較
上述の調査での予測もあったが、全購入者がインテリアやプレゼント目的であるのに対して、高額購入者はコレクション及び作家の支援が目的となっており、高額購入者=コレクター層が順調に成長していることが確認されます。彼らが購入している作品群の今後の値動きによって日本のアートマーケットの成長の方向性が決まります。
図表3 各市場規模の推移
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2021」エートーキョー(株)・(一社)芸術と創造
第二部①試作版アート指数の3作品群の推移
昨年の美術品には原資産価値があるとの証明から、今回は価格データを統計的に分析して市場の状況を把握するための指標をアート指数として提案しました。オークションの価格データの中で売買代金の上位50%の作家をスクリーニングして、年毎・作家群ごとのみなし取得価格を算出しながら、2006年の数値を1000として、「Domestic Art」「Contemporary Art」「Foreign Art」の三つに大別し、算出しました。
図表4 各作品群のアート指数
第二部②試作版アート指数と既存の指数・金融商品との比較 S&P500
試作版アート指数の「Contemporary Art」と株式の代表的な指数である「S&P500」については、強い正の相関が観察されました。2009年以降は上がり調子な点は共通していて、S&P500が先行して2008年、2018年に下がり、後から、2009年と2019年に「Contemporary Art」は下げていました。金融市場に遅行してアート指数が動く特徴が見られました。
図表5 各作品群のアート指数
表1 S&P500と各アート指数の相関係数
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2021」エートーキョー(株)・(一社)芸術と創造
我々は、日本のアート産業市場の実態を正しく把握し、今後のアート産業の拡大に向けて、アート事業者向けにとどまらず、アートコレクターなどユーザーへの有益な情報を提供すべく、今後も継続的に同調査を実施します。マーケティング資料としての動向調査に留まらず、商品としてのアートとして、リスク・リターンを計測するために価格分析やポートフォリオ分析など、今後も分野を広げて調査する所存です。調査結果は、国内外のアート産業関係者を超えて、日本のアートマーケットが今後も成長・拡大していくために必要な信用・信頼を得るために、アートコレクターなどユーザーに対して効果的に活用していただけることを目指します。
第一部基本設計
第二部基本設計
調査概要
日本のアート産業に関する市場調査webサイト:https://artmarket.report/
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