「選ばれる本願寺に」~本願寺執行長就任記者会見~
安永雄彦(やすなが ゆうひこ)本願寺執行長就任記者会見
2022年10月12日、京都 本願寺(西本願寺)の執行長に新しく就任した安永雄彦(やすなが ゆうひこ)が就任会見を行いました。2022年8月28日付で就任した安永執行長は、2015年7月から約7年間、浄土真宗本願寺派の直轄寺院である東京・築地本願寺の宗務長(代表役員)を務めました。 銀行員や経営コンサルタントという過去の職歴を活かして築地本願寺で改革を行 ってきましたが、今後は 、執行長として門信徒、受けて側、皆さんに「選ばれる本願寺」を目指します。
このたび8月28日付で本願寺執行長に就任しました安永雄彦(やすなが ゆうひこ・法名「雄玄」)と申します。
また8月29日には、副執行長として黒田正宣(くろだ まさのり)が、執行に尾井貴童(おのい きどう)が、それぞれ就任し、この3人で本願寺内局を務めて参ります。なお、「内局」とは本願寺の経営を担う組織のことであり、執行長はそのトップということになります。
まず、私の経歴を簡単にお話すると、銀行員として長年務め、その次に経営コンサルタントとして活動していましたが、ご縁がありまして、50歳の時に浄土真宗本願寺派の僧侶として得度しました。その後、宗門の常務委員会常務委員、築地本願寺の評議会評議員となり、色々意見や提案を申し上げていたところ、2015年に築地本願寺の宗務長に任命されました。以来、この7年2か月、築地本願寺の改革に必死に取り組んで参りました。
ここ京都をはじめとする関西はお寺との距離感が近く、日常的な参拝や行事などに接する機会も多い地域柄です。しかし、東京では日本全国から人が移住し、菩提寺やお墓との接点が薄れる人がどんどん増えています。お寺は『葬儀の時だけに行く場所』というイメージであり、2015年当時、築地本願寺でも「寺離れ」は深刻な問題でした。
そこで、築地本願寺では「誰でも入りやすい、入りたくなる理由のある『開かれたお寺』」になることを目標に掲げ、これまで『縁』の無かった人への伝道布教につながる施策を開始しました。東京では“エンディング”つまり「親のお墓をどうするか、自分のお墓をどうするか」などの終活が切実なテーマでもあったため、そこを起点としました。
まず、2017年11月に築地本願寺の境内地下に、「合同墓」という誰でも入れるお墓を作りました。生前契約で、一代限り、継承を前提とせず、過去の宗教宗派も問いません。入会金、年会費は無く、永代使用できて無縁化の心配もありません。お陰様で大きな反響をよび、お骨の保管の設定が3種類ありますが、現在、2種類のお申し込みは受付終了となっています。
同時に、会員組織「築地本願寺倶楽部」を作り、ワンストップで終活サポートを提供したり、仏教や浄土真宗の基本を学ぶ講座に参加できる会員サービスを始めました。2020年からは「築地の寺婚」という名称で結婚相談サービスも始め、まさに人生全般に寄り添うお寺であろうとしています。
それ以外にも、境内にはプロントコーポレーションに運営を委託したTsukiji本願寺カフェを開店させ、すぐ隣の築地場外市場から仕入れた名物が食べられる人気朝食メニューがニュースやSNSで話題となり、従来は築地本願寺にあまりご縁のなかった若い女性たちもたくさん足を運んでくださっています。
また新型コロナウイルス感染症の流行が始まって外出が難しくなった時には、若手職員が率先してオンラインを活用した法話などの配信を企画し、築地本願寺とご家庭をオンラインでつないで行う法事もスタートさせました。お寺として一足早く取り組んだ非接触の仕組みであったため、その当時はTVのニュース番組などにたくさん取り上げて頂きました。
これら施策の積み重ねと職員たちの努力によって、おかげさまで年間参拝者数は新型コロナウイルスが拡がる以前には、5年で2倍となりました。
さて、ここからは本願寺について、お話します。
ここ本願寺は浄土真宗本願寺派の本山であり、信仰の拠点でもあります。もちろん一般の観光客の方々も年間を通じて参拝にお越し頂いていますが、メインは全国に約1万ある浄土真宗本願寺派の寺院が門信徒の方々を伴って訪れ、永世護持、つまり、のちの世まで大切に護っていく寺院であります。
しかし、宗教離れが著しい今の時代、門信徒の方々の高齢化は進み、地方のお寺の存続も難しくなりつつある中、「今までご縁のなかった人を新たに呼び込み、リピーターになっていただくこと」は最重要課題であり、それを解決するには『門信徒創造のためのイノベーション』が必要です。
つまり、従来型の帰敬式など儀式を核とした門信徒へのアプローチだけではなく、Webやクラウドなど今の時代に合わせて、様々なツールを使いこなして新たな伝道布教を行いたいと考えています。それを実現するためには、本願寺として最適な「個人へのアプローチ方法」を見つけなければなりません。京都や奈良の数々のお寺の中から選ばれるよう、例えば本願寺での『国宝体験』などの企画やサービス改善などが求められます。
併せて、本願寺が置かれている現状分析を行い、CRMシステムの導入、各種IT化、情報発信の強化、財政の見直しなどすぐに取り組まねばならない施策は数々あります。しかし、私が独断で何もかも推し進めるつもりではなく、職員と一緒に考えることが大切だと思っています。まずは、この2年間で、お寺そのものの体質を変えていくつもりです。
いままでお話してきた内容について、『今までの本願寺にはありえない、大きなことを持ち込もうとしているのでは?』という印象を持たれた方もいるかもしれません。2015年に私が築地本願寺に就任した当時も、「お寺の運営は企業の経営と違う」と一部から大きな反発がありました。しかし、人口減少や日本人全体の仏教や宗教離れの中で、お寺の存続をどう考えるかは緊急の課題であります。
今日、最初に私は「内局は本願寺の経営を担う組織」と申し上げました。「お寺に経営なんて言葉は相いれない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は「経営」は仏教用語から生まれたものであり、仏教にもなじみ深い概念なのです。銀行などでのビジネス経験のある私が、この度執行長として選ばれたのも、その部分を評価して頂いたものと理解しています。
今後の目標としては、リアルとバーチャル両方で、浄土真宗のみ教えに出遇っていただいたり、本願寺に参拝していただけるような施策を実施し、結果として本願寺に何らかの形で触れてくださる方の数を増やすつもりです。
また、宗派と本願寺では、2023年の3月29日から5月21日まで、5期30日間にわたり、親鸞聖人が浄土真宗のみ教えを説き示してくださったことへの感謝と、そのみ教えに出遇えたことの喜びを込めて、聖人のご誕生をお祝いし、立教開宗に感謝する「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」をお勤めさせていただきます。これは宗門全体にとって大切な法要であり、社会から注目していただけるご縁でもありますので、その計画についても目を通して、今から改善できることがあれば積極的に検討していきます。
本宗門は「自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現に貢献すること」を目指して活動してきました。それは「誰もが幸せになれる社会づくり」のサポートであり、お寺や僧侶にとっての存在意義でもあります。
いまの社会では心に不安を抱えている方も多く、信仰というよりどころを持つこともその不安を解消する一つの選択肢だと思います。1人1人の心に寄り添いながら、み教えをつたえる活動をすることで初めて、お寺を頼ってくださる門信徒になっていただけるのです。いまこそ仏教やお寺がお役にたつ時代でしょう。
お寺が人を選ぶのでなく、選ぶのは皆さんです。皆さんに選ばれる本願寺になるべくこれから邁進してまいります。
また8月29日には、副執行長として黒田正宣(くろだ まさのり)が、執行に尾井貴童(おのい きどう)が、それぞれ就任し、この3人で本願寺内局を務めて参ります。なお、「内局」とは本願寺の経営を担う組織のことであり、執行長はそのトップということになります。
まず、私の経歴を簡単にお話すると、銀行員として長年務め、その次に経営コンサルタントとして活動していましたが、ご縁がありまして、50歳の時に浄土真宗本願寺派の僧侶として得度しました。その後、宗門の常務委員会常務委員、築地本願寺の評議会評議員となり、色々意見や提案を申し上げていたところ、2015年に築地本願寺の宗務長に任命されました。以来、この7年2か月、築地本願寺の改革に必死に取り組んで参りました。
ここ京都をはじめとする関西はお寺との距離感が近く、日常的な参拝や行事などに接する機会も多い地域柄です。しかし、東京では日本全国から人が移住し、菩提寺やお墓との接点が薄れる人がどんどん増えています。お寺は『葬儀の時だけに行く場所』というイメージであり、2015年当時、築地本願寺でも「寺離れ」は深刻な問題でした。
そこで、築地本願寺では「誰でも入りやすい、入りたくなる理由のある『開かれたお寺』」になることを目標に掲げ、これまで『縁』の無かった人への伝道布教につながる施策を開始しました。東京では“エンディング”つまり「親のお墓をどうするか、自分のお墓をどうするか」などの終活が切実なテーマでもあったため、そこを起点としました。
まず、2017年11月に築地本願寺の境内地下に、「合同墓」という誰でも入れるお墓を作りました。生前契約で、一代限り、継承を前提とせず、過去の宗教宗派も問いません。入会金、年会費は無く、永代使用できて無縁化の心配もありません。お陰様で大きな反響をよび、お骨の保管の設定が3種類ありますが、現在、2種類のお申し込みは受付終了となっています。
同時に、会員組織「築地本願寺倶楽部」を作り、ワンストップで終活サポートを提供したり、仏教や浄土真宗の基本を学ぶ講座に参加できる会員サービスを始めました。2020年からは「築地の寺婚」という名称で結婚相談サービスも始め、まさに人生全般に寄り添うお寺であろうとしています。
それ以外にも、境内にはプロントコーポレーションに運営を委託したTsukiji本願寺カフェを開店させ、すぐ隣の築地場外市場から仕入れた名物が食べられる人気朝食メニューがニュースやSNSで話題となり、従来は築地本願寺にあまりご縁のなかった若い女性たちもたくさん足を運んでくださっています。
また新型コロナウイルス感染症の流行が始まって外出が難しくなった時には、若手職員が率先してオンラインを活用した法話などの配信を企画し、築地本願寺とご家庭をオンラインでつないで行う法事もスタートさせました。お寺として一足早く取り組んだ非接触の仕組みであったため、その当時はTVのニュース番組などにたくさん取り上げて頂きました。
これら施策の積み重ねと職員たちの努力によって、おかげさまで年間参拝者数は新型コロナウイルスが拡がる以前には、5年で2倍となりました。
さて、ここからは本願寺について、お話します。
ここ本願寺は浄土真宗本願寺派の本山であり、信仰の拠点でもあります。もちろん一般の観光客の方々も年間を通じて参拝にお越し頂いていますが、メインは全国に約1万ある浄土真宗本願寺派の寺院が門信徒の方々を伴って訪れ、永世護持、つまり、のちの世まで大切に護っていく寺院であります。
しかし、宗教離れが著しい今の時代、門信徒の方々の高齢化は進み、地方のお寺の存続も難しくなりつつある中、「今までご縁のなかった人を新たに呼び込み、リピーターになっていただくこと」は最重要課題であり、それを解決するには『門信徒創造のためのイノベーション』が必要です。
つまり、従来型の帰敬式など儀式を核とした門信徒へのアプローチだけではなく、Webやクラウドなど今の時代に合わせて、様々なツールを使いこなして新たな伝道布教を行いたいと考えています。それを実現するためには、本願寺として最適な「個人へのアプローチ方法」を見つけなければなりません。京都や奈良の数々のお寺の中から選ばれるよう、例えば本願寺での『国宝体験』などの企画やサービス改善などが求められます。
併せて、本願寺が置かれている現状分析を行い、CRMシステムの導入、各種IT化、情報発信の強化、財政の見直しなどすぐに取り組まねばならない施策は数々あります。しかし、私が独断で何もかも推し進めるつもりではなく、職員と一緒に考えることが大切だと思っています。まずは、この2年間で、お寺そのものの体質を変えていくつもりです。
いままでお話してきた内容について、『今までの本願寺にはありえない、大きなことを持ち込もうとしているのでは?』という印象を持たれた方もいるかもしれません。2015年に私が築地本願寺に就任した当時も、「お寺の運営は企業の経営と違う」と一部から大きな反発がありました。しかし、人口減少や日本人全体の仏教や宗教離れの中で、お寺の存続をどう考えるかは緊急の課題であります。
今日、最初に私は「内局は本願寺の経営を担う組織」と申し上げました。「お寺に経営なんて言葉は相いれない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は「経営」は仏教用語から生まれたものであり、仏教にもなじみ深い概念なのです。銀行などでのビジネス経験のある私が、この度執行長として選ばれたのも、その部分を評価して頂いたものと理解しています。
今後の目標としては、リアルとバーチャル両方で、浄土真宗のみ教えに出遇っていただいたり、本願寺に参拝していただけるような施策を実施し、結果として本願寺に何らかの形で触れてくださる方の数を増やすつもりです。
また、宗派と本願寺では、2023年の3月29日から5月21日まで、5期30日間にわたり、親鸞聖人が浄土真宗のみ教えを説き示してくださったことへの感謝と、そのみ教えに出遇えたことの喜びを込めて、聖人のご誕生をお祝いし、立教開宗に感謝する「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」をお勤めさせていただきます。これは宗門全体にとって大切な法要であり、社会から注目していただけるご縁でもありますので、その計画についても目を通して、今から改善できることがあれば積極的に検討していきます。
本宗門は「自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現に貢献すること」を目指して活動してきました。それは「誰もが幸せになれる社会づくり」のサポートであり、お寺や僧侶にとっての存在意義でもあります。
いまの社会では心に不安を抱えている方も多く、信仰というよりどころを持つこともその不安を解消する一つの選択肢だと思います。1人1人の心に寄り添いながら、み教えをつたえる活動をすることで初めて、お寺を頼ってくださる門信徒になっていただけるのです。いまこそ仏教やお寺がお役にたつ時代でしょう。
お寺が人を選ぶのでなく、選ぶのは皆さんです。皆さんに選ばれる本願寺になるべくこれから邁進してまいります。
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