「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2022」結果(受験編①)について
今回は調査結果より、障害学生の在籍状況、受験可否・受験時条件、受験時の配慮の概要についての状況を中心に公表します。
調査の概要
・本調査は、障害学生の受験に関するさまざまな障壁の中の一つである進学情報を得る負担を少しでも軽減し、障害者の自立と社会参加を促進するための情報提供を目的に 1994 年に開始され、今年で 28 年目、のべ 14 回目となります。障害をもつ受験生や大学で学んでいる障害学生が必要としている情報について質問や選択肢を作成し実施しています。
・当センターでは、本調査に対する回答を「大学としての総意である正確な事実である」という前提で『大学案内2024障害者版』(書籍) および「大学案内障害者版 Web情報サービス」を通じて、大学ごとに情報提供する目的のものです。
調査期間
2022年6月13日(月)~2022年12月5日(月) 本調査の基準日 2022年5月1日
調査機関 一般社団法人全国障害学生支援センター(自社調査)
調査対象
調査対象は2022年4月現在の全国すべての、学校教育法に基づく大学(学生の募集を停止している大学を除く)、放送大学、および文部科学省所管外大学校。819 校(大学 809 校・大学校 10 校)の全数調査
調査方法
当センターのWebサイトにログインし、回答入力画面に回答を記入いただきました。
回答状況
種別 |
調査対象数 |
回答数 |
回答率% |
前回比 |
大学① |
809 |
388 |
48% |
1pt |
国立 |
86 |
41 |
48% |
0pt |
公立 |
98 |
65 |
66% |
3pt |
私立 |
625 |
282 |
45% |
0pt |
大学校② |
10 |
1 |
10% |
0pt |
合計(①+②) |
819 |
389 |
48% |
1pt |
回答数は389校で、回答率は 48%でした。前回調査より8校増えました。
※回答率とは、ある項目の回答数を回答大学数389で割った数(率・%)です。
※前回比とは、前回と今回の回答率の差(ポイント・pt)です。
※表中の▲は「マイナス」の意味です。
調査結果について
このプレスリリースでは調査結果より特徴的なものを抜粋しています。結果の全体は下記のリンクよりご覧ください。(情報誌・障害をもつ人々の現在119号 ISSN 1883-1532)
https://www.nscsd.jp/Activities/DaigakuAnnai/pdf/Chosa2022juken_J119.pdf
在籍状況について
障害種別 |
大学(校) |
率 |
前回比 |
人数 |
増減 |
平均(人) |
視覚障害 |
115 |
30% |
1pt |
380 |
⇧ |
2.6 |
聴覚障害 |
175 |
50% |
0pt |
866 |
⇩ |
4.9 |
盲ろう |
1 |
0% |
▲1pt |
1 |
⇩ |
1.0 |
肢体障害 |
184 |
59% |
▲1pt |
586 |
⇩ |
3.2 |
内部 |
201 |
52% |
3pt |
2267 |
⇧ |
11.3 |
発達障害 |
241 |
62% |
0pt |
3382 |
⇧ |
14.0 |
精神障害 |
238 |
62% |
8pt |
5031 |
⇧ |
21.1 |
知的障害 |
30 |
8% |
2pt |
56 |
⇧ |
1.7 |
重複障害 |
131 |
34% |
▲1pt |
818 |
⇧ |
6.2 |
その他の障害 |
108 |
28% |
0pt |
612 |
⇧ |
5.7 |
障害種別不明 |
21 |
5% |
0pt |
102 |
⇧ |
4.9 |
合計 |
299 |
77% |
▲2pt |
14101 |
⇧ |
47.2 |
障害学生の在籍がある大学は299校に達し、回答数の77%で前回比2ポイント減っています。在籍者の総数が1万4千人を超えました。また、障害学生が在籍する一大学あたりの障害学生の数が、平均47.2人であり、前回調査と比べ大幅に増えました。
受験可否について
受験可否は当センターが独自の定義に基づいて調査しています。
受験可 |
大学に障害学生から問い合わせがある前の段階(まだ大学に障害学生から問い合わせがない段階)で、該当する障害種別の障害学生を受け入れることを決定している状態。 |
受験可否未定 |
大学に障害学生から問い合わせがあり、該当する障害種別の障害学生の状況をみて、受験をみとめるかどうか判断している状態。 |
今回の受験可否の調査結果および過去からの推移は以下の通りです。
受験可 |
受験可否未定 |
|||||
障害種別 |
数 |
率 |
前回比 |
数 |
率 |
前回比 |
視覚 |
174 |
45% |
▲3pt |
215 |
55% |
3pt |
聴覚 |
192 |
49% |
▲3pt |
197 |
51% |
3pt |
肢体 |
197 |
51% |
▲3pt |
192 |
49% |
3pt |
発達 |
198 |
51% |
▲3pt |
191 |
49% |
3pt |
内部 |
192 |
49% |
▲7pt |
197 |
51% |
7pt |
精神 |
183 |
47% |
▲2pt |
206 |
53% |
2pt |
知的 |
163 |
42% |
▲2pt |
226 |
58% |
2pt |
・受験可否の状況について前回との比較でみると、すべての障害で受験可が減っています。2016年4月の差別解消法施行にともない、一度は大きく上昇した受験可ですが、その後は下落し続けています。
・障害別でみると、視覚や知的障害の受験可が他の障害に比べて少ない状況が、依然として続いています。ただしその差は縮ってきています。発達障害と知的障害を比較してみると、9ポイント程度の開きがみられます。
受験可否未定理由
視覚障害 |
|||
可否未定理由(複数回答可) |
数 |
率 |
比 |
事前協議後検討 |
201 |
52% |
3pt |
統一見解なし |
26 |
7% |
▲1pt |
試験ノウハウがない |
17 |
4% |
0pt |
教職員側の態勢未整備 |
22 |
6% |
0pt |
キャンパス設備の問題 |
19 |
5% |
0pt |
合格しても受け入れられない |
5 |
1% |
0pt |
その他 |
8 |
2% |
0pt |
・プレスリリースでは視覚障害を例に上げました。受験可否未定の大学にその理由を尋ねてみると、どの障害種別でも「事前協議後に対応を検討するから」がもっとも多くなっています。障害学生が「事前協議」で受験出来るかどうかが左右されるという実態は依然として変わっていません。
受験時の条件
プレスリリースでは肢体障害を例に上げました。肢体障害の受験時条件については「入試時自分で身辺処理」が22校、「入学後は自分で身辺処理」が14校といった厳しい条件を付ける大学があります。
肢体障害 受験時の条件 |
回答数 |
率 |
前回比 |
肢体障害 受験時の条件 |
回答数 |
率 |
前回比 |
事前相談 |
204 |
52 |
▲1pt |
入学後の補助者 大学は関与なし |
6 |
2% |
0pt |
診断書の提出 |
126 |
32% |
1pt |
大学は事故責任なし |
5 |
1% |
0pt |
障害者手帳コピーの提出 |
88 |
23% |
2pt |
誓約書の提出 |
4 |
1% |
0pt |
入試時自分で身辺処理 |
22 |
6% |
1pt |
入学後大学で配慮なし |
1 |
0% |
0pt |
入学後は自分で身辺処理 |
14 |
4% |
0pt |
解答不可能な問題の減点 |
0 |
0% |
0pt |
試験変更なし |
14 |
4% |
0pt |
健康診断受診 |
0 |
0% |
0pt |
新設備設置・購入なし |
11 |
3% |
0pt |
その他 |
22 |
6% |
0pt |
・どの障害についてもいえることですが、障害学生は受験時に必要な配慮について考えるだけでも、一般の学生に比べて時間と労力を要します。そのような状況下で、まだ入学が決まらない前の段階で、入学後についての配慮を認めないに等しい条件を付けられたり、誓約書を求められることはあってはならないことです。
受験時の配慮の概要
受験時の配慮 |
配慮あり |
率 |
前回比 |
視覚障害 |
261 |
67% |
0pt |
聴覚障害 |
274 |
70% |
▲1pt |
肢体障害 |
272 |
70% |
0pt |
発達障害 |
238 |
61% |
2pt |
精神障害 |
225 |
58% |
2pt |
内部障害 |
245 |
63% |
▲11pt |
受験時配慮の調査結果では、視覚障害・聴覚障害・肢体障害で前回比とほんほとんど変化が見られませんでした。
内部障害については「配慮あり」が前回比でマイナス11ポイントと大きく減少しました。前回調査までは「配慮あり」の場合、内容の詳細については自由回答でした。今回の調査から他の障害と同様「配慮あり」の場合、試験時間・試験室・出題方法・解答方法等の詳細について、配慮選択肢のチェックが必須となりました。配慮有無の前回比が大きく変わったのはこのことが影響していると思われます。
大学案内障害者版 Web情報サービス
このプレスリリースで紹介しているデータのほとんどの項目は、大学案内障害者版 Web情報サービスにて公開しています。このサービスを利用すると、各項目にどこの大学が回答しているか分かります。お申し込みは、以下のURLからアクセスしてください。
https://www.nscsd.jp/Activities/Johoteikyo/
調査結果の今後の分析
毎年の調査結果につきましては当センター機関誌『情報誌・障害をもつ人々の現在』(ISSN 1883-1532)にて公表しています。今回の分析は119号(2023年3月29日発行)に掲載しております。
今後の予定としましては、7月1日発行の機関誌ででは、受験時配慮の詳細についての分析を掲載する予定です。また10月・12月も授業での配慮等の調査分析を掲載予定です。
『情報誌・障害をもつ人々の現在』(ISSN 1883-1532)
https://www.nscsd.jp/Activities/Johoshi/
『大学案内2024障害者版』
本調査の大学ごとの回答の詳細は『大学案内2024障害者版』で公表しております。書誌情報の概要は以下の通りです。
2023年2月1日発売 A4版608ページ 定価 本体6,000円+税 (障害学生割引 本体3,000円)ISBN978-4-9911821-3-6 ※当センターは消費税を頂いておりません。
詳細は前回のプレスリリースをご覧ください。
PRTimesプレスリリース「2月1日 新刊『大学案内2024障害者版』発売」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000112752.html
※当センターについての概要、過去の受賞歴なども掲載されています。
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