9割の保護者が今の保育サービスに満足。『子どもの保育 大規模実態調査』
さらなる充実に向けては有料サービスや教育支援を望む声もあり。調査期間:2024年2月5日(月)~ 2月7日(水)
厚生労働省によると、2023年に生まれた子どもの数は過去最小の75万8631人となっており、出生数も8年連続の減少を記録。今後もさらなる少子化が予想されています。
少子化の進行は、子育てに難しさを感じる方が増えていることも一因であると考えられています。そんな中当社では、2022年4月に立ち上げた「NISSAYペンギンプロジェクト」を通して、子育てに取り組む全ての方々と子どもたちの未来をサポートしています。
今回は本プロジェクトの一環として、子育てと保育の現状と課題を明らかにし、今後の取り組みに役立てるため、全国の保護者と保育所で働く方を対象に『子どもの保育 大規模実態調査』を実施しました。
NISSAYペンギンプロジェクトでは今回の調査の結果も参考にしながら、子育ての壁や不安を取り除き、子育てしやすい社会を実現するための取り組みを進めてまいります。
調査概要
調査タイトル:子どもの保育 大規模実態調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:2024年2月5日(月)〜2月7日(水)
回答者①(保護者):20〜59歳の男女(6歳以下の子どもと同居、保育所に子どもが通園)
回答者②(保育所):20〜59歳の男女(現在保育所で勤務している方)
回答者数:回答者①=1,911名、回答者②=1,000名
※本調査内容を転載される場合は、出典が日本生命保険相互会社であることを明記くださいますよう、お願いいたします。
※保育所について、認定こども園も含んでおります。
調査サマリー
1. 既存保育サービスの満足度と必要性
┗ 9割以上の保護者が、ほぼ全ての既存保育サービス・イベントに満足と回答。
┗ 保護者は「食」を中心とする基本的な生活と関わる部分で満足感を得ている。
┗「文字や算数の学習」「英語学習」など、学習の必要性について保護者と保育所の間にひらきが見られた。
┗ 保護者-保育所のコミュニケーションについては、オンライン化が望まれる。
2. 新規保育サービスの活用意向と導入意向
┗ 保護者、保育所共に「卒園アルバム作成」の導入を望む声多数。
┗ たとえ有料でも活用したい保育サービスは「保育中の習いごと」がトップ。
┗ 世帯年収800万円と400万円未満では、平均投資可能額に1.8倍以上の差。
3. 子育てで負担に感じること
┗ 負担に感じることトップは「急な体調不良の業務調整」。
┗ 負担に感じる家事・育児の外部委託率は1%未満。
4. 自治体に望むサービスやサポート
┗ 保護者、保育所双方が「金銭的な支援や日常的な利便性向上に関するサービス」を自治体に期待。
┗ 保育所でのさらなるサービス充実化に向けては保育現場での業務効率化が必要。
1.既存保育サービスの満足度と必要性
Q.保育所で現在実施している既存保育サービスについて、どの程度満足されていますか。(保護者)
Q.あなたは現在実施していない以下の既存保育サービスについて、どの程度必要だと思いますか。(保護者)
Q.あなたは現在実施していない以下の既存保育サービスについて、どの程度必要だと思いますか。(保育所)
・9割以上の保護者が、ほぼ全ての既存保育サービス・イベントに満足。 現在実施されているほぼ全ての既存保育サービス・イベントにおいて、保護者の9割以上が満足と回答する結果となりました。中でも一番満足度が高くなったサービス・イベントは「手作り給食/おやつ」(96.9%)で、「食育(料理)」(96.7%)、「給食/おやつのアレルギー対応」(96.4%)で続きます。 ・子どもの健康、体力作りに関わることに必要性を感じる保護者多数。 保育所で現在実施されていない既存保育サービス・イベントについて、「体育・スポーツ」(88.4%)が必要と感じている保護者が最も多く、「給食/おやつのアレルギー対応」(86.4%)、「食育(料理)」(83.7%)が続く結果となりました。 ・「文字や算数の学習」「英語学習」など、学習の必要性について保護者と保育所の間に大きなひらき。 保育所側の調査では「オートロック等の、施錠対策」(88.9%)を必要とする回答が最も多く、「園庭」(84.8%)が続く結果となりました。また、保護者と保育所間で特に必要意向のひらきが大きかったのは「文字や算数の学習」 と「英語学習」です。いずれも保護者側が保育所側より40ポイント以上高くなっています。このひらきについて、保育所側は園児にとって安心安全な環境づくりを最優先とする一方で、保護者は保育そのものに加えて、付加価値として保育所側に教育サービスへのニーズを抱いていると考えられます。 |
Q.保育所で現在“実施されている”サービス(写真・緊急連絡網・連絡帳・園だより等)について、どの程度満足されていますか(保護者)
Q.保育所で現在“実施されていない”サービス(写真・緊急連絡網・連絡帳・園だより等)について、どの程度必要だと感じていますか(保護者)
・保護者-保育所のコミュニケーションは、オンライン化が望まれる。 保護者側への調査では、紙媒体での提供もオンラインでの提供も一定程度高い満足度が見られるものの、特に連絡帳については紙媒体での満足度(78.4%)よりもオンラインの満足度(92.2%)が高い結果となりました。また、今現在導入されていない方法(紙orオンライン)のうち、写真・緊急連絡網・連絡帳・園だよりのすべてでオンライン提供の必要性が紙媒体よりも20ポイント以上高い結果となりました。同様の質問を保育所側にも行ったところ、保育所側へのアンケートの写真・緊急連絡網・連絡帳・登園欠席連絡・園だよりの提供方法について「紙媒体」での提供の改善余地が、「オンライン」と比較して10ポイントから20ポイント高くなっています。これらの結果から、保護者-保育所間のコミュニケーション方法は、オンラインの方が望まれていると考えられます。 |
2.新規保育サービスの活用意向と導入意向
Q.あなたは以下の新規保育サービスについて活用してみたい、または活用してみたかったと思いますか。(保護者)
・「卒園アルバム」が、最も活用してみたい新規保育サービストップ。 「卒園アルバム作成」や「英語で保育」等の新規保育サービスについて、「すでに導入されている」と回答した保護者は1割未満であり、まだまだ普及していないことが明らかとなりました。また、これらの新規保育サービスがまだ導入されていないと回答した保護者の中で、活用したいと回答した割合が最も多かったサービスは「卒園アルバム作成」(77.4%)となりました。「保育中の習いごと(⺠間の企業と提携)」(74.0%)、「病児保育併設」(71.5%)、「英語で保育」 (71.2%)が続きます。 |
Q.「とても活用したい」「やや活用したい」と回答されたサービスについてお伺いします。以下のサービスが保育所で有償提供される場合、ひと月あたりまたは一回あたり最大いくらまでなら支払って利用したいと思いますか。ご自分のお気持ちにあてはまるものをお知らせください。(保護者)
・たとえ有料でも活用したい保育サービスは「保育中の習いごと」がトップ。 たとえ有料でも活用したい保育サービスについて、「保育中の習いごと(⺠間の企業と提携)」(84.0%)と回答した保護者の割合が最も多い結果となりました。次に「卒園アルバム作成」(84.0%) 、「夕食用の保育所給食の販売サービス」 (80.9%)、「病児保育併設」(80.8%)が続きます。 ・世帯年収が高いほど、投資可能額が上昇する傾向。 ひと月あたり投資可能額の調査でも、「保育中の習いごと」(1,951円)が最も高い金額となりました。「英語で保育」(1,601円)、「小学校受験対策」(1,485円)が続きます。また、1回あたり投資可能額の調査では、「卒園アルバム作成」(1,892円)が最も高く、「ベビーシッター、家事代行サービスの斡旋、紹介」(1,244円)、「病児保育併設」(1,159円)が続く結果となりました。 ・世帯年収800万円と400万円未満では、平均投資可能額に1.8倍以上の差。 世帯年収別の平均投資可能額について、ひと月あたりの平均投資可能額は800万円以上が「1,784円」、600〜800万円未満が「1,203円」、400〜600万円未満が「989円」、400万円未満が「766円」となりました。一回あたりの平均投資可能額については、800万円以上が「1,303円」、600〜800万円未満が「1,059円」、400〜600万円未満が「835円」、400万円未満が「676円」となるなど、いずれの場合でも世帯年収が高いほど平均投資可能額が上昇する傾向にあります。 |
Q.あなたは、以下の新規保育サービスを導入してみたいと思いますか。ご自分のお気持ちにあてはまるものをお知らせください。(保育所)
Q.「とても導入したい」「やや導入したい」と回答されたサービスについてお伺いします。以下のサービスの導入を検討する場合、何か障がいとなるものはありますか。あてはまるものをお知らせください。(保育所)
・保護者、保育所共に「卒園アルバム作成」の導入を望む声多数。 保育所側が導入したいと思う新規保育サービスの調査では、「卒園アルバム作成」(43.5%)の導入意向度が最も高く、 「おむつ・おしりふきを保育所が準備」(41.8%)、「保育所着・エプロン・タオルのレンタルサービス」(31.1%)が続く結果となりました。 ・保育所と保護者の間で、新規サービスの導入意向と活用意向にギャップも。 「保育中の習いごと」(27.4%)、 「英語で保育」(21.8%)、「こども食堂の併設」(18%)、 「学童の併設」(21.6%)、 「病児保育併設」(23.6%)については、保護者の活用意向と比較すると40ポイント以上も保護者の活用意向が高くなっています。保護者はこうした新規サービスにメリットを感じる一方で、保育所側としてはこれらが保育所内の施設ではないということもあり、すぐに導入を判断することが難しいといった現状もあることが考えられます。 ・新規保育サービスの導入障壁は、「保育所だけでは提供できない」「人員の不足」「資金負担の問題」 新規保育サービスを保育所側が導入できない理由として、「卒園アルバム作成」は、「資金負担の問題」、「人員の不足」。「おむつ・おしりふきを保育所が準備」は、「資金負担の問題」「保育所だけでは提供できない」。「保育所着・エプロン・タオルのレンタルサービス」は、「資金負担の問題」、「保育所だけでは提供できない」 などの理由が挙げられました。 |
3.子育てで負担に感じること
Q.以下の子育てに関する家事や育児について、あなたはどの程度負担を感じていますか。ご自分のお気持ちにあてはまるものをお知らせください。(保護者)
Q.前問で「大変負担を感じている」「やや負担を感じている」と回答された家事や育児についてお伺いします。負担を感じている子育てに関する家事や育児について、あなたは外部サービスに委託したいと思いますか。ご自分のお気持ちにあてはまるものをお知らせください。(保護者)
・家事・育児の外部委託率は1%未満。 子育てで負担に感じることについて、「急な体調不良の業務調整」(72.6%)が最も多く、「夕飯準備」(69.8%)、「掃除、片付け」(64.0%)が続く結果となりました。外部に委託したいと思う家事・育児については「急な体調不良の業務調整」(58.8%)が最も多く、次に「≪登園≫保育所に到着してからの準備」(58%)、「子どもの遊び相手」(53.5%)が続きます。一方で、いずれの高負担家事・育児も「すでに委託している」と回答した保護者は1%未満。どの家事・育児についても、ほとんど外部委託はされていない状況が明らかとなりました。 |
4.自治体に望むサービスやサポート
Q.今後自治体に実現が期待される以下のサービスについて、あなたはどの程度実現することを期待されますか。ご自分のお気持ちにあてはまるものをお知らせください。(保護者)
Q.今後自治体に実現が期待される以下のサービスについて、あなたはどの分野のサポートを期待されますか。ご自分のお気持ちにあてはまるものをお知らせください。(保育所)
・保護者、保育所双方が「金銭的な支援や日常的な利便性向上に関するサービス」を自治体に期待。 自治体に期待する新規保育サービスとして、保護者側では「教育費支援」(81.4%)が一番多い結果となりました。その次に「子育て・保育所関係書類の電子化」(78.8%)、「市区町村役所のオンライン窓口化」(78.5%)が求められる結果となりました。また保育所側では「補助金支援」(76.0%)を自治体に望む声が最も多い結果となり、「休暇取得支援」(69.1%)、「IT支援」(64.1%)が続く結果となりました。保護者・保育所の双方で、金銭的な支援や日常的な利便性向上に関するサービスで期待度が高い様子が伺えます。 ・保育所でのさらなるサービス充実化に向けては保育現場での業務効率化が必要。 本調査内『2.新規保育サービスの活用意向と導入意向』では、各新規保育サービスの導入障壁について、「資金面での課題」や「人員不足」といった声が保育所側から上がる結果となりました。社会や保護者からの期待も大きい「保育サービスの充実化」については、そうした導入障壁を乗り越える業務効率化とセットで取り組むべきであり、行政からの支援もその一助となることが考えられます。 |
調査の結果を受けて
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員 久我 尚子(くが なおこ)
「食事や食育への満足度が非常に高い」ことは、保育所の大きな特徴のひとつと言えるでしょう。調査結果を見ると、「手作り給食/おやつ」や「食育(料理)」などへの保護者の満足度は、認可保育所や認証保育所、認定こども園といった保育所の種類によらず、いずれも9割を超えています。また、これらは保育所側の改善の余地があるサービスとして見ても順位が低く、日頃から力を注ぎ、自信を持って提供している様子がうかがえます。
一方、「園庭」は改善余地のあるもののトップで、保護者の満足度も低い傾向がありますが、これは保育所による違いも影響しているのでしょう。認可保育所は、国や自治体の基準をクリアしているため、園庭や施設の広さに余裕がありますが、大都市の認証保育所などは駅前に設置されていて利便性は高い一方、園庭がないこともあります。とはいえ、近隣の公園や学校などを上手く活用していることが多いため、何を優先したいのかを念頭に施設を検討すると良いでしょう。また、子どもの年齢によっても優先事項は変わるものです。
「文字や算数の学習」や「英語学習」といった学習関連の必要性について、保護者(7割以上)と保育所側(3割前後)で大きなひらきがあることも印象的でした。昔から、保育所は子どもの生活のケア、幼稚園は学習という印象が強いようですが、保育所にも学習機能が求められる時代となっています。背景には、共働きが増えて 平日に子どもの習い事に通えない家庭が増えていることや、親世代では進学率が高まり、仕事の上でグローバル化やIT化に対峙する機会が増えていることがあげられます 。事実、都市部を中心にネイティブ講師による英語環境での保育や、そろばん教室などの知育を売りとする保育所も増えているようです。ただし、教育への投資可能額には世帯年収による差が大きいため、施設側ではサービス内容を吟味する必要があるでしょう。
子育ての負担については、子どもの体調不良による仕事の調整のほか、食事や掃除などの家事で高く、外部への委託希望も半数を超えていましたが、実際に委託している割合はごくわずかでした(1%未満)。希望と現実にギャップのある背景には、「母親が子どもの面倒を見るべき」といった昔ながらの価値観が根強くあることや、経済的余裕の無さ、供給不足といった要因があるのでしょう。
昨年から政府は「こども未来戦略」にて、児童手当の拡充といった経済支援の強化や、社会の構造・意識改革(女性のワンオペ育児ではなく夫婦で協力、職場の応援、地域社会での支援)などを推し進めていますが、これらの効果が浸透し、出生率の低下に歯止めがかかることを強く期待したいものです。
NISSAYペンギンプロジェクトについて(https://www.nissay.co.jp/kaisha/penguin/)
2022年4月に始動した「NISSAYペンギンプロジェクト」では、グループ会社一体となって子育ての壁や不安をなくす商品・サービスを拡充していくとともに、子育てについて考えるきっかけとなる情報発信等を通じて、賛同いただける企業・社会を巻き込み、次代を担う子どもたちが安心して暮らせる仕組みづくりや心の健全育成に向けた取り組みを拡げています。
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