生活困窮世帯3,503世帯の収支を調査。
通信費は総務省家計調査平均より単身の生活困窮世帯の方が5,000円以上高い調査結果も。
日本もったいない食品センターでは日本における生活困窮世帯の自立支援につながる抜本的な解決への参考にしていただきたく、2024年3月1日~2025年2月28日まで当団体に寄せられた支援要請3,503件を集計しました。
当団体は食品ロス削減と生活困窮者支援活動をおこなうNPO法人で、その活動原資の獲得や支援活動ハブ拠点の拡大として小売店「食品ロス削減ショップecoeat」を日本各地で運営するとともに、ウェブサイトから希望される方を対象に食料品を無償で配送または店頭で受取できる食料品支援を実施しています。2017年2月法人認可後よりこの活動を継続的に実施し、支援を申請される方が日々増加を続け2024年3月よりこの集計を開始しました。
このレポートでは「生活困窮世帯がどのような収支で生活しているか」を焦点に、単身世帯・ひとり親世帯・障がいや介護を伴う世帯のそれぞれの収支状況をまとめています。
貧困の状況を1997年と比較(厚生労働省:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況)すると貧困線が22万円下がっているにも関わらず、相対的貧困率は0.8%上昇している中、物価上昇は相対的貧困の定義には当てはまらない困窮も浮き彫りにしています。
本調査では、生活困窮世帯の自立支援につながる抜本的な解決への参考にしていただきたいと考えています。
調査の概要
調査時期:2024年3月1日~2025年2月28日
調査方法:https://www.mottainai-shokuhin-center.org/support/ より送信された支援要請を集計
調査対象: 3,503件
調査結果の概要
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当団体に支援を依頼される生活困窮世帯の50.5%が相対的貧困に該当する世帯となっている
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食費においては総務省家計調査から計算するエンゲル係数と生活困窮世帯の食費割合では大きな差異は無いが、エンゲル係数の高い世帯と低い世帯の二極化が激しいと言える
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光熱費においては総務省家計調査上の金額と生活困窮世帯に大きな差異は無いが、生活困窮世帯では支出に占める割合が大きく、家計の負担となっていることと言える
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通信費においては総務省家計調査より生活困窮世帯の方が高い金額を支払っている
相対的貧困に該当するかどうかは可処分所得と世帯人数によって決定するが、一方で支出過大の問題もあり、抜本的な解決には給付ばかりではなく家計管理の指導が必要と言える
生活困窮世帯の収入
当団体のアンケートでは収入の有無と、収入が有る場合は手取りの金額をお尋ねしています。
単身世帯・ひとり親世帯・障がいや介護を伴う世帯ではそれぞれ次のような結果となりました。

単身世帯:収入は平均116,584円
単身の生活困窮世帯では5万円~13万円の収入であるケースが多く、1,084世帯中719世帯、66.3%の世帯が5万円~13万円の収入で生活していることがわかりました。
ひとり親家庭:収入は平均173,798円
ひとり親家庭の生活困窮世帯では20万円以下の収入であるケースが多く、655世帯中477世帯、72%の世帯が20万円以下の収入で生活していることがわかりました。
ひとり親家庭で25万円以上の収入がある生活困窮世帯は78世帯あり、その世帯人数はそれぞれ
世帯人数2名:9世帯
世帯人数3名:22世帯
世帯人数4名以上の多子世帯:47世帯
25万円以上の収入があるひとり親家庭も60%以上は世帯人数が4名以上の多子世帯であることがわかりました。
障がいや介護を伴う世帯:収入は平均146,835円
障がいや介護を伴う世帯では5万円~16万円の収入であるケースが多く、512世帯中324世帯、63.2%の世帯が5万円~16万円の収入で生活していることがわかりました。
等価可処分所得
可処分所得は厚生労働省によると「所得から所得税、住民税、社会保険料、固定資産税・都市計画税及び自動車税等を差し引いたものであり、「所得」はいわゆる税込みで、「可処分所得」は手取り収入に相当する。」とあり、申告ベースの情報ではありますが当団体のアンケートフォームに記入された収入×12が可処分所得に相当すると考えます。また、等価可処分所得とは「可処分所得÷√世帯人数」で算出され、貧困線や相対的貧困率の算出に使用される所得です。
厚生労働省の2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況によると等価可処分所得の中央値は254万円で貧困線は127万円ですので、ひとり親家庭については等価可処分所得の平均は貧困線を超えない数値となりました。
当団体へ支援要請をされた生活困窮世帯の等価可処分所得は次のような結果となりました。

単身世帯:等価可処分所得は平均1,399,009円
単身世帯1,084世帯中520世帯が等価可処分所得127万円以下の世帯。
48.5%が相対的貧困に該当
ひとり親家庭:等価可処分所得は平均1,233,634円
ひとり親家庭655世帯中356世帯が等価可処分所得127万円以下の世帯。
54.3%が相対的貧困に該当
障がいや介護を伴う世帯:等価可処分所得は平均1,289,948円
ひとり親家庭511世帯中270世帯が等価可処分所得127万円以下の世帯。
52.8%が相対的貧困に該当
生活困窮世帯全体としては2,171世帯中1,098世帯が等価可処分所得127万円以下の世帯。
50.5%が相対的貧困世帯に該当しました。
支出
当団体のアンケートでは生活の基礎支出として住居費、通信費、光熱費、食費の金額をお尋ねしています。
単身世帯・ひとり親家庭世帯・障がいや介護を伴う世帯ではそれぞれ次のような結果となりました。

いずれの世帯でも住居費は大きな乖離は無いものの、光熱費、通信費、食費は単身世帯に比べてひとり親家庭世帯・障がいや介護を伴う世帯では高い傾向が見られました。
合計支出としては単身世帯とひとり親家庭世帯では25,000円以上の差があることがわかりました。
エンゲル係数
エンゲル係数は家計の消費支出にしめる食料費の比率を表すもので、総務省の「家計調査」では生活の基礎支出である住居費・通信費・光熱費・食費の他、教育費・教養娯楽費・被服費・保健医療費の合計を消費支出としています。一般にエンゲル係数が低いほど生活水準が高いとされています。
当団体では教育費・教養娯楽費・被服費・保健医療費を集計しておらず、エンゲル係数そのものではないものの、それに類する係数として生活困窮世帯における生活の基礎支出から食費の比率を集計しました。
ここでは「食費割合」と表現します。

総務省「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)結果の概要」では総世帯の消費支出は平均247,322円、食料費は71,719円とされており、エンゲル係数を計算すると28.9%となります。
当団体に支援依頼を寄せられた生活困窮世帯の食費割合は平均28.05%となり、内訳は以下のようになります。
単身世帯:食費割合は平均27.12%
ひとり親家庭:食費割合は平均29.60%
障がいや介護を伴う世帯:食費割合は平均28.56%
総務省統計のエンゲル係数と生活困窮世帯の平均的な食費割合を比較したところ、大きな差異は見られませんでした。ただし、生活困窮世帯の食費割合はグラフの形がお椀のような形状になっており、エンゲル係数が低い世帯と高い世帯に大きく分かれることがわかりました。
住居費や光熱費に家計が圧迫され食費が不足し支援を要請する家庭と、食費への支出が多く家計が厳しくなり支援を要請する家庭に二極化しているような状況と言えます。
光熱費版 エンゲル係数
エンゲル係数が消費支出にしめる食費の割合を示すものであることに対し、光熱費の割合を表すものは今のところ存在しないようですのでひとまず「光熱費版 エンゲル係数」と表現します。
それに類似する係数として当団体が生活困窮世帯における生活の基礎支出から光熱費の比率を集計したものを「光熱費割合」と表現します。
光熱費は食費ほどコントロールが効きませんが、節約以外にも電力会社の変更といった方法が出てきたことで電力自由化以前よりも費用を調整しやすくなっています。

総務省「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)結果の概要」では総世帯の消費支出は平均247,322円、光熱・水道費は19,867円とされており、光熱費版 エンゲル係数を計算すると8.0%となります。
当団体に支援依頼を寄せられた生活困窮世帯の光熱費割合は平均18.70%となり、内訳は以下のようになります。
単身世帯:光熱費割合は平均17.28%
ひとり親家庭:光熱費割合は平均20.07%
障がいや介護を伴う世帯:光熱費割合は平均19.64%
総務省統計の光熱費版 エンゲル係数と生活困窮世帯の平均的な光熱費割合を比較したところ、10%以上の大きな差異がありました。
生活困窮世帯の光熱費割合は単身世帯では8%近辺の総務省統計に近い集団もありますが、3,200世帯中2,841世帯、88%の世帯が総務省統計平均を上回る結果となりました。
また、総務省統計総世帯の光熱・水道費19,867円を超える世帯は3,378世帯中1,362世帯、40.3%が該当しました。今後、生活困窮世帯への自立支援は光熱費の抑制、平準化が大切になってくるものと推考します。
通信費版 エンゲル係数
エンゲル係数が消費支出に占める食費の割合を示すものであることに対し、通信費の割合を表すものも今のところ存在しませんでした。同じようにここではひとまず「通信費版 エンゲル係数」と表現します。
それに類似する係数として当団体が生活困窮世帯における生活の基礎支出から通信費の比率を集計したものを「通信費割合」と表現します。

総務省家計調査2023総世帯によると総世帯の消費支出は平均247,322円、通信費は10,310円とされており、通信費版 エンゲル係数を計算すると4.1%となります。
単身世帯:通信費割合は平均13.13%
ひとり親家庭:通信費割合は平均13.12%
障がいや介護を伴う世帯:通信費割合は平均13.56%
総務省統計の通信費版 エンゲル係数と生活困窮世帯の平均的な通信費割合を比較したところ、10%近い大きな差異がありました。
生活困窮世帯3,094世帯中1,112世帯、35.9%の世帯が生活の基礎支出の内、14%以上を通信費が占めることがわかりました。
通信費
生活困窮世帯の通信費の額については次のような結果となりました。

総務省家計調査2023単身世帯、総務省家計調査2023二人以上の世帯によると
単身世帯の通信費の支出は6,610円
二人以上の世帯の通信費の支出は12,195円
となっており、当団体に支援依頼を寄せられた生活困窮世帯の通信費の平均とは大きな開きがあることがわかりました。

総務省 家計調査 |
生活困窮世帯 |
|
単身世帯 |
6,610円 |
11,624円 |
二人以上の世帯 |
12,195円 |
16,780円 |
単身世帯においては総務省家計調査の平均より5,000円高くなっており今後、生活困窮世帯への自立支援は通信費の抑制、平準化が大切になってくるものと推考します。
生活困窮者の生計を立て直す支援を
当団体は「地域の食品ロスゼロ」と「地域の食に関する困窮ゼロ」(当団体呼称:ゼロゼロ活動)を目指して活動しております。食料品支援においては全ての要請に対して支援を実行できるわけでありません。
ヒアリングや審査を経て実行可否を判断するものになりますが、当団体で実施している支援は食料品の配送または手渡しという方法によるもので、一時的な支援の意味合いが強く抜本的な解決には結びつかないケースがほとんどです。
本調査は生活困窮世帯の自立支援につながる抜本的な解決へとつなげていきたい想いがあります。
例えば生活困窮する単身世帯の通信費は11,624円と総務省家計調査(6,610円)より5,014円高く出ています。
一方、生活困窮の単身世帯の食費は平均24,707円となっており、5,014円は6日分の食費に相当する金額です。
光熱費についても同様のことが言え、生活困窮世帯は収入が低いことだけが原因ではなく、家計管理にも起因することが大きいと言えます。
本来はこのようなライフスタイルの改善を伴う支援が望ましいため、様々な企業・団体様とともに生活支援に取り組んで生活を立て直すことができればと考えております。
生活困窮世帯における光熱費や通信費の削減を通じた自立支援などにご関心がある事業者様を募集しています。
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