ミュンヘン再保険会社、「2024年上半期の自然災害に関するレポート」を発表

激しい雷雨と洪水が自然災害による損害の主要因

ミュンヘン再保険会社

【2024年8月27日】世界最大手のミュンヘン再保険会社(本社:ドイツミュンヘン、日本:東京都千代田区、代表:フロリアン・グルソン)は、「2024年上半期の自然災害に関するレポート」を発表しました。

-         壊滅的な洪水、深刻な暴風雨、2つの地震により、経済損失額は約1,200億ドルとなった。

-         世界全体の保険損害額620億ドルは、10年平均の370億ドルを大幅に上回る。

-         自然災害に関連した死者数は過去数年に比べ減少。       

-         経済損失額の68%、保険損害額の76%の要因は、激しい雷雨と洪水や森林火災。

「上半期の損害統計は、北米を中心として再び気象関連の自然災害が目立っています。さらに、ドバイなどの地域では極めて珍しい洪水が発生しています。この傾向には気候変動が影響している可能性が極めて高いと考えられます。気候変動に伴うリスク変化には、社会、経済、保険業界等のすべてが適応する必要があり、それによって気象災害による損害の拡大が軽減されます。」

トーマス・ブルンク 取締役会メンバー

気象学、保険引受、社会経済学のデータに基づく長期傾向分析によれば、異常気象から生じるリスクは変化しています。気象災害の頻度と激しさが増すにつれ、保険会社への保険金請求額も増加しています。

  

数字で見る2024年の自然災害

  

世界全体の2024年上半期損害額1,200億ドルは、2023年の1,400億ドルを下回りましたが、前年はトルコとシリアの大地震に関連した大損害があるため、2024  年上半期の経済損失額をより長期で比較すれば、過去 10  年および30 年の平均値を大きく上回っています。

  

保険損害額は前年比微増となる600億ドルとなり、過去10年と30年の平均値(インフレ調整後:370億ドル/240億ドル)を大幅に上回りました。特に、保険金請求額の中で激しい雷雨、洪水、森林火災などの所謂「ノン・ピーク・ペリル」の占める割合が再度高くなりました。経済損失額の68%、保険損害額の76%がこれらの自然災害によるものです。

  

2024年上半期に最も損害の大きかった自然災害

  

上半期で最も損害額が大きかった自然災害は、元旦に能登半島付近で発生したマグニチュード7.5の地震です。数多くの建物が倒壊し、数千人が何週間も停電や断水状態に置かれ、死者数は200人を超えました。推定経済損失額は100億ドルに達し、保険損害額は約20億ドルとなりました。

  

日本は、自然災害に対して十分な備えができているとされています。災害発生時には、耐震工法、高度な早期警報システム、しっかりとした緊急対応戦略などの予防策によって、多くの人命を救うことが可能となります。

  

米国の激しい雷雨シーズン

  

米国では、激しい雷雨が上半期損害統計の主要因となりました。米国海洋大気庁(NOAA)は1月から6月にかけて、長期平均の820件を大きく上回る1,250件の竜巻を記録しました。

  

上半期時点では、2024年の激しい雷雨による損害額450億ドルが過去4番目に大きな年となっており、このうち340億ドル以上が保険による補償を受けました。昨年の上半期経済損失額は約520億ドルで、うち400億ドルが保険損害額でした。

  

史上最高水準となった世界の気温

  

世界の平均気温は、1月から6月にかけて産業革命前の水準よりおよそ1.5℃上昇しました。科学界は、単年の温暖化が1.5℃以上であっても、パリ協定の目標未達にはならないと主張していますが、気温の上昇傾向に止まる気配はありません。上半期の平均気温は、世界のほぼ全域で異常に高かっただけでなく、世界各地で記録的な高温が報告されました。

  

例えば、6月中旬にはサウジアラビアの複数地域で気温が50℃を超え、インド・ニューデリーでは5月に49.9℃の記録的な高温となりました。アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、2024年が1850年以降で上位5番以内に入る暑い年となり、60%の確率で史上最も暑くなると予測しています。

  

熱波と干ばつは、熱中症の死者を増やすだけでなく、森林火災の可能性も高めます。テキサス州では、州史上最悪の森林火災により、スペイン領マヨルカ島の面積に相当する40万ヘクタール以上を焼き尽くしました。5月には、カナダ西部で季節外れの大規模な森林火災が発生し、数千人が避難を余儀なくされました。いずれも人口密度の高い都市や工業地帯には影響が及ばなかったため、大きな損害にはなりませんでした。

  

高い海水温とラニーニャ現象により ハリケーン活動が強まる可能性

  

北大西洋では、各種指標が引き続き厳しいハリケーン・シーズンを示唆しています。気候変動は海水温を非常に高くする主要因で、ハリケーン形成に必要なエネルギーを供給します。加えて、自然のサイクルであるエルニーニョ/南方振動(ENSO)は、この発生確率に影響を与えます。昨年は、ハリケーンの発生を制限する傾向があるエルニーニョ現象が目立ちましたが、それでも名前の付いた20の嵐が発生し、これまでで4番目に活発なハリケーン・シーズンとなりました。今年は、エルニーニョ現象の抑制効果が期待できず、北大西洋の非常に高い水温が、ハリケーンの発生を助長します。海面水温は、30年平均を0.5℃から1.0℃上回る記録的な高温が続く見込みです。この2つの要因が重なれば、より多くのハリケーンが北大西洋で発生する可能性があります。

  

ミュンヘン再保険会社の気候変動責任者であるアーンスト・ラウチは次のように述べています。「気象データに関する統計の変化は、一層明確な兆候を示しており、最近観測された記録的な気温の多くは、気候変動なしには説明できません。大気は、温度が1度高くなると7%多く水蒸気を含むことが出来るようになり、極端気象現象や大雨の原因となります。ミュンヘン再保険会社は、リスクに関する業界最先端の専門知識に基づいて、自然災害関連リスクを大きな規模で取り扱うことが可能であり、その基礎は最初の気象学者を雇用した 50 年前に遡ります。」

  

地域別概要  

北米と南米

  

例年通り、上半期の激しい雷雨によって発生した竜巻と雹は、北米が全世界の損害額で高い割合を占める要因となりました。 地域全体の経済損失額は  600 億ドルに達し、そのうち  440 億ドルが保険による補償を受けました。

  

激しい雷雨に加え、年初の厳しい冬の天候も数十億ドルの損害をもたらしました。ほぼすべての州で暴風雨警報が発令された他、北極気団が記録的な最低気温と大雪をもたらし、数多くの停電、道路閉鎖、飛行機の遅延を招きました。2,500以上の地域で最低気温の記録が更新されました。南部州では、長引く豪雨と雪解けが重なり、テキサス州とルイジアナ州の一部で洪水が発生し、1月は過去10年間で最も雨の多い月となりました。

  

南米ではブラジルが4月と5月に大洪水に見舞われました。ブラジル南部のリオグランデ・ド・スール州では、11日間にわたって420mmもの大雨が降り続き、深刻な地滑りと洪水が発生しました。建物が倒壊し、橋や道路が破壊された他、181人の死者が出ました。英国の面積に相当するこの地域の90%以上が水没し、過去80年間で最悪の洪水災害となりました。経済損失額は70億ドルと推定され、上半期世界第3位の自然災害となりました。保険による補償を受けたのは約20億ドルでした。

  

欧州

  

ドイツは5月に激しい嵐と洪水に見舞われ、地域によっては数日の間に135ミリの降雨がありました。それまでの数ヶ月間の降水量が平年を大幅に上回っていたため、土壌は飽和状態で雨水をほとんど吸収することができず、多くの河川が堤防からあふれ、小川は激流となりました。いくつかの河川は各地で最高警戒レベル(4)に達しました。最も損害が大きかったのはドイツ南部の洪水で、経済損失額は50億ドルに上り、そのうち保険損害額は22億ドルでした。

  

この原因は、所謂 「ジェノヴァ低気圧」と呼ばれる低気圧によるものです。このタイプの低気圧では、地中海北西部からの暖かく湿った空気がアルプス山脈を越えて北上し、特にアルプス山脈の北側や中央ヨーロッパの北側で激しい雨や嵐をもたらします。研究者たちによれば、気候変動が進むにつれて、このような気象現象が降水量を一層増加させることになります。

  

アジア太平洋とアフリカ

  

数十億ドルの損害を出した日本での1月の地震に続き、4月には台湾の花蓮付近でも地震が発生しました。このマグニチュード7.3の地震は、1999年以来、この地域で最悪の災害となりました。経済損失額は46億ドルで、そのうち保険による補償を受けたのはわずか8億ドルでした。

  

同じ月に、アラブ首長国連邦、オマーン、およびその近隣諸国などで起こった、異例の大洪水が世界中のメディアの注目を集めました。ドバイでは過去75年間で最大の豪雨を記録しました。別の研究では、エルニーニョに加えて、気候変動が気温の上昇と大気中の水分の増加をもたらし、この豪雨を助長したと結論付けています。ドバイ国際空港では、1,500便以上が遅延またはキャンセルとなりました。この地域全体の経済損失額は83億ドルと推定され、そのうち保険損害額は28億ドルでした。

  

中国の広東省などでは、大雨により深刻な洪水が発生しました。住宅、道路、橋が破壊され、少なくとも50億ドルの莫大な経済損失が発生しましたが、保険による補償を受けたのはごく一部でした。気候変動が進むにつれ、アジア、北西欧州地域、米国北東部など、世界の多くの地域で集中豪雨の頻度と激しさが増すと科学界は予想しています。

  

ケニア、タンザニア、ブルンジ、ソマリアを始めとする東アフリカでは、数カ月にわたって季節風による雨が降り続き、多くの洪水が発生しました。さらに、5月には熱帯低気圧「ヒダヤ」と「イアリー」がこの地域を襲い、被害を拡大させました。死者数は283人に達し、50万人近くがこの地域から避難しました。

2024年上半期、アジア太平洋とアフリカ地域の自然災害による経済損失額は400億ドルとなりました。慢性的に大きな補償ギャップにより、これらの損害のうち保険による補償を受けたのはわずか90億ドルでした。経済損失額、保険損害額ともに過去10年間の平均を上回り、 それぞれ290億ドル、41億ドルとなりました。

【注】 本プレスリリースは2024年7月31日、ドイツで発表された内容をもとに作成したものです。

    

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ミュンヘン再保険会社(Munich Re)

ミュンヘン再保険会社は、再保険、元受保険、保険関連のリスクソリューションを提供する世界最大手の再保険会社です。同グループは、再保険事業、ERGO事業、および資産運用会社MEAGで構成されています。ミュンヘン再保険会社の活動は全世界にわたり、あらゆる保険分野でビジネスを展開しており、1880年の創業以来、他に類を見ないリスクに関する専門知識と健全な財務体質で知られています。ミュンヘン再保険会社は、その強みを活かして、顧客の事業ニーズと技術的な進歩を支援しています。さらに、ロケット打ち上げ、再生可能エネルギー、サイバーリスク、人工知能などの新たなリスクに対する補償も開発しています。2023年度は、579億ユーロの保険収益と46億ユーロの純利益を生み出しました。2023年12月31日現在、全世界の従業員数は約43,000人となっています。

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会社概要

URL
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業種
金融・保険業
本社所在地
東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー13階
電話番号
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代表者名
フロリアン・グルソン
上場
未上場
資本金
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設立
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