日本と開発途上国に貢献し続ける事業の詳細が分かる一大イベント 第1回 「JICA国際協力賞」授賞式を開催
世界最悪レベルの治安だった地区の劇的な改善にも貢献、ドバイ国際賞の受賞につながった事例も
JICA(独立行政法人国際協力機構)(理事長:田中明彦)は、1975年以降、JICAの協力を通じて開発途上国の社会と経済の発展に貢献し、著しい功績を収めた個人・団体に対し、JICA理事長表彰を授与してきました。今年度から、表彰の名称をJICA国際協力賞に改め、外部委員の選考により受賞者を決定することとなりました。第1回目となる今年、傑出した成果を上げた3個人・団体が受賞しました。
11月8日(金)、JICA本部にて「第1回JICA国際協力賞」の授賞式を開催しました。
「信頼で世界をつなぐ」を体現する功績を田中明彦JICA理事長が称賛
授賞式の冒頭、田中明彦JICA理事長は、JICAのビジョンである「信頼で世界をつなぐ」を体現する活動を行ってきた受賞者の功績を讃えました。また、受賞者が取り組んできた、都市における住環境改善やコミュニティ再生、脆弱な環境にある子ども達の教育、若者の雇用創出や人材育成といった課題は、日本の国際協力の柱である「人間の安全保障」の根幹にかかわるものであると強調し、現在世界が直面している複合的危機を克服し、人々の人間の安全保障を守るための開発協力の重要性について述べました。
また、選考委員を代表し、近藤哲生委員(前UNDP駐日代表・京都大学特任教授)から受賞者及び受賞理由(※)の詳細が発表されました。今年は日本がODAによる国際協力を始めて70周年の節目の年です。近藤委員は、「JICA国際協力賞に推薦された案件は、いずれも素晴らしい取り組みばかりで、日本の国際協力のこれまでの蓄積の厚みを実感した」と述べ、本賞が、開発途上国や日本で地道な努力を続けている方々の活動が世界中の人々に知られ、世界の課題解決の一助となることを祈念しました。
ODA70周年の節目の年 各受賞者が活動への想いを語る
受賞者紹介と賞状・記念品贈呈に続き、各受賞者がスピーチを行いました。以下、要旨を紹介します。
【中南米都市・地域計画家協会 会長 アウグスト ピント カリージョ氏】
「2000年、帯広でJICAの土地区画整備の研修に参加したのがきっかけ。日本の都市計画・開発への知見を深めるとともに、日本国内の大都市における土地開発整備プロジェクトの成功例を学んだ」
「本研修で学んだ中南米地域の他国の帰国研修生らも巻き込み、ネットワークを立ち上げ、2024年に中南米都市・地域計画家協会として生まれ変わった。日本の経験を中南米地域に広めるという目標を達成。人に優しく、持続可能でスマートな都市のあり方について考えるとともに、人々の生活向上のためにこれからも活動を続けたい」
【NGOスランガニ 馬場繁子代表】
「協力隊として初めてスリランカに来てから37年間、スリランカの子どもたちが成長できる環境を整えることが大人の役割であり、自分にできることと思いながら活動してきた」
「幼稚園や病院、貧困家庭の子どもたち、障害者の子どもたちを対象に、彼らが社会とつながり、自立することを支援。これからも多くのスタッフや支援者たちとともに、誠実に生きる人々を応援し、子どもたちやスリランカの未来のために、希望を広げていきたい」
【国立大学法人宮崎大学 鮫島学長】
「2017年に開始したB-JET(Bangladesh-Japan ICT Engineers’ Training Project)が発端。バングラデシュの若く優秀なICT人材の雇用促進と、宮崎のICT人材不足の解消を目指す、win-winのプロジェクトを目指したもの」
「コロナ禍でも宮崎市や啓林館などパートナーと協力しながら事業を継続。地域の国際化や多文化共生の機運醸成に貢献でき光栄」
【宮崎市長 清山市長(※代理)】
「人材受入の地元企業への補助金や、バングラデシュから来日した方々が宮崎市での生活になじめるよう、市民との交流や生活情報の提供などで支援。皆さん優秀で熱心な人材であると、受入企業からも高い評価をいただいている。引き続き両国の発展につながるような支援を継続したい」
(※)各受賞者の受賞理由は以下のとおりです:
中南米都市・地域計画家協会(会長 アウグスト ピント カリージョ氏)
(受賞理由)
中南米地域は、気候変動や自然災害による脆弱性にさらされるとともに、人口上昇と都市化のただ中にある。「中南米都市・地域計画家協会」は、中南米14か国の中央省庁職員・自治体職員・コンサルタント・大学教員等、多様な人材を擁するプラットフォームとして、それぞれの強みを生かしつつ自律的、持続的な活動を展開している。喫緊の課題となっている中南米の都市問題について、先進的な取り組みを共創・牽引していくことが今後も期待されている。日本で学んだ土地区画整理をコロンビアの都市計画に生かすだけでなく、中南米諸国14か国にも手法が波及し、制度化に向けた取り組みが進められていることは、JICA国際協力賞にふさわしく高く評価する。
馬場 繁子氏(NGOスランガニ・代表)
(受賞理由)
スリランカでは国民の多くが教育、健康、災害、生活水準など複数の脆弱性を抱えている。経済危機の影響で子どもたちの教育も深刻な状況にある中で、馬場繁子氏は設立したNGO「スランガニ」を通して、30年以上に渡り、貧困層や障害のある児童も含む脆弱な環境にある子ども達のための学習環境の整備支援、幼稚園教諭への研修など幼児・児童教育に貢献してきた。また、自身のJICA海外協力隊員としての活動実績を生かし、JICA海外協力隊員と共同で活動を行い事業効果の向上を図ってきたことも高く評価する。
国立大学法人宮崎大学(本事業の中核機関)/宮崎市/株式会社新興出版社啓林館/ノースサウス大学/株式会社BJIT/株式会社教育情報サービス(KJS)
(受賞理由)
バングラデシュは、世界第8位の人口を有し、生産年齢人口が上昇している有望な新興国である一方、とりわけ若者の雇用の創出、人材の育成を通して所得の底上げを図ることも課題となっている。この取り組みは、バングラデシュ及び日本において、多様なパートナーとともに人材育成を進める取り組みとして高く評価された。既に日本とバングラデシュとのビジネス展開を支援する体制が構築されており、今後宮崎以外の地域にも本モデルが展開し、より持続的な取り組みとなる潜在性も期待されており、JICA国際協力賞にふさわしい。
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