【第3回】お茶が内包する「新しい公共性の美学」
規律と利他、内省と調和が交差する場所に、持続可能な経済の器を置く
二つの世界が、私の中で響き合う
私自身のこれまでの歩みは、大きく分けて二つの異なる強烈な規律によって形づくられてきました。
一つは、16歳から身を置いていたアメリカンフットボールという、激しくも極めて緻密なスポーツの世界です。150人近い巨大な組織のなかで、一人ひとりがチームの勝利という目的のために徹底的な規律を持ち、利他の精神で自分の役割を全うする。その、個の調和がもたらす圧倒的な組織の美しさに、私は魅了されてきました。
そしてもう一つが、生まれ故郷である和束の地、そして留学を経て再び向き合うことになった、日本茶が内包する「茶の湯」の世界です。そこにあるのは、喧騒から離れた極小の空間のなかで、静かに自分自身の内面と対話し、他者との調和を重んじる「内省」の規律です。

一見すると、激しい体育会の世界と、静謐な茶の世界は対極にあるように見えるかもしれません。しかし私の中では、この二つは「個の我(エゴ)を排し、全体や未来のために自らを調律する」という点で、深く、等しく繋がっています。
既存のモノサシを超えて
サンフランシスコへの留学や、ニューヨーク、東京での投資・コンサルティングの現場を経験するなかで、私は現代の経済を力強く牽引する「短期的な急成長(Jカーブ)」や「時価総額の極大化」を目指すスタートアップの評価軸に深く触れてきました。それらは社会を前進させる素晴らしいエンジンです。
しかし、その一軸のモノサシだけで日本茶の伝統や土地の価値を測ろうとすれば、数百年、数千年の時間をかけて磨かれてきた職人技や、人間の精神を静かに調律する文化の本質は、効率の悪さとして削ぎ落とされてしまいます。
私は、既存の急成長モデルを否定したいわけではありません。その強力な経済の仕組みを正しくリスペクトし、ファイナンスの規律をベースに持ちながらも、その中に「利他・規律、内省・調和」という日本発の精神性を、静かに、しかし強固に両立させたいと考えています。
一過性のブームとしてお茶を大量に売り抜けるゲームではなく、50年、100年先へこの美しい文化と土地を残すための、もう一つの確かな循環の構造を創り出すこと。それこそが、私の掲げる『新しい公共性の美学』です。
50年先へ、持続可能な関係性をデザインする
WMATCHA & CO. が目指すのは、単にお茶というプロダクトを消費してもらうことではありません。 伝統を博物館に閉じ込めるのではなく、先人が遺してくれた精密な設計に対する継承者としての愛着を、現代の、そして海外の文化都市の人々へも届く言葉でシームレスに翻訳していくことです。
買い手がお茶をただ受動的に消費して終わる関係から、その背景にある物語や徹底的な透明性に共感し、文化の持続可能性を共に支える「参加者」へと変わっていく。そのような人間の心理的決意と、健全な経済の循環が交差する居場所を、私たちは作ろうとしています。
既存のスタートアップの基準にそのまま当てはめようとすれば、この思想と数値のバランスに、生みの苦しみや葛藤が生まれることは事実です。 それでも、私たちはこのスタンスを崩しません。なぜなら、50年先の未来のこの土地が、美しく、本質的な価値を愛する人々によって守られ続けているために、今この瞬間に誰かがこの器(構造)を作らなければならないと、覚悟を決めているからです。
急成長の時間軸と、50年先へ繋ぐ精神性の時間軸。この二つを重ね合わせる私たちの挑戦において、ただ枠にハマるのではない、本質的な資本政策を共に描いていける財務プロフェッショナルや、同じ地平を見つめる共鳴者との出会いを、私たちは強く求めています。
WMATCHA & CO.合同会社
ウェブサイト:https://linktr.ee/wmatchaco
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