日本の豊かな深海生物の多様性が明らかに
JAMSTECとOcean Censusの共同探査の成果を発表
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設立パートナーである公益財団法人日本財団が、海洋研究の加速を支援
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日本および海外の研究者が、探査を通じて海洋の生態系の解明に取り組む
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探査を通じて、新種38種を発見し、新種候補28種の存在を確認
Nippon Foundation-Nekton Ocean Census(英国、ディレクターOliver Steeds、以下Ocean Census)は、本日、国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和裕幸、以下JAMSTEC)と共同で実施した新海探査の結果を発表しました。本調査は、日本で未だ深海生物の研究が比較的進んでいないとされる南海トラフと七曜海山列の海底を対象に、2025年6月に実施されました。その結果、新種38種が特定され、さらには新種の可能性が高い28種の存在も確認されました。本探査を通じて確認された多毛類、甲殻類、腹足類、二枚貝類、棘皮動物、ヒモムシ類などを含む新種は、日本の深海には依然として膨大な未発見種と豊かな生息環境が広がっていることを示しています。
本探査は、JAMSTECの深海潜水調査船支援母船「よこすか」および、有人潜水調査船「しんかい6500」を用いて実施され、528ロットを超える生物標本を採集しました。すべての標本は記録・撮影・保存され、今後の形態および分子解析への活用が見込まれています。同探査を踏まえて2025年秋にJAMSTECで開催されたワークショップでは、国内外の分類学者が新種および新種候補の分類・同定作業を行い、今後の学術論文の発表に向けた調整が進められました。
日本財団の常務理事である海野光行は、次のように述べています。「南海トラフおよび七曜海山列での発見は、海洋が多くの可能性を秘めていることを示唆しています。日本財団は、このようなミッションを支援することで、人類全体にとって新たな知のフロンティアを切り拓いています。一つひとつの新種の発見は、海洋に関する理解を促進し、価値を認識し、海洋そのものの保護に寄与します」
本探査における主任研究員である矢吹彬憲氏は、次のように述べています。「この度の探査とその成果は、日本が海洋科学において非常に先進的であることを示しています。深海探査には長期的なコミットメントと世界最高水準の技術が不可欠であり、日本はその分野を推進する国の一つとして認識されています」
主な探査結果① 南海トラフ:冷湧水域の調査により深海の生物多様性が5倍に増加
探査航海中に実施された大規模な新たな研究により、東京の南西約500〜600kmに位置する日本有数の地質活動が活発な深海域である南海トラフにおいて、既知の生物多様性が5倍に増加したことが明らかになりました。本研究は、JAMSTECのCHEN Chong博士の主導の下、探査チームが参加して実施されました。冷湧水域では14種の生物種が確認されていましたが、探査を通じて80種の生物種を記録し、同水域でこれまで実施された探査で最も包括的な生物学的調査となりました。
南海トラフにおける探査に関する論文(英語)はEcosphere誌で発表され、以下のリンクより無償で閲覧できます:
https://doi.org/10.1002/ecs2.70451
同研究により記録された冷湧水関連生物80種の内訳:
● 軟体動物33種(巻貝、二枚貝、ケハダウミヒモ類などを含む)
● 環形動物23種(ゴカイ類などを含む)
● 節足動物11種(カニ、エビ、ヨコエビ類などの甲殻類)
● 紐形動物5種(ヒモムシ類)
● 棘皮動物4種(ヒトデ、クモヒトデ、ナマコなど)
● 刺胞動物3種(スナギンチャク、イソギンチャク、ヒドロ虫)
● 苔虫類1種(コケムシ類)
また、本研究では分布域の拡大、新たな国内記録種、これまで知られていなかった種間関係も多数確認され、南海トラフにおける生物多様性の豊かさが明らかになりました。
主な探査結果② 七曜海山列:新種と希少な海綿共生の発見
東京の南東約500〜700km沖に位置する七曜海山列は、北西太平洋に連なる海底火山群です。これまで、これら遠隔地の海山の多くは生物の研究が進んでいませんでした。この度のOcean CensusとJAMSTECが共同で実施した深海探査において、「しんかい6500」を用いた研究チームは本地域での生物潜航調査を行い、新たなサンゴ群集や高密度に海綿が広がる海底などの豊かな生態系を発見しました。
今回の潜航では、月曜海山において確認された大型のガラス海綿が、特定のゴカイ類にとって生物学的に重要な役割を担っていることが明らかになりました。本研究では、同一のガラス海綿内に共生していた2種の新種多毛類(Dalhousiella yabukii および Leocratides watanabeae)が正式に記載・命名されました。
本成果に関する論文(英語)はZoological Journal of the Linnean Society誌で発表され、以下のリンクより閲覧できます:
https://doi.org/10.1093/zoolinnean/zlag028
このほか、七曜海山での潜航では以下も確認されました。
● 深海性のシンカイコシオリエビ属(Munidopsis)を含む新種コシオリエビ類5種
● 新たに確認された八放サンゴ類、ヒモムシ類、ヨコエビ類、腹足類、動吻動物
● これまで日本近海では稀少または未記録と考えられていた複数種
これらの成果により、七曜海山列は、日本の海洋科学において注目すべき地域であり、これまで研究者が訪れていなかった地形の中に豊かな生物多様性が存在することが明らかになりました。
海洋のためのオープンサイエンス:
Ocean Censusのミッションに基づき、新種記録、画像、関連データは、解析の進展に合わせて「Ocean Census生物多様性データプラットフォーム」を通じて公開されます。本探査に基づく複数の学術論文が現在準備中、または査読中です。
本探査の関連画像などは右記よりダウンロード可能です:リンク
(以上)
Ocean Censusについて
The Nippon Foundation-Nekton Ocean Censusは、海洋生物の発見を加速させることをミッションとする世界最大級のプロジェクトです。地球上の70%以上が海洋に覆われているにもかかわらず、海洋は最も未開拓な生態系の1つであり、正式に記録されている海洋生物種はわずか24万種に過ぎません。科学者たちは、これに加えて数百万種の未発見の生物が存在すると推定しています。
日本財団とNekton財団が2023年4月に立ち上げたOcean Censusは、こうした知識のギャップを埋めるための世界的ミッションです。大規模な探査、最先端技術、パートナーとのグローバルなネットワークを通じて、海洋生物の発見と理解に変革をもたらします。「国連海洋科学の10年」の認定されているOcean Census は、科学、メディア、慈善事業、企業、市民社会にわたる世界的な連携によって支えられています。
日本財団について
日本財団は1962年、日本最大規模の財団として創設以来、教育、医療、食料安全保障、海洋保全などの分野でさまざまなプロジェクトを支援してきました。日本財団は、国内外の主要な科学機関との連携を通じて、日本および世界における海洋科学の発展に貢献しています。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、海洋国家の日本において、海の研究を通じて、科学技術の向上、学術研究の発展、地球や生命の理解などに広く貢献するための活動に取り組んでいます。
地球環境の把握、海洋資源の利用、地震・火山活動に関する調査研究を推進しています。さらに、研究活動によって得られたデータから新たな価値を生み出し、社会・経済のニーズに貢献するための研究開発を進めています。
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