齋藤名穂『南インド キッチンの旅』、ブルーシープから11月1日に刊行。

世界の本好きを魅了するインドの出版社タラブックスから昨年末に出版され好評を博した、齋藤名穂の『TRAVELS THROUGH SOUTH INDIAN KITCHENS』の日本語版を刊行します。

著者の齋藤名穂は、東京で活動する建築家・デザイナー。2013年に東京で開催されたワークショップでタラブックスの代表ギータ・ウォルフ氏と出会い、一緒に本を作ろうと誘われます。ほどなくして赴いた南インド、チェンナイの滞在先のキッチンで、使い途のわからないものに囲まれ途方にくれた齋藤は、旅行者にとって最も縁遠い場所はその土地の「家庭のキッチン」なのではと思い至ります。こうして、南インドのキッチンをめぐる旅が始まりました。

本書は、著者が南インドに滞在した3ヶ月間に、21のキッチンを訪ねた記録です。「キッチンにこそ、その土地の文化や日常の暮らしの本当の姿がある」と齋藤は語ります。キッチンでの会話や目にしたものを綴ったテキスト、料理のレシピと、キッチンの実測図、スナップ写真、そして手描きのイラストがまとめられたこの本は、南インドの人々の日々の営みを飾ることなく素直に描いた、スケッチブックのような一冊です。
 


さまざまなキッチンを訪ね、その持ち主と語らい、
彼らが料理する姿を観察する。それだけだ。
ところが、彼女がそこに見出した物語は、
豊かで、複雑で、いくつかの分野を横断するものとなった。


タラブックス代表 ギータ・ウォルフ


本文からの抜粋

「広がるキッチン」より

彼女のキッチンで発見したことは、キッチンは一つの部屋ではない、ということだ。キッチンは、キッチンと名付けられた部屋から始まって、隣の居間へ、ときに屋外のベランダへと広がっていく。作業台で準備した野菜は床に移動され、そうすると今度は床が作業台になって野菜が切られていく。料理が進んで行くごとに、私の予想を少しずつ超えて、アンティのキッチンは広がっていった。それは楽しい驚きの連続だった。

 

「停電中のキッチン」より
典型的な民家とされるこの家は、奥へ奥へと部屋が続く。玄関入ってすぐは、私たちが最初に通された客間。その次はソファとテレビのある居間。居間の横には、壁中にヒンドゥーの神様の絵が飾られた祈りのための部屋がある。居間の奥がキッチン。キッチンは薄暗く、奥の勝手口の扉の隙間から少しだけ光が入ってくる。レヌガのキッチンはこれまで旅をした中で一番遠い場所にあると思う。私はそのことを思いながら、今、彼女のキッチンの真ん中に立っている。


「記憶の中のキッチン」より
朝の4時。まだ街は眠っていて、夜と朝の合間のような時間。これから始まる1日の中で、一番涼しい時間でもあるはずだ。牛乳パックの底のようなこの場所に座って、おしゃべりをし、チャイを飲む、それはとても安心する穏やかな時間であったにちがいない。このキッチンには思い出がつまっている。もうキッチンとしては機能していないけれど、一人の男性を、遠いハワイからこの古く小さな街へと連れ戻してくるだけの力が、このキッチンにはまだあるみたいだ。

 

 

©Hideki Ookura©Hideki Ookura


齋藤 名穂(さいとう なお)
東京生まれ。建築家、デザイナー。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、フィンランドへ留学。ヘルシンキ芸術デザイン大学空間デザイン専攻修了。UNI DESIGN主宰。目の見える人と見えない人が一緒によむ地図や、建物の記憶をひき継ぐ家具、保育園の家具・ワークショップのデザインなど、人や素材の中にある場所・建築の記憶をテーマにしたデザインを多く手がけている。 2017年に板橋区立美術館で開催された展覧会「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」では、会場デザインおよび展示ボックスのデザインを佐野哲史(Eureka)が担当した。



【書籍情報】
『南インド キッチンの旅』(齋藤名穂著)
定価:2,500円(本体)
発行:ブルーシープ  
224ページ、B5判変形、上製本
ブックデザイン:守屋史世(ea)
2018年11月1日(木)発売

 

【関連イベント】
■■■出版記念「南インド キッチンの旅」展■■■
2018年11月16日(金)〜12月8日(土)
12:00−19:00 *日月休
Books and Modern + Blue Sheep Gallery(東京・乃木坂)
齋藤が旅した南インドの風景の写真やスケッチの断片、タラブックスの
映像監督アルン・ウォルフが本書のために撮影したショートフィルムなどを
展示、上映します。
会期中に本書をご購入の方には、特典として特製ラベルつきスパイスを
プレゼント。

■■■トークイベント■■■ 
11月17日(土)・12月1日(土) 17:00−18:30
著者の齋藤名穂が南インドで見てきたものや食べたもの、タラブックスとの
本作りについて語ります。
参加予約:https://shop.booksandmodern.com/
     info@booksandmodern.com
参加費:1,500円(税込)ドリンク付き
両日、準備のため15:45〜16:30は一旦閉廊。
 


【世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦】巡回展情報
- 2018年11月10日(土)〜2019年1月14日(月)
ベルナール・ビュフェ美術館(静岡・三島)

- 2017年11月 板橋区立美術館(東京・板橋区)
- 2018年4月 刈谷市美術館(愛知・刈谷市)
- 2018年7月・10/28終了 MOKA / Hyundai  Museum of Kids' Books & Art (韓国・ソウル)









【ブルーシープ】
「シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン」展(2017-2018)、「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」展(2017-2019)、「ルート・ブリュック展」(2019-2020)などの展覧会企画と関連書籍を発行する。そのほか「スヌーピーミュージアム」(2016-2018)のプロデュース、書籍『フェルメール』(植本一子著。2018年にナナロク社とのダブルネームで刊行)、ビジュアルブック『ルート・ブリュック』(2018年12月刊行予定)の出版も。2018年からは乃木坂のBooks and Modern + Blue Sheep Galleryで展覧会も開催している。
http://bluesheep.jp/
www.instagram.com/bluesheep_info/
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