2024年度日本経済学会賞授与
一般社団法人日本経済学会(会長:青木玲子 公正取引委員会委員/オークランド大学教授)は、令和6年度の「女性研究者奨励賞(日本生命賞)(第4回)」「石川賞(第19回)」「中原賞(第30回)」の受賞者を以下のように決定し、2024年10月19,20日に福岡大学で開催された秋季大会において授賞式および受賞記念講演会を開催いたしました。
1)女性研究者奨励賞(日本生命賞): 森悠子教授(津田塾大学)
日本経済学会・女性研究者奨励賞(日本生命賞)は、日本生命保険相互会社の寄付によって、2020年に創設されました。本賞は、優れた経済学研究を行う若手女性研究者に対して授与されます。森悠子教授は、労働経済学の実証分析を中心に国際的に認められる優れた研究を行ってきたことが高く評価されました。
森悠子教授は2012年に一橋大学において博士号を取得し、開発経済学・政治経済学・労働経済学の分野において、インドや日本を対象に、主に宗教・民族・性別・経済階層間の格差に関する問題を研究してきました。その根底には常に貧困や格差への問題意識があり、応用計量経済学者としての技量を活かして、制度や政策が人々の生活に与える効果を検証し、途上国・先進国を問わず、よりよい社会の実現のために必要な制度設計を探索するという一貫した研究姿勢があります。このような森教授の研究姿勢とその多くの研究成果が高く評価されました。
https://www.jeaweb.org/awards/awardsnissei
2)石川賞: 重岡仁教授(東京大学)
日本経済学会・石川賞は、故石川経夫東京大学経済学部教授の日本経済分析への多大な貢献を記念して2004年に創設され、日本の経済・社会問題の解決に貢献する実証面や政策面での優れた経済学研究を行った50歳未満の経済学研究者に対して授与されます。重岡仁教授は、医療経済学を中心に幅広い分野で数多くの優れた実証研究を数多く発表しており、社会におけるさまざまな政策課題に対する顕著な貢献が評価されました。
重岡仁教授は2012年にコロンビア大学において博士号を取得しました。重岡教授の実証研究は、日本の医療にかかわるデータを用いて、医療制度の変更が医療サービスの需要と供給に与える影響を検討するなど、望ましい制度設計につなげることを意図するものです。また、重岡教授は、医療経済学にとどまらず、危険回避度などの選考の安定性に関する行動経済学の研究、高齢者雇用に関する労働経済学の研究、米国の禁酒法など法制度に関する経済史の研究など、幅広い関心のもとに研究を進めていることも、石川賞の理念に適っていると高く評価されました。
https://www.jeaweb.org/awards/awardsishikawa
3)中原賞: 菅谷拓生教授(スタンフォード大学)
日本経済学会・中原賞(中原伸之賞)は、中原伸之氏の寄付によって、1995年に創設されました。この賞は、国際的に認知される業績を挙げた45歳未満の経済学研究者に対して授与されます。菅谷拓生教授は、理論経済学、特にゲーム理論の分野で、国際的にも極めて水準の高い多くの優れた研究を発表してきたことが高く評価されました。
菅谷拓生教授は2012年にプリンストン大学で博士号を取得後、経済学分野の国際学術雑誌の中で最も水準が高いとされる「上位5誌」すべてに1本以上の論文を掲載するなど、極めて高い水準の学術論文を数多く発表してきました。菅谷教授は、理論研究のみならず、価格カルテルなどの協調行動や選挙における各候補者の政策選択行動などに理論を適用し、データを用いた検証も行ってきました。こうした研究成果は、現実のさまざまな課題に対する我々の理解を深める一助となり、社会課題の解決に貢献するものである点も高く評価されました。
https://www.jeaweb.org/awards/awardsnakahara
3名の受賞者は経済学の発展に大きな貢献をしてこられた若手および中堅の経済学者で、現代の社会経済課題解決に対する示唆に富む研究を行っておられます。今後の経済学の発展、その知見を活かした施策の提案につなげるため、広くご紹介願います。
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