今は亡き大切な人への想いを手紙で綴るコンテスト 第16回「つたえたい、心の手紙」入選24作品が決定
総計1,124点の応募から、闘病を経て旅立った母の強さや優しさへの感謝を綴った東京都・西田聖美さんの『最初で最後の自撮り写真』を金賞に選出
本コンテストは、「亡くなられて、今はもう会えない大切な人への手紙」をテーマに、今伝えたい想いや、生前に伝えられなかった言葉を“心の手紙”に記し、応募していただくものです。
当社でのご葬儀で、故人への手紙を棺に入れる方を数多く拝見する中で、“亡くなった大切な方への想いを手紙として記すことで、悲しみを乗り越えるきっかけとなれば…”との思いから2008年から毎年実施しています。
16回目となる今回は、2023年5月~10月の応募期間に全国から寄せられた1,124作品から、金賞1名、銀賞5名、佳作4名、入賞7名、審査員特別賞7名の計24名の作品を選出しました。10代から90代まで幅広い方の応募があり、累計応募総数は1万7千通を突破、広く世の中の関心を得られるようになったことが伺えます。
今回金賞に選出した西田さんの『最初で最後の自撮り写真』は、闘病の末に旅立った母へ宛てた手紙です。他界後、母の携帯電話に残された印象的な自撮り写真が、今でも著者にとって生きる上での勇気となっていることへの感謝を綴っています。母の大きな愛情とともに、強さや優しさが感じられる作品として金賞に選出いたしました。
審査員による入選作品の総評
今回で16回目を迎えましたが、回を重ねるごとに心を揺さぶる作品が非常に多くなっている印象を受けております。本審査会では、悲しみの中にも故人への感謝の気持ちが伝わる作品、前向きな意思が強く伝わり、読む人に勇気を与える作品を選出いたしました。
全国各地から幅広い年代の方々よりご応募いただいていることから、在住地や年齢を問わず、多くの方々が日々を生きる中で、故人の言葉や行動を“心の拠り所”とするための受け皿として本企画が存在していると改めて実感しております。
なお、入選作品は「つたえたい、心の手紙」作品集として小冊子にまとめ、2024年5月より抽選で1,500名の方に配布いたします。また3月下旬より公式Webサイトにて金賞・銀賞作品の全文を公開いたします。
くらしの友「つたえたい、心の手紙」公式Webサイト:https://www.kurashinotomo.jp/tegami/
第16 回「つたえたい、心の手紙」コンテスト概要
・審査委員長:㈱くらしの友 会長・伴 良二
・審査員:ジャーナリスト・足立 則夫、小説家・朝比奈 あすか、ライター/紀行家・山内 史子、一般社団法人手紙文化振興協会 代表理事・むらかみ かずこ、クリエイティブディレクター・中井川 功
・募集期間:2023年5月1日~10月31日
・応募作品数:1,124点(アマチュアのみ)
・作品字数:800 字程度
各賞一覧
■金賞(1作品)
『最初で最後の自撮り写真』 西田 聖美 さん(東京都・42歳)
■銀賞(5作品・順不同)
『おうどん』川田 光子 さん(愛媛県・60歳)
『先生といる時は障がい者ではなくなれた』奥田 歩実 さん(奈良県・22歳)
『魔法の言葉』浅見 こずえ さん(埼玉県・62歳)
『またね!』小山 美佐江 さん(埼玉県・68歳)
『母ちゃんの嘘』小松崎 有美 さん(埼玉県・39歳)
■佳作(4作品・順不同)
『いい子やね』坂本 ユミ子 さん(兵庫県・65歳)
『私の先生』金尾 梓 さん(東京都・36歳)
『バトンは渡されました』井久保 文子 さん(福岡県・79歳)
『思い出すのは良いことばかり』長倉 優佳 さん(静岡県・53歳)
■入賞(7作品・順不同)
『温かな耳かき』田中 麻衣子 さん(島根県・42歳)
『大好きだった貴方へ』岩瀬 あん さん(大阪府・14歳)
『82歳の孫とおじいさん』室𠮷 絹子 さん(福井県・82歳)
『四十年分のありがとう』猪又 則子 さん(新潟県・65歳)
『旦那様へ。』五十嵐 富子 さん(東京都・84歳)
『亀は私の守り神』一ノ宮 博子 さん(千葉県・69歳)
『お父さんの無形遺産』平山 絹江 さん(大阪府・74歳)
■審査員特別賞(7作品・順不同)
『ばあちゃんの梅仕事』佐藤 友里香 さん(福岡県・37歳)
『遥か遠くにいる父へ』北原 辰江 さん(福岡県・62歳)
『涙もろいお父さんへ』大坪 英子 さん(福岡県・54歳)
『いつか、父の隣で』後藤 結子 さん(東京都・29歳)
『七夕祭り』小林 由美 さん(三重県・62歳)
『おふくろ「本当にありがとう」』藤田 哲也 さん(新潟県・71歳)
『優しいビワの味と母』鈴木 妙 さん(神奈川県・50歳)
金賞作品「最初で最後の自撮り写真」 (西田 聖美 さん・東京都・42歳)
お母さんが末期のすい臓がんと診断され、余命1カ月と言い渡されたあの日を、今でも覚えています。
私は帰宅後、誰もいない家で一人、文字通り膝から崩れ落ちるようにして泣き叫びました。どうして。なんで。別の病気でずっと町医者にかかっていたので、油断していたのです。定期的に診てもらっているのだから、命に関わる病気が見過ごされているはずがないと、楽観的に思っていたのです。ガンの可能性は過っても、そんなに進行しているなんて、治療法も選べない段階にきているなんて、思いもしていなかったのです。
入院中のお母さんは私と違い、泣き叫ぶことはもちろんのこと、誰かにつらく当たることも塞ぎ込むこともなく、いつも通りの振る舞いで、心を削られていた当時の私はむしろ貴方に支えられていました。どうやって、現実を受け入れたのでしょうか。貴方は昔から強い人でした。親になれば強くなるのかと思ったこともありましたが、二児の母になった今も、私に貴方のような強さがあると思えません。お母さんは結局、最期まで懸命に闘い続け、入院してから実に8カ月も私と共にいてくれました。
お母さんが旅立ってから、しばらく触ることのできなかったお母さんの携帯電話をようやく起動出来た時。何気なく開いた画像アプリが最初に表示したのは、こちらを向いて、親指を上げ「大丈夫」のポーズをしているお母さんの自撮り写真でした。それを見た瞬間、私は、余命宣告を受けた日と同じくらい、声を上げて泣きました。『お母さんは大丈夫だよ』なのか、『お前は一人で大丈夫だよ』なのか、今となっては分かりません。でも写真嫌いだったお母さんが自ら撮ってくれた、その大切で力強いメッセージは、今もなお私の背中をそっと押してくれます。だから、この手紙で言わせてください。最高の写真を遺してくれて、ありがとう。ずっとずっと、大好きだよ。
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