てんかん発作警告器を開発するクアドリティクス株式会社、シリーズAラウンドで総額6億円を調達
デジタルヘルス領域で革新的な医療機器開発を行うクアドリティクス株式会社(本社:京都市、代表取締役:林 康平)は、シリーズAラウンドにおいて、ライフタイムベンチャーズ、京都キャピタルパートナーズ、クロステックベンチャーズ、ならびに個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額3億円のエクイティ資金を調達いたしました。
さらに、2024年9月11日には国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ディープテック・スタートアップ支援事業(STSフェーズ)」に採択されており、最大3億円が助成されます。これにより、今シリーズにおける総調達額は6億円となりました。
当社は、てんかん発作の兆候をウェアラブル機器を用いてリアルタイムで検知し、発作の数分前に患者さんへ警告を発する「てんかん発作警告器」(仮称、一般的名称:てんかんアラーム)というプログラム医療機器を開発しています。
今回調達した資金は、以下の用途に充当されます。
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日本国内での治験の実施
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オーストラリアおよびアメリカにおける薬事承認取得と保険償還戦略の推進
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グローバル市場に向けた事業開発と品質管理体制の構築
国際的なてんかん研究の第一人者であり、個別化医療やAI応用にも注力する臨床研究者であるMonash University, Department of NeuroscienceのPatrick Kwan教授は、「てんかん発作は予測が困難であり、患者さんの生活の質に大きな影響を及ぼします。クアドリティクスが開発している技術は、発作の兆候を早期に警告する可能性を提供するもので、患者さんがより安全かつ安心して生活できる助けとなります。個別化医療の観点からも、このような非侵襲的アプローチの臨床応用が進み、より多くの患者さんに恩恵がもたらされることを強く望んでいます」と述べています。
当社はオーストラリアでの薬事承認とNDIS(障害者保険制度)による保険償還を足がかりに、米国FDA承認を目指す戦略を採用しています。2024年にはMedTech Actuatorのアクセラレーションプログラム「Cohort 9」に日本企業として初めて採択され、豪州子会社「Quadlytics Pty Ltd」を設立し、2028年の豪州上市を目標に、豪・米への展開に向けた事業戦略の構築を進めています。
医師・シリアルアントレプレナーであり、数多くの医療系スタートアップを支援してきたMedTech Actuator CEOのBuzz Palmer氏は、「日本には、革新的な初期段階の技術やアイデアが数多く存在しています。それらを、グローバルに展開可能な製品やビジネスへと昇華させていくクアドリティクスのようなチームと出会えることは非常に刺激的です。オーストラリア、日本、そしてアジア太平洋地域をつなぐヘルステック・エコシステムが、彼らのようなスタートアップによってさらに強くなっていくことを楽しみにしています」と述べています。
MedTech Actuatorは本ラウンドで当社の株主にもなっており、さらなる連携関係の深化と支援が期待されます。
また米国では、Mayo Clinicが運営するイノベーション支援プログラム「Mayo Clinic Platform Accelerate」および「Mayo Clinic Innovation Exchange」に採択され、世界最大級の医療機関との連携のもと、米国市場への展開に向けた臨床研究および薬事戦略を進めています。現在は2030年の米国展開を目指して、段階的な実証と薬事準備を進めています。
クアドリティクス共同創業者/CTOの山川俊貴は、「世界にも目を向け、各国で異なる薬事法規、医療・保険制度、患者さんのニーズに応えるべく、着実に技術・事業開発と体制構築を進めています。『いつ起こるかわからない発作』への恐怖や苦悩を少しでも和らげ、発作による事故や怪我を回避し得る手段を、より多くの患者さんに届けられるよう今後も一層努力してまいります」と述べています。
クアドリティクス代表取締役社長の林康平は、「このたび、シリーズAラウンドでの資金調達とNEDOの支援採択を通じて、私たちのビジョンである『人類がてんかん発作を恐れず暮らせる未来を創造する』ために、大きな一歩を踏み出すことができました。今後も、患者さん一人ひとりの安心と安全のために、そして世界中の医療現場に新たな選択肢を届けるために挑戦を続けてまいります。さらに、予測が難しい発作によって日常生活にさまざまな制約が生じうるてんかんに対して、発作による怪我や事故の回避、医療費の低減、そして患者さんとご家族の生活の質(QoL)の向上に貢献できる革新的なソリューションとして、本技術の社会実装を強く推進してまいります」と述べています。
■ てんかんについて
てんかんは、世界中で約5,000万人が影響を受けているとされる神経疾患であり、世界保健機関(WHO)によっても重要な公衆衛生上の課題として位置づけられています¹。人口の約1%が生涯のどこかで発症する可能性があるとされる、比較的身近な病気です。日本国内にも約100万人の患者さんがいると推計されており²、適切な診断と薬物治療によって、約7割の方は発作をコントロールし、通常の生活を送ることが可能です。一方で、約3割の方では発作が完全には抑えられず³、発作による怪我ややけどなどのリスク、不安を抱えながら生活されているケースも少なくありません。
また、1年以上発作がない状態が続いている患者さんの中でも、5割を超える方が「いつ発作が起こるかわからない不安」を感じているという国内調査もあります⁴。
てんかんにおいては、治療の進展がある一方で、発作の予測が難しいことが患者さんとそのご家族の生活の質(QOL)に影響を与える要因のひとつとなっています。このため、より個別化された治療や、発作リスクを事前に察知できる新たな技術への期待が高まっています。
■ 開発中のプログラム医療機器について
クアドリティクスが開発する「てんかん発作警告器」(仮称、一般的名称:てんかんアラーム)は、ウェアラブル心電計を用いて自律神経変化をモニタリングし、機械学習による異常検知アルゴリズムを組み合わせた、非侵襲型の発作予測システムです。
これにより、てんかん発作の兆候をリアルタイムで検知し、発作の数分前に患者さんに警告を発することで、発作による怪我や事故のリスク軽減と、日常生活における安心感の向上を目指しています。
■ クアドリティクス社について
クアドリティクス株式会社は、「予測が難しいてんかん発作による事故や怪我をなくしたい」という志を共有する臨床医学・情報学・電子工学の研究者によって2012年に研究がスタートし、2018年に京都大学・熊本大学発のベンチャーとして設立されました。
当社は、てんかんという発作の予測が難しい疾患に対し、テクノロジーの力で“予測可能性”という新たな価値を提供し、患者さんの安心と安全を支えることを目指しています。私たちのビジョンは、「人類がてんかん発作を恐れず暮らせる未来を創造する」ことです。
■ グローバル展開と海外拠点について
当社はオーストラリアでの薬事承認とNDISによる保険償還を足がかりに、米国FDA承認を目指すグローバル展開戦略を推進しています。
2024年には、MedTech Actuatorのアクセラレーションプログラム「Cohort 9」に採択され、豪州子会社「Quadlytics Pty Ltd」を設立。2028年の豪州上市を目指して、Monash大学およびAlfred Hospitalと連携した臨床研究を進めています。
また米国では、Mayo Clinicが運営する「Mayo Clinic Platform_Accelerate」および「Mayo Clinic Innovation Exchange」に採択され、世界最大級の医療機関との連携のもと、2030年の米国展開を目標に、臨床研究および薬事戦略を段階的に進めています。
参考文献
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World Health Organization. Epilepsy – Key facts. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/epilepsy(2025年5月アクセス)
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⼤槻泰介. てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究, 2013 https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/22749(2025年5月アクセス)
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Kwan P. et al. Early identification of refractory epilepsy. N Engl J Med 2000; 342:314–319
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山内俊雄ほか. 意識調査からみたてんかん医療の現状と今後のあり方について III. てんかん研究 2015; 33: 62–75
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