上海まで届いたアニソンの熱狂:会場一体となった感動の1日「ANISAMA WORLD 2024 in 上海」

[ライブ・レポート]毎年夏に開催の世界最大級アニソンフェスティバル「Animelo Summer Live」、今年はその熱狂が中国・上海へと届けられ、国際的な文化交流の新たな可能性を開いた。 

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ANISAMA WORLD 2024 in 上海@上海市久事体育場館 旗忠網球中心 Photo by Jerry Ho

2024年11月16日、中国・上海市の久事体育場館 旗忠網球中心で「ANISAMA WORLD 2024 in 上海」が開催された。

このイベントは、世界最大級のアニソンフェスティバル「Animelo Summer Live」(以下、アニサマ)の海外特別版。今年はその熱狂が中国・上海へと届けられ、国際的な文化交流の新たな可能性を開いた。 アニメが日本文化の象徴として海外で高い人気を誇る中、その世界観を音楽で共有するアニソンは、ファン同士の交流や共感を生み出す独自の力を持つ。

今回の上海開催は、アニソン文化が日本国内にとどまらず、国際的な文化交流の架け橋として進化を遂げていることを象徴する重要な試みだった。アニメ『機動戦士ガンダムSEED』シリーズにちなんだ楽曲や、日本発のヒット作を数々手掛けたアーティストが集結し、会場全体が一体感に包まれる瞬間が幾度となく訪れた。 「ANISAMA WORLD」は今後、他都市での開催も検討されており、アニソン文化が国や言語の壁を越え、さらに広範囲な文化交流を生むことが期待されている。本稿では、上海での感動の1日を振り返りつつ、アニソンを通じた文化交流の可能性や、これからの国際展開への期待についても考察する。

イベントがスタートしたのは午後4時半過ぎ。イベントの導入VTRが終了すると同時に大歓声が巻き起こる。ステージにはT.M.Revolutionと蒼井翔太が登場し、アニメ『革命機ヴァルヴレイヴ』の「Preserved Roses」でこの日の幕が切って落とされた。蒼井が退場してからは『機動戦士ガンダムSEED』の代表曲『INVOKE-インヴォーク-』と『ignited-イグナイテッド-』を続けて披露。イントロから観客の大歓声を誘い、場内はアニサマ特有の一体感に包まれた。

静寂を破るように、伊藤美来がステージに現れた。1曲目は『Shocking Blue』。この楽曲に合わせて青い照明が場内を包み、観客も青のペンライトを振って迎える。続く『No.6』では、ダンサーたちとの振り付けのタイミングもぴったりで、終始元気あふれるステージングで、観客の視線を引きつけた。

楽曲終了後「お邪魔します」の声とともに魔女の帽子を被った大橋彩香、斉藤朱夏、Liyuuが登場。伊藤も魔女帽子を被り『おジャ魔女どれみ』のオープニングテーマ『おジャ魔女カーニバル!!』を披露した。

再び暗転から戻ると、斉藤朱夏が姿を現した。イントロが流れ出したのは『セカイノハテ』。先ほどの元気な姿とは一転、今回は覚悟を決めたかのような真剣な表情。続く『パパパ』では、表情を一変させ、アニサマバージョンのMVを背景に、カラフルな映像とともにダンサーたちと華やかに踊る観客も手拍子でリズムを刻み、一体感が生まれていた。

次に登場したのはLiyuuだ。ダンサーを引き連れ、軽快なビートに乗せて『bloomin’』を披露。観客の熱い反応に中国語で「客席が近く感じるね!みんな来てくれてありがとう。ここまでどうやって来たの?」などと上海出身の彼女らしい、軽妙なMCで観客の心をさらに掴む。

続く『TRUE FOOL LOVE』を披露し、最後にはピアニストをステージに呼び込み、中国のアニメ映画『紅き大魚の伝説』のテーマ曲『大魚』を中国語の原曲のまましっとりと歌い上げた。透明感あふれる歌声が会場に響き渡り、観客は息を呑んでそのパフォーマンスに聞き入った。

Liyuuのステージの後、蒼井翔太が再び登場。まずは『絶世スターゲイト』で力強くステージを駆け抜ける。そのまま間髪入れずに『BAD END』を披露し、エッジの効いたナンバーで観客のテンションをさらに引き上げた。MCで「僕の曲ではないですが、みんなで歌いたい曲を用意しました」と笑顔で語り、中国でも大人気のアニメ『デジモンアドベンチャー』のテーマ曲『Butter-Fly』のイントロが流れると、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。サビに入り蒼井がマイクを観客に向けると、観客全員で大合唱。上海の空気を一つにした感動的な瞬間となった。

続いて登場したのは、ピンクのスタジャンに身を包んだ大橋彩香。「アニサマ上海楽しみましょう!」という掛け声とともにスタートしたのは『YES!!』。明るく弾けるパフォーマンスに、観客からは「はっしー!」と愛称で呼びかける声が飛び交い、温かい応援のムードが広がる。MCで観客とのコミュニケーションを楽しみながら、『ダイスキ。』と『ワガママMIRROR HEART』を続けて披露。パワフルでキュートな歌声とダンスパフォーマンスで観客を魅了した。

「上海のみんな、まだまだ行くよ!」と力強く飛び込んできた鈴木このみが、ロック調の楽曲『DAYS of DASH』で会場の空気を一変させ一気に盛り上げた。続くMCでは、来年春にアジアツアーを開催することを発表し、観客は歓声で応えた。次の曲は一転してバラード、『THERE IS A REASON』。ピアノの伴奏に合わせ、豊かな歌唱力を存分に発揮した。

3曲目の『Reweave』では再びアグレッシブなロック調の楽曲で会場を揺るがす。ラストは鈴木が「特別な曲」と語った『This game』。ここでサプライズゲストとして、大橋彩香が黒い衣装で登場。白い衣装の鈴木と対照的な姿で、2人は息の合ったパフォーマンスを披露した。圧巻のデュエットに観客は酔いしれ、大きな拍手を送った。

会場の熱気が冷めやらぬまま、茅原実里が登場。『境界の彼方』のアニメーションをバックに、同名曲を熱唱。続く『雪、無音、窓辺にて。』では、茅原が立ち尽くすように静かに歌い、『涼宮ハルヒの憂鬱』で演じたキャラ、長門有希を彷彿とさせる表情を見せた。

次のピアノ伴奏に合わせて歌った『みちしるべ』でも、その繊細な歌唱で観客の心を掴んだ。「ここからは元気を出していきましょう!」と観客をあおると、茅原は『Paradise Lost』のイントロが流れる中、この日4回目の登場となる大橋彩香を呼び込み、エモーショナルなコラボレーションを披露。2人はそれぞれマイクスタンドを手に激しく歌い合い、観客も大きな声援で応えた。パワフルな歌声と表現力で会場を巻き込み、観客を熱狂させた。

次に登場したTRUEは、『杖と剣のウィストリア』のアニメ映像をバックに『フローズン』を披露。アコースティックギターの柔らかな音色が会場に新たな雰囲気をもたらした。続く『Sincerely』では、ピアノの側に立ち、持ち前の歌唱力でグッと観客を惹きつけた。TRUEが音楽に対する想いが詰まった一曲と紹介した『ReCoda』を披露した後は、特別ゲストとしてReoNaを呼び込んだ。2人は『Independence』で息の合ったパフォーマンスを披露。TRUEの炎のような情熱的な表現と、ReoNaの冷静で静かな歌声が対比となり、観客の心を揺さぶるコントラストがステージ上に描かれた。

TRUE がステージを後にし、ステージに立ったReoNaは、最新曲『GG』でソロパートをスタート。70人超のギタリストが登場するMVの雰囲気そのままに、4人のギタリストを引き連れ、グランジ感あふれる力強いギターロックで観客を圧倒した。次の曲は『アークナイツ 祈りの黎明』のテーマ曲『Alive』。特別バージョンとして全編中国語で披露され、観客からは驚きの声と感動の歓声が上がった。ラストは代表曲『ANIMA』。ReoNaは観客に向かって「あなたの魂の色は何色?」と問いかけ、深く心に響く歌声でステージを締めくくった。

ReoNaのステージが終わると、カウントダウンが突然始まり、会場の期待が高まる。

そこに颯爽と登場したのは小室哲哉だった。

シンセサイザーのソロプレイで観客に健在アピールすると、そこから名曲『Get Wild』へ。イントロの途中から西川貴教が再登場。小室はショルダーキーボードを肩からかけ、ステージ上を自由に動き、西川とともに観客を魅了した。

2曲目に向かう前に西川が中国語で「映画を観たか!?」とあおって期待値を上げつつ熱唱したのは、小室と西川の初コラボ作品で機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のテーマ曲『FREEDOM』。実物大フリーダムガンダム立像が立つ上海にて、この二人によって初披露されるという特別な瞬間が訪れた。続け様に披露したのは小室が『FREEDOM』のアウトロをシームレスに繋がるよう調整したという、1988年公開の映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のテーマ曲『BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)』。会場全体がアニメソングの歴史とその重みを体感する特別なひとときとなった。

アニソン界のみならず日本の音楽界のレジェンドが共演するその姿は、まさに時代を超えて紡がれる音楽の力を感じさせる、圧巻のパフォーマンスだった。イベント自体が一つの物語のクライマックスを迎えたような、忘れ難いステージとなった。

Photo by Jerry Ho

小室が少しはにかみながら中国語で自己紹介を終えて退場すると、西川が出演したボーカリスト全員を呼び込んだ。一人一人観客への感謝を述べ、アニサマのテーマソング『Stargazer』を全員で歌いイベントを締め括った。

Photo by Jerry Ho

  2011年以来の海外開催となった「ANISAMA WORLD 2024 in 上海」は、アニソン文化が持つ国境を越えた力を見事に体現したイベントとなった。今回のイベントは、近年の日本アニメとアニソンの世界的な人気の高まりを象徴している。このような背景の中で、日本アニメが国境を越える文化としての力を改めて証明した。 

 近年、日本アニメの海外人気は空前の高まりを見せている。『呪術廻戦』『鬼滅の刃』といった作品は、アジアをはじめ欧米でも高い人気を集めており、NetflixやAmazonプライムなどの配信サービスを通じて新たなファンを開拓。2023年には『葬送のフリーレン』や『SPY×FAMILY』が注目を浴び、アニメ作品の多様性と深みがさらに認識されるようになった。

台湾や韓国では『ちいかわ』や『ハイキュー!!』が圧倒的な支持を受けている。また、インドネシアでは『ハイキュー!!』が若者の間でバレーボールへの関心を高める現象を生んだ。こうした背景にはSNSで即時に情報を得られるようになったことも後押ししているだろう。 

一方で、中国においては「COMIC UP」「BilibiliWorld」「Bilibili Macro Link」、シンガポールをはじめとした東南アジアでは「Anime Festival Asia」などのコミックマーケットやアニメ関連イベントに加え、シンガポールにて半年間で約8万人を動員した『進撃の巨人』をはじめとしたオフィシャル展示といった、各都市で行われるオフラインイベントもアニメシーンの裾野の広がりを支えている。こうした中国や東南アジアでのアニメ関連イベントの盛況は、「ANISAMA WORLD」が海外展開を進める上での重要な背景となっている。

各国・各都市のファン層が厚みを増す中、今回の上海公演が持つ意義はさらに深いものと言える。 「ANISAMA WORLD」の開催を通じ、日本アニメやアニソンの魅力が世界に広がることで、日本への観光需要やアニメ関連商品の輸出促進といった経済的波及効果が期待される。また、現地ファンとの文化交流を深めることで、単に日本文化を発信するだけでなく、新たな視点やプロジェクトが生まれる可能性もある。アニソンが架け橋となり、より豊かな国際的な文化交流が実現するだろう。 

今回の「ANISAMA WORLD 2024 in 上海」は、単なる音楽イベントを超え、日本アニメとアニソンを通じた国際的な文化交流の可能性を改めて示した。20周年を迎える2025年以降、さらに多様な地域での開催や、アニソンと現地文化の融合を通じた新たな試みが注目されるだろう。

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1990年02月